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6話 新たな婚約
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1番上からなめらかな声で読み上げる。
「王政を任せていたことに関する報酬について」
先程、サインの上に書かれた文字を読んでしまったのか、何かに怯えるようにイラは俯き、リミス様の後ろに隠れてしまった。
「ひとつ、イラ嬢の身分を剥奪し、国外追放に処すこと。ふたつ、王太子の座はリミス王子から弟のセリーセン王子に移すこと。以上でございます」
リミス王子の表情が絶望の表情に変わるのを見届けると、私は2人に微笑みかけた。
「でたらめを言わないで。嘘に決まっているわ」
この後に及んでまだ抵抗するのか。言い返してやろうと思い、一歩踏みよろうとすると、上から光が差してきた。この部屋にはちゃんと天井があるので、太陽光ではない。あの光は、もしかしたら。
「お兄様……」
契りの兄、最高神のマイオーティル様だ。光の中から足が見え、体がだんだんと現れる。そして、この世で1番美しいとされる顔まで見えきった途端、その場にいた私たち3人以外の全員がひざまづいた。神様の前ではたとえそれがどんな位の神様だったとしても、膝を折るのが当然のルールだ。けれど、私は違う。マイお兄様の許可をいただいているからだ。けれど、あの2人はなんなのだろうか。ただ呆然と見つめているだけで、ひざまづく気配が一切ない。神様が普通にいるこの世界。神様に会うのが初めてで、マナーを知らないと言うわけではないだろうに。
「ジレッカ。久しぶりだね」
白色かと思えば透明にも見える綺麗な長い紙を靡かせながら、地に舞い降りる姿は本物の神様だ。
「お久しぶりです、マイお兄様」
マイお兄様は私を囲むように抱き締めると、耳元でボソリと素晴らしい提案をしてくれた。
「まあ、願ってもないことですが、構いませんの」
私が嬉しさを隠せないままそう尋ねると、マイお兄様も嬉しそうににこりと微笑んだ。
「お父様、聞いてください。今、素晴らしいことが決まりましたの」
お父様が顔を上げてキョトンとした顔で私たちを見つめていた。
「私、リミス王子との婚約を破棄して、マイお兄様と婚約しますわ」
浮気ばかりして、王位もつがない王子に嫁ぐよりは、大好きなマイお兄様に嫁ぐ方がよっぽどいい。そっちの方が、何万倍も幸せになれることだろう。
「そ、そうか。それはよかったな」
展開について行けていないお父様は、まるで他人事のようにそう言った。
この世界では、神に嫁ぐのはそう珍しいことではないのだが、正妃として嫁ぐとなればそれはもう珍しく、大変喜ばしいことなのだ。
パチ、パチパチパチパチ。だんだんと拍手が広がっていく。最高神に嫁ぐとなれば、国を挙げてのお祝いをしなければならないくらい素晴らしいことなのだ。ここにいる貴族の皆様方も、それを喜んでくださっているのだろう。私は一歩足を引き、ゆっくりお辞儀をしようとした。
「嘘だ」
嘘だと言ってくれ。そう願うような、怒っているような声が会場中に響き渡った。
「王政を任せていたことに関する報酬について」
先程、サインの上に書かれた文字を読んでしまったのか、何かに怯えるようにイラは俯き、リミス様の後ろに隠れてしまった。
「ひとつ、イラ嬢の身分を剥奪し、国外追放に処すこと。ふたつ、王太子の座はリミス王子から弟のセリーセン王子に移すこと。以上でございます」
リミス王子の表情が絶望の表情に変わるのを見届けると、私は2人に微笑みかけた。
「でたらめを言わないで。嘘に決まっているわ」
この後に及んでまだ抵抗するのか。言い返してやろうと思い、一歩踏みよろうとすると、上から光が差してきた。この部屋にはちゃんと天井があるので、太陽光ではない。あの光は、もしかしたら。
「お兄様……」
契りの兄、最高神のマイオーティル様だ。光の中から足が見え、体がだんだんと現れる。そして、この世で1番美しいとされる顔まで見えきった途端、その場にいた私たち3人以外の全員がひざまづいた。神様の前ではたとえそれがどんな位の神様だったとしても、膝を折るのが当然のルールだ。けれど、私は違う。マイお兄様の許可をいただいているからだ。けれど、あの2人はなんなのだろうか。ただ呆然と見つめているだけで、ひざまづく気配が一切ない。神様が普通にいるこの世界。神様に会うのが初めてで、マナーを知らないと言うわけではないだろうに。
「ジレッカ。久しぶりだね」
白色かと思えば透明にも見える綺麗な長い紙を靡かせながら、地に舞い降りる姿は本物の神様だ。
「お久しぶりです、マイお兄様」
マイお兄様は私を囲むように抱き締めると、耳元でボソリと素晴らしい提案をしてくれた。
「まあ、願ってもないことですが、構いませんの」
私が嬉しさを隠せないままそう尋ねると、マイお兄様も嬉しそうににこりと微笑んだ。
「お父様、聞いてください。今、素晴らしいことが決まりましたの」
お父様が顔を上げてキョトンとした顔で私たちを見つめていた。
「私、リミス王子との婚約を破棄して、マイお兄様と婚約しますわ」
浮気ばかりして、王位もつがない王子に嫁ぐよりは、大好きなマイお兄様に嫁ぐ方がよっぽどいい。そっちの方が、何万倍も幸せになれることだろう。
「そ、そうか。それはよかったな」
展開について行けていないお父様は、まるで他人事のようにそう言った。
この世界では、神に嫁ぐのはそう珍しいことではないのだが、正妃として嫁ぐとなればそれはもう珍しく、大変喜ばしいことなのだ。
パチ、パチパチパチパチ。だんだんと拍手が広がっていく。最高神に嫁ぐとなれば、国を挙げてのお祝いをしなければならないくらい素晴らしいことなのだ。ここにいる貴族の皆様方も、それを喜んでくださっているのだろう。私は一歩足を引き、ゆっくりお辞儀をしようとした。
「嘘だ」
嘘だと言ってくれ。そう願うような、怒っているような声が会場中に響き渡った。
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