35 / 73
34.もう一人の影~2.黒い影~
しおりを挟む
黒い裂け目は、音もなく広がっていった。
建物も地面も、空気さえも吸い込まれるように崩れ、
アルト、ファントム、そしてセシリアは抗う間もなく虚無の中へと呑み込まれた。
次にアルトが目を開けた時、そこは——「何もない」場所だった。
上も下も、遠近も存在しない空間。
ただ、足元には薄く波打つ光の道が伸びている。
その道の先に、人影がひとつ。
アルト「……また、お前か」
そこに立っていたのは、映像で見た“もう一人のアルト”だった。
衣服は古代の戦装束のようで、胸元には青と紅、二つの結晶が嵌め込まれている。
もう一人のアルト「時を越えた盗人よ。ここは“契約の間”——選ばれし者だけが辿り着く場所だ」
男は静かに語り始めた。
ルナの涙と紅の結晶は、本来ひとつの存在。
太古の戦争の際、人類と異星双方の「願い」を守るため、二つに分けられた。
その力は「再構築」か「完全消去」のどちらかしか選べない。
世界を創り直すか、すべてを虚無に還すか。
最後の選択は、常に“二人”によって下される。
もう一人のアルト「……そして今、その時が再び訪れた。お前と——ファントムによって」
背後に気配を感じ、アルトは振り返る。
そこにはファントムが立っていた。
紅の結晶は淡く光り、彼の表情は静かだが、どこか諦めを含んでいた。
ファントム「俺は……消すつもりだった。全てを。
だが——お前の目を見たら、それが間違いかもしれないと思った」
セシリアが二人の間に立つ。
セシリア「未来を盗むって、そういうことでしょ? 消すんじゃなく、守るために奪う」
アルトは深く息を吸い、青い結晶を掲げた。
アルト「じゃあ、二つの力を……盗み、未来に隠す!」
次の瞬間、青と紅の光が重なり合い、
契約の間はまばゆい輝きに包まれていく。
——そして、その光の先に、新たな世界の輪郭が現れ始めた。
——まぶしさと共に、意識が浮上していく。
アルトはまるで水面から顔を出したような感覚で目を開けた。
そこは崩壊前の都市……ではない。
見慣れた建物が並びながらも、空の色は淡い瑠璃色に染まり、
空中にはゆっくりと光の粒が漂っていた。
セシリア「……ここ、どこ?」
アルト「……多分、“俺たちが作った世界”だ」
少し離れた場所で、ファントムが立っていた。
彼の持つ紅の結晶はひび割れ、もう力は失われている。
ファントム「どうやら……再構築は成功したらしいな」
「ただし、全てを元に戻したわけじゃない。
いくつかの出来事は……歴史から“盗まれた”」
その証拠に、崩壊の記憶を持っているのは三人だけだった。
街の中央広場に向かう途中、アルトは空を見上げた。
そこには小さな月のような光球が浮かび、
中心には青と紅、二色の輝きが脈動している。
セシリア「あれ……ルナの涙と紅の結晶?」
ファントム「そうだ。二つは再び一つになった。
だが……まだ“契約”は終わっていない」
ファントムの視線は、どこか遠くを見ていた。
まるで、この新しい世界のさらに外に、
何かが待ち構えていることを知っているように。
広場の噴水前に着いた時、
アルトは一瞬、視界の端に“黒い影”を見た。
それは以前の災厄の残滓なのか、
それとも別の何者か……判別できないまま、影は人混みに紛れて消えた。
アルト(まだ終わっちゃいない、ってことか)
口元に笑みを浮かべると、
彼はセシリアと並んで歩き出した。
アルト「さぁ、未来を盗みに行こう」
鐘の音が、再び新しい世界に響き渡った——。
建物も地面も、空気さえも吸い込まれるように崩れ、
アルト、ファントム、そしてセシリアは抗う間もなく虚無の中へと呑み込まれた。
次にアルトが目を開けた時、そこは——「何もない」場所だった。
上も下も、遠近も存在しない空間。
ただ、足元には薄く波打つ光の道が伸びている。
その道の先に、人影がひとつ。
アルト「……また、お前か」
そこに立っていたのは、映像で見た“もう一人のアルト”だった。
衣服は古代の戦装束のようで、胸元には青と紅、二つの結晶が嵌め込まれている。
もう一人のアルト「時を越えた盗人よ。ここは“契約の間”——選ばれし者だけが辿り着く場所だ」
男は静かに語り始めた。
ルナの涙と紅の結晶は、本来ひとつの存在。
太古の戦争の際、人類と異星双方の「願い」を守るため、二つに分けられた。
その力は「再構築」か「完全消去」のどちらかしか選べない。
世界を創り直すか、すべてを虚無に還すか。
最後の選択は、常に“二人”によって下される。
もう一人のアルト「……そして今、その時が再び訪れた。お前と——ファントムによって」
背後に気配を感じ、アルトは振り返る。
そこにはファントムが立っていた。
紅の結晶は淡く光り、彼の表情は静かだが、どこか諦めを含んでいた。
ファントム「俺は……消すつもりだった。全てを。
だが——お前の目を見たら、それが間違いかもしれないと思った」
セシリアが二人の間に立つ。
セシリア「未来を盗むって、そういうことでしょ? 消すんじゃなく、守るために奪う」
アルトは深く息を吸い、青い結晶を掲げた。
アルト「じゃあ、二つの力を……盗み、未来に隠す!」
次の瞬間、青と紅の光が重なり合い、
契約の間はまばゆい輝きに包まれていく。
——そして、その光の先に、新たな世界の輪郭が現れ始めた。
——まぶしさと共に、意識が浮上していく。
アルトはまるで水面から顔を出したような感覚で目を開けた。
そこは崩壊前の都市……ではない。
見慣れた建物が並びながらも、空の色は淡い瑠璃色に染まり、
空中にはゆっくりと光の粒が漂っていた。
セシリア「……ここ、どこ?」
アルト「……多分、“俺たちが作った世界”だ」
少し離れた場所で、ファントムが立っていた。
彼の持つ紅の結晶はひび割れ、もう力は失われている。
ファントム「どうやら……再構築は成功したらしいな」
「ただし、全てを元に戻したわけじゃない。
いくつかの出来事は……歴史から“盗まれた”」
その証拠に、崩壊の記憶を持っているのは三人だけだった。
街の中央広場に向かう途中、アルトは空を見上げた。
そこには小さな月のような光球が浮かび、
中心には青と紅、二色の輝きが脈動している。
セシリア「あれ……ルナの涙と紅の結晶?」
ファントム「そうだ。二つは再び一つになった。
だが……まだ“契約”は終わっていない」
ファントムの視線は、どこか遠くを見ていた。
まるで、この新しい世界のさらに外に、
何かが待ち構えていることを知っているように。
広場の噴水前に着いた時、
アルトは一瞬、視界の端に“黒い影”を見た。
それは以前の災厄の残滓なのか、
それとも別の何者か……判別できないまま、影は人混みに紛れて消えた。
アルト(まだ終わっちゃいない、ってことか)
口元に笑みを浮かべると、
彼はセシリアと並んで歩き出した。
アルト「さぁ、未来を盗みに行こう」
鐘の音が、再び新しい世界に響き渡った——。
0
あなたにおすすめの小説
卒業パーティーのその後は
あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。 だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。
そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる