傷物令嬢って私のことですか?

ルーキッドアン

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ダイニングに残ったターニャたちは冷めた紅茶を持て余していた。
侍女を呼ぶ気分にもならない。

「ね、お兄様」

「うん?」

「どうして私の顔に傷があるなんて話になったのかしら?」

「ああ。」

「ターニャから聞いたのだけど、ナターシャはこう...右頬をすすーうっとやってみせたって。
右って事は、2年前のアレの時の事よね?」

ギルバートとの「北へ一緒に行ってくれない?の件」で耳を怪我したことである。

ターニャはその件を知らなかったから、あの場でのナターシャは何を言っているのか?と思ったのだが、ブライオニーから説明されて納得した。
納得したと言ってもそれはガセネタであるからブライオニーが問うように何故歪曲されたのか気になる。

「傷?見せて」とターニャ。
ブライオニーは髪を耳にかけて此処ですと傷跡を指さした。

「今となっては目立たない傷だけど、その時は深刻だったの?」とターニャがそっと耳に触れながら聞く。

「全然。2、3針縫ったくらい?」

「5針だよ!」ランディが訂正する。
「あの怪我は俺も気が動転したくらいだ。
今でもあの日のことは忘れられないよ。ギルバートの剣が!って侍女が走ってきて....」

ランディは眉間に手を当てて目を閉じる。

「大袈裟なのよ、みんな」ブライオニーはあっさり言うが、いやいや...とランディが記憶を辿る。

「ビニーは赤く染まった手ぬぐいを、こう...頬から耳に当てていたし...本当に真っ赤だったぞ?
それで、ギルバートは混乱していて、父上も医者を呼んでこいってパニックだったからな。
そこだけ見てたら右頬を切ったのかと勘違いしたのかもしれない。」

「模擬剣よ?そりゃ、血は出たかもしれないけど....」

「出てたよ!」

「でも結局は大ごとではなかったのよ?ちょちょっと縫っておしまい。
なのにどうして?!
我が家の侍女やメイドや調理人達なら、私の顔に傷なんか出来なかったって分かるはずだし...」

「そうだよな.. .じゃあ、あの日、あのカオスな時だけ屋敷にいた者が、間違った情報を広めたのかも...」

ランディとブライオニーは仮説を立てる。
あの日だけ、いた人...
 「誰だろ?」


「誰?と言えばさ」とターニャ。

「エリーって、誰よ?」


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