傷物令嬢って私のことですか?

ルーキッドアン

文字の大きさ
59 / 72

59.

しおりを挟む
大聖堂の挙式から場所を移した王城の大広間は久しぶりの慶事に盛り上がりをみせていた。
しかし、その盛況の中でフォーク候爵の気分は殊の外冴えないのであった。

数日前に王城から齎された通達とマリアンヌから届いた叱責の手紙は、フォーク候爵の理解が追いつかず飲み込めないままフォーク候爵の胸の内で澱のように留まっていた。

更なる困惑は、昨日王城から宰相の名代として役人が我が家を訪れ、副侍女長であるオルテガ嬢を数時間取り調べて行ったと家令から報告された事であった。
そして直後、オルテガ嬢は職を辞して出て行ったと言うではないか。

ガルシュ辺境伯の息女と見合い話が齎されてからこちら、何かがおかしい。
不可解、不可解と思いながらこの場に至ってしまったフォーク候爵であった。

先ほど、社交界の慣例を袖にして辺境伯らが候爵家らより後に呼び込まれると通達があった。
困惑の渦中にいるフォーク候爵自身は然程気にしなかったが、候爵夫人と子供らは不満を口にし六候爵家の順番でも争った。
結果、候爵家の中で最後に入場することになったが特段気分が良いことでもない。

大広間に入って程なく辺境伯らが呼ばれ、ガルシュ辺境伯も入ってきた。
久しぶりに見るサイモン・ガルシュは相変わらず隆々と逞しく、頭髪の後退も白髪化も無く若々しい。
ただ、入場に際して明らかに周囲がざわついた。
ふと、例の通達がよぎる。
「謂れなき...噂。ガルシュ家の名誉...」

その答えか、答えの一部なのか?
周囲から更に驚きの声が上がった。

「ガルシュ家のお嬢様に傷跡なんてないじゃないの!」
「醜い傷跡があるって噂は嘘だったんだな」
「美しいご令嬢じゃないか!」

フォーク候爵もガルシュ家の息女に目を向けた。
どういうことだ?
ニコラスは息女と面会した日に確かに傷があったと言っていた。
いや、会う前からナターシャが「傷物令嬢」と散々罵っていた。
どういう事だ...思考が纏まらない。

フォーク候爵の隣では夫人が、ナターシャの方が可愛いだの、あのドレスは流行りじゃないだのヤイのヤイの五月蝿い。
あぁ本当に五月蝿い!

ナターシャを見れば、サイモン殿の息女を睨んで「何で?」と憤慨している。
さらにニコラスを見れば、同じくサイモン殿の息女を見つめて「嘘だ..嘘だ」と呆然である。

何で?じゃない!嘘だなんて言うな!
件の令嬢の顔に傷跡が無いのであれば、見合い話を断った前提が狂ってくるではないか。
そもそもナターシャ!どうしてそんな誤解をしたのだ!?

全く状況が掴めない候爵は、マリアンヌに手紙の事も含めて真相を聞くしか無いと思った。







しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

十年間虐げられたお針子令嬢、冷徹侯爵に狂おしいほど愛される。

er
恋愛
十年前に両親を亡くしたセレスティーナは、後見人の叔父に財産を奪われ、物置部屋で使用人同然の扱いを受けていた。義妹ミレイユのために毎日ドレスを縫わされる日々——でも彼女には『星霜の記憶』という、物の過去と未来を視る特別な力があった。隠されていた舞踏会の招待状を見つけて決死の潜入を果たすと、冷徹で美しいヴィルフォール侯爵と運命の再会! 義妹のドレスが破れて大恥、叔父も悪事を暴かれて追放されるはめに。失われた伝説の刺繍技術を復活させたセレスティーナは宮廷筆頭職人に抜擢され、「ずっと君を探していた」と侯爵に溺愛される——

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~

柚木ゆず
恋愛
 今日は私が、ラファオール伯爵家に嫁ぐ日。ついにハーオット子爵邸を出られる時が訪れましたので、これまで隠していたことをお伝えします。  お姉様たちは私を苦しめるために、私が苦手にしていたクロード様と政略結婚をさせましたよね?  ですがそれは大きな間違いで、私はずっとクロード様のことが――

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

処理中です...