傷物令嬢って私のことですか?

ルーキッドアン

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ブライオニーは侍女が運んでくれた身の回りのものを片付けながら、そう言えばとランディに問うた。

「ドレスの色はパートナーに合わせるってターニャが言ってたでしょう?
それで思い出したの。お母様が大切にされていたドレスの色が素敵な青緑だったなぁって。
お父様の目の色なのね、きっと。」

「あぁ、そうだね。」

「お兄様は婚約者だった...お名前忘れてしまったわ...あの方にドレスを贈ったりなさったの?」

おっと、話がこっちに来たなとランディは思った。 

「ああ。一度だけ贈ったよ」

「わぁ!どんな「でもその直後に別れたよ」」

「わぁ.......」

ランディは無機質で軽い声で答えた。

ガルシュ領の一部を任せている子爵家の令嬢エリーとは、歳が近い事と辺境の暮らしに慣れている事、爵位があり平民では無い事など条件が揃ってランディが学園を卒業した年に婚約した。
恋愛感情は無かったが、好ましいと感じたしガルシュ辺境伯領の嫡男として良い縁だと思っていた。

相手のエリー嬢からすれば、美男子で博識で嫡男のランディとの縁組は僥倖以外のなにものでもなかった。
誰もが羨む結婚相手であったからだ。

実利的なサイモンとランディは書面で契約を交わし、春を迎えたら婚約者のお披露目を兼ねたパーティーをと算段していた。

パーティーに間に合うようにエリーにドレスが贈られた。
今にして思えば、領内のドレスを扱う店に「こういったドレスを」と丸投げしたのだった。
高級な生地を使い、それなりの費用を掛けたドレスであったが、それがターニャが言っていたプレタポルテなのかオートクチュールなのかはもうどうでも良い話だ。

「ランディ様の瞳の色を使いましょう」と言われたのであろう。翠のドレスを贈ったと記憶している。
エリーも子爵家も大変喜んでくれたようで、感激いたしましたとお礼の手紙が届いた。
「パーティーを楽しみにしています」とエリーは手紙を結んでいた。

その冬。ブライオニーの誕生日に事は起きた。
11歳の誕生パーティーにおいて様々なプレゼントが贈られた。
家令や侍女達から、ランディ、ネイサンからも手渡された。
遠くオースティン家の祖父母からは植物全集が届き、ガルシュの高原に隠居している祖父母からは春に生まれた牝馬が、そしてサイモンからは美しい馬具一式が贈られた。

誕生日に招待されたエリーはブライオニーに白いファーの付いた可愛らしいケープコートを準備した。
「是非着てみてね」と手渡せば、ありがとうございますと照れながら受け取ったブライオニーであった。
その場で着てみてくれることを期待したエリーであったが、蝋燭の点ったケーキが運ばれてきた事でブライオニーは着席した。

エリーは不満を感じた。もっと喜んでくれて「どう!?似合うかしら?」となるはずであったのに...と。
エリーが受けた印象は馬と馬具をもらった時の感激が最高潮で、自分のプレゼントは蔑ろにされた様な、期待外れの気分であった。

ケーキを食べていてもソワソワと落ち着かないブライオニーに「馬は厩舎に居るよ」とサイモンが言うと、フォークを放って、見てくるー!!と上着も着ずに駆け出して行ってしまった。

「フフ...まるで野生児みたいね」
エリーが言った。
その声には棘を感じた。
ランディは飲んでいたティーカップを静かに置いて、ブライオニーの上着を手に厩舎へ向かった。
ネイサンは「野生児みたいじゃなくて野生児そのものだ」と笑った。
エリーは賛同を得たと思い「もうレディの歳なのに困るわね」としたり顔で紅茶を啜り、ランディはその声を背中で聞いていた。

そして数日後、ランディとエリーとの婚約は白紙となってしまったのであった。

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