29 / 32
へ
しおりを挟むマリたち侍女は入口の扉の前に並んでいた。
サササッと侍女たちの列の両端にそれぞれ移動した私たちは、にやり、と少し黒い笑顔をした顔を見合わせた。
「せぇのっ!」
ガバッと侍女たちの両端から同時に背中側を覗き込むと、そこにシエルがニコニコ立っていた。
「わぁ、みつかっちゃったね。」
「「しえる!みーつけた!」」
そっか!かくれんぼだからってどこか物陰に隠れる必要は無いのね!
「しえる、じょーずね!ひとのうしろにかくれたひと、いままでいなかったわ!」
「ほんと!びっくりしちゃった。」
「ふふふ、ありがとう。
どこに かくれたらいいか、まよってたら、じかんが なくなっちゃったんです。
ぐうぜん、かくれたのが じじょのみんなの うしろだったんだよ。」
わかるわ、そうよね。
思ってたより30秒って短かったもの。
人のお部屋だし、少し気を使うわよね。
「じゃあ、つぎはわたしが、おに するね。
どうする?おそとでやってみる?」
外でなら気を遣わないですむかも。
「さんせい!おそとでしましょう!」
「いいね」
私たちは外にでてかくれんぼをすることにした。
お外で遊ぶとなるといつも中庭だったんだけど、今日はかくれんぼだから隠れるところが多そうな南の庭園に来た。
木々が沢山あって、花壇もあって、隠れる場所がいっぱいだ。
みんなで隠れて見つけて走って笑って、とても楽しい遊びの時間…のはずだったのに。
さて、私はどうしてここにいるのでしょう。
「いやぁー!悪かったな!最近近くに入口出せなくてすまなかった!」
入口とはあの紫のモヤのことだろうか。
ガバガバ笑いながら私を向かい合わせに膝に乗せるのはじい様ことアシム・ルイスエール初代国王陛下…。
「じいさま、どうしてきゅうに わたしをつかまえたのですか。」
そう、なんとかくれんぼの2度目の鬼になってすぐ、走り出した私の足元にあの紫のモヤが現れたのだ。
避けることも止まることも出来なかった私は、スッと穴に落ちていった。
そこにいたのがこのじい様だ。
「 どうしてって、そろそろ寂しがる頃かと思ってな!そうだ、お友達も呼ぶか?」
「え?」
ごめんなさいじい様、寂しくは思ってなかったし、お友達も呼べません。
「お友達!呼ぶのね!」
「それなら俺たちが呼んでくるんだぜ!」
「えっ!?ち、ちょっと!」
いつの間にか現れた妖精コンビがあっという間に消えていった。
「うそぉ…。」
あまりにも唐突すぎて、私の顔はいま無になっているだろう。
「ま、まぁ。あいつらもお前さんが喜ぶと思ってやっちまったんだ。
許せ、とは言わないがその事は分かってやってくれ。」
私の頭を撫でながらじい様はしょうがないなぁという顔をした。
「それに、あの二人は大丈夫だ。
お前さんの一部を教えてやれ。」
「だいじょうぶ…?」
「ああ、大丈夫だ。」
じい様は私の顔を見て優しく微笑んだ。
「「うわぁ?!」」
そこにカーラとシエルがやってきた。
「連れてきたんだぜ!」
「連れてきたわ!」
自信満々の妖精コンビに対して2人はポカンとした顔をして床に座りながらこちらを見ていた。
先に我に返ったのはシエル。
ハッとした顔をして立ち上がるとこちらに歩いてくる。
それを見てカーラも我に返ったのか慌ててこちらに来た。
「ありす、だいじょうぶですか?」
「あ、ありす!そのひとだれ!」
真剣な顔をするシエルと、慌ててじい様に威嚇するカーラ。
「かーら、しえる。だいじょうぶ。」
よしよし、と近寄ってきた2人を撫でる。
シエルはまだ心配そうにこちらを見ている、ほわーんとした顔になったカーラは威嚇なんか忘れてしまったみたい。
「ほら、こいつらなら大丈夫だろ。
味方は増やしとけ、な?」
ワイルドな笑顔をしているけど、私の事を本気で心配していることが分かるその瞳に、固くなっていた体から少し力が抜けた。
真面目な顔をした2人の目を見て言う。
「あのね、このひとは しょだいこくおうへいか なの。」
「えっ!!」
大きな声を上げたカーラと真ん丸な目をしたシエル。
「ほんとにしょだいのへいかなの?!」
「そんなことがあるのですか?」
むむむ?信じていない?
「ほんとだよ。」
「ありすのことはしんじたいとおもっています。
だいじなともだちです。
でも、だからこそ、だまされていたらたすけてあげたいんです。」
心配そうな顔でこちらを見る2人に私もうるうるしてきた。
まずい、いまうるうるすると勘違いされてしまう。
「ちがうの、ほんとうにあしむへいかなの。
そうだ、じいさま。
じいさましか しらないはなしをしてください。」
「おお?いいぞー。
そうだな、いつの話がいい?
建国の時の話か?」
わあ、建国の話が聞けるなんて。
さすが生きた歴史。
うんうん、と頷く私とジト目の2人ににじい様は建国の時の話をしてくれたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
神守の少女、二度目の人生は好きに生きます〜因縁相手は勝手に自滅〜
雪水砂糖
ファンタジー
穢れから産まれる異形の化け物――禍憑(まがつき)と戦うべく存在する神守の家の娘、瑞葉は、従姉妹・花蓮の策略によって、何よりも大事な弟の光矢と共に命を奪われる。
弟の最期を目にした瑞葉の慟哭が暴走した神気を呼び起こす――そして目覚めた時、彼女は過去へ戻っていた。
二度目の人生は、弟と自らの命を守るための戦いであると同時に、これまでの狭い世界を抜け出し、多くを学び、家族との絆を取り戻し、己の望む道を切り拓くための戦いでもあった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
舞台は、日本風の架空の世界です。
《数少ない読者の方へ》
読んでくださりありがとうございます。
少ないながらもポイントが毎日増えているのが励みです。イイネを押してくださると飛び上がるほど喜びます。
タイトル変更しました。
元タイトル「神守の少女、二度目の人生で復讐を誓う」
書き進めているうちに、瑞葉が復習だけにとらわれるのではなく、二度目の人生とどう向き合っていくかが主題となりました。
たまに読み返して、名前や家格、辻褄が合わなくなった箇所をしれっと変えることがあります。作品を良くするため、何卒ご理解ください。
役立たずと追放された辺境令嬢、前世の民俗学知識で忘れられた神々を祀り上げたら、いつの間にか『神託の巫女』と呼ばれ救国の英雄になっていました
☆ほしい
ファンタジー
貧しい辺境伯の三女として生まれたリゼット。魔力も持たず、華やかさもない彼女は、王都の社交界で「出来損ない」と嘲笑われ、挙句の果てには食い扶持減らしのために辺境のさらに奥地、忘れられた土地へと追いやられてしまう。
しかし、彼女には秘密があった。前世は、地方の伝承や風習を研究する地味な民俗学者だったのだ。
誰も見向きもしない古びた祠、意味不明とされる奇妙な祭り、ガラクタ扱いの古文書。それらが、失われた古代の技術や強力な神々の加護を得るための重要な儀式であることを、リゼットの知識は見抜いてしまう。
「この石ころ、古代の神様への捧げものだったんだ。あっちの変な踊りは、雨乞いの儀式の簡略化された形……!」
ただ、前世の知識欲と少しでもマシな食生活への渇望から、忘れられた神々を祀り、古の儀式を復活させていくだけだったのに。寂れた土地はみるみる豊かになり、枯れた泉からは水が湧き、なぜかリゼットの言葉は神託として扱われるようになってしまった。
本人は美味しい干し肉と温かいスープが手に入れば満足なのに、周囲の勘違いは加速していく。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる