復讐姫の王国記

朝木 彩葉

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「まり、いまなんじ?」

「今は14時でございます!」

今日はカーラとシエルが来る日だ。

あの日以来じい様からの呼び出しもなく、黙々とお勉強をする日が続いていた。

久しぶりに訪れた落ち着いた日々は、確かに心は穏やかになるけれど、少し物足りない気持ちになった。

だから、待ちわびた友達の来訪に少しワクワクしてしまうのも仕方がないことだと思う。

「ふふ。殿下、そろそろ来られると思いますよ!」

「そうだね。たのしみ。」

「ええ、楽しみですね!」

お揃いのキーホルダーをいじりながら何をして遊ぼうか思いを馳せていた。

マリがスっと耳に手をあてて何かを聞いている。

もしかして?

「殿下!お2人がいらしたみたいです!」

おお!

早速お迎えに行きましょう!

「まり、いこう!」

「ええ!お迎えに行きましょうね!」

私はマリと手を繋いで少し駆け足ぎみに部屋を出た。

通りすがりのメイドさんたちに微笑ましいものを見る目で見られたけれど、私は努めていつも通りにしていた。はずだ。

ほんの少し、ほんの少しだけいつもより歩くスピードがはやいかもしれないけど。

1回に着くとホールに2人が少し緊張した面持ちでこそこそ話していた。

「かーら!しえる!」

私はマリの手を離して2人に駆け寄った。

ハッとこちらを向いた2人は私を見つけた途端ぱあっと顔を輝かせた。

「ありす…!あっ!でんか!」

「おひさしぶりです、でんか!」

「うん、ひさしぶり!
きてくれてありがとう。」

「わたしたちもあいたかったから!うれしいです!」

「おさそいありがとうございます。」

「さっそく、おへやにいこう?」

「「はい!」」

行きと同じようにみんなにニコニコ見つめられながら私達は私の部屋に着いた。

ここまで来れば部屋にいるのはそれぞれのお付きの人だけだ。

「ふたりとも、もうふつうにしゃべってもいいよ。」

「やった!かしこまっているとさみしいの!あいたかった!ありす!」

「ありがとう。ぼくもなんだかさみしかったです。」

「ふふ、もうだいじょうぶ。
ふたりはいつもなにをしてあそんでいるの?」

「あそび、ですか…。よくほんをよみます。」

シエル…。

いい事だけど読書は遊びなのかしら…?

「へ、へぇ~。
カーラは?なにしてるの?」

「わたしはさいきん、かくれんぼをしているのです!
しせいのこたちはよくすると、めいどにおしえてもらいました!」

かくれんぼ!
子供らしくていいわね!

「わあー。たのしそうです!
きょう、いっしょにしてもいいですか?」

「ぼくもやってみたいです。」

「じゃあさんにんでしましょう!
どこでしますか?」

「まずはこのおへやでする?」

私のお部屋はそこそこの広さがあるからきっとかくれんぼも出来ると思う。

「いいですね、そうしましょう!」

「わたしがおにします!」

はーい、とカーラが手を挙げたので、私とシエルはそれぞれ部屋に隠れることにした。

「じゃあ30びょうかぞえる!そのあいだにかくれてね!」

「「はーい」」

「いーち、にーい、さーん…」

よし、カーラが数えている間に早く隠れないと。

ええと、ええと。

そうだ、カーテンの裏側なんてどうかしら!

わたしはカーテンの裏側に隠れてみることにした。

揺らさないようにそうっと後ろに入ってしゃがみこむ。

じっと待つ間、ドキドキが止まらない。

これはなんて楽しいんだろう。

私とシエル、どっちが先に見つかるかな?

膝を抱えて動きそうになる体を抑えた。

「いきまーす!」

どうやら30秒たったらしい。

カーラが探しに来る声がした。30秒って案外短いものね。

今回はたまたまカーテンを見つけたから良かったけれど、次はどこに隠れようかしら。

シエルは初めて来た部屋だけど隠れられたかな。

「うーん、ありすどーこだー!」

カーラの声が近づいてきた。

シャ!とカーテンが開いてカーラと目が合う。

「あー!いたー!みーつけた!」

「あーあ、みつかっちゃったー。」

2人でキャッキャと笑い合う。

見つかっちゃったのに楽しい!

「あとしえる!」

「しえるはどこかな?」

私とカーラはシエルを探そうと部屋の中を駆け回った。

机の下、クッションの下、おもちゃの箱の中。

思いつくところは全部探したはずなのにどこにもいない。

「あれ?しえるいない。」

「おへやにいないのかな?」

私とカーラは顔を見合わせた。

「まり、しえる、おへやにいる?」

「はい!シエル様はお部屋にいらっしゃいますよ!」

「「ええー!」」

シエル、隠れるのが上手すぎる。

でもそうよね、勝手に出ていくような子じゃないわ。

「うーん、ひんと!まりさん、ひんとがほしい!」

「あらあら、殿下もヒントですか?」

「うーん、むずかしいから、ひんとほしい。」

「ではヒントを差し上げますね!私たち従者の近くにいらっしゃいます!」

ヒントをもらって私たちは慌てて入口の侍女達のそばに駆け寄った。
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