婚約破棄さん逃げないで

空月 若葉

文字の大きさ
7 / 12

7話 ようこそ

しおりを挟む
 私はうまく笑ったつもりだったのだけれど無意識のうちに少し眉が歪む。どう頑張っても綺麗に笑えない。案外私は自分が思っていたよりも困っていたらしい。
「そっか。じゃあちょっときて」
ライアンは私とお兄さんの手を掴んで引っ張って歩いた。向かう先は路地裏のようだが。
「まさかライアンさ……ライアン、連れて帰るつもりですか」
連れて帰……え、いや、は。連れて帰られちゃうの、私。泊めてくれるとでも。流石に一緒に人探しをしただけでそこまでしてもらうわけには行かないし何よりさっき会ったばかりの人の家に泊まるのは怖すぎる。
「ら、ライアン。私は宿を紹介して欲しくて……」
抵抗も虚しくグイグイと引っ張られる。というかなぜ路地裏に向かうの。いくらなんでも流石に怖い。
「いいからいいから」
路地裏の奥へと連れ込まれる。だめだめだめだめ。隣のお兄さんをチラッと見て助けを求めるもお兄さんはすでに諦めているようで素直に引きずられて歩いている。
 角を曲がり人が見えなくなる。どこに連れて行かれるの。怖い、怖いって。怖すぎる。
「じゃあ、俺がせーのって言ったら目を瞑ってね」
目を閉じているうちに何をされるというの。
「じゃあいくよ。せーのっ」
閉じてはいけないとわかっていたのに、私は思わず目を閉じた。

 地面がふわふわしているような感覚がする。そんなわけがないここは外なのだから、あのカーペットの上にいるようなこんな感覚するわけがない。
「もう目を開けていいよ」
私はそう言われて目を開けた。……あれ、おかしいな。ここ、どこだろう。暗めの色で統一された部屋の中。ん、待てよ。部屋の中。
「え、あの、ちょっ、まっ」
意味不明な言葉が漏れ出すばかりで私の頭はちっとも冷静にならない。転移のマジックアイテムを使ったの。けれどこんな部屋、見たことがない。ほら、窓の外も真っ暗……。え、真っ暗。
 慌てて窓に駆け寄り窓の外を覗く。それは確かに夜だった。それに見下ろす町並みにも見覚えがない。ここはどうやらお城のようなのだが私の知っている国のお城ではないようだ。その城は暗い色で埋め尽くされていて……。まるで、噂に聞いた魔王城のような。
「いらっしゃい、オリビア。ようこそ、魔の国へ」
ま、魔の国ですって。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

捨てられた悪役はきっと幸せになる

ariya
恋愛
ヴィヴィア・ゴーヴァン公爵夫人は少女小説に登場する悪役だった。 強欲で傲慢で嫌われ者、夫に捨てられて惨めな最期を迎えた悪役。 その悪役に転生していたことに気づいたヴィヴィアは、夫がヒロインと結ばれたら潔く退場することを考えていた。 それまでお世話になった為、貴族夫人としての仕事の一部だけでもがんばろう。 「ヴィヴィア、あなたを愛してます」 ヒロインに惹かれつつあるはずの夫・クリスは愛をヴィヴィアに捧げると言ってきて。 そもそもクリスがヴィヴィアを娶ったのは、王位継承を狙っている疑惑から逃れる為の契約結婚だったはずでは? 愛などなかったと思っていた夫婦生活に変化が訪れる。 ※この作品は、人によっては元鞘話にみえて地雷の方がいるかもしれません。また、ヒーローがヤンデレ寄りですので苦手な方はご注意ください。 ※表紙はAIです。

悪役とは誰が決めるのか。

SHIN
恋愛
ある小さな国の物語。 ちょっとした偶然で出会った平民の少女と公爵子息の恋物語。 二人には悪役令嬢と呼ばれる壁が立ちふさがります。 って、ちょっと待ってよ。 悪役令嬢だなんて呼ばないでよ。確かに公爵子息とは婚約関係だけど、全く興味は無いのよね。むしろ熨斗付けてあげるわよ。 それより私は、昔思い出した前世の記憶を使って色々商売がしたいの。 そもそも悪役って何なのか説明してくださらない? ※婚約破棄物です。

最近のよくある乙女ゲームの結末

叶 望
恋愛
なぜか行うことすべてが裏目に出てしまい呪われているのではないかと王妃に相談する。実はこの世界は乙女ゲームの世界だが、ヒロイン以外はその事を知らない。 ※小説家になろうにも投稿しています

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

逆ハーENDは封じられました

mios
恋愛
乙女ゲームのヒロインに転生したので、逆ハーを狙ったら、一人目で封じられました。 騎士団長の息子(脳筋)がヒドインを追い詰め、逆ハーを阻止して、幸せにする話。

聖女の力は使いたくありません!

三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。 ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの? 昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに! どうしてこうなったのか、誰か教えて! ※アルファポリスのみの公開です。

逆ハーレムを完成させた男爵令嬢は死ぬまで皆に可愛がられる(※ただし本人が幸せかは不明である)

ラララキヲ
恋愛
 平民生まれだが父が男爵だったので母親が死んでから男爵家に迎え入れられたメロディーは、男爵令嬢として貴族の通う学園へと入学した。  そこでメロディーは第一王子とその側近候補の令息三人と出会う。4人には婚約者が居たが、4人全員がメロディーを可愛がってくれて、メロディーもそれを喜んだ。  メロディーは4人の男性を同時に愛した。そしてその4人の男性からも同じ様に愛された。  しかし相手には婚約者が居る。この関係は卒業までだと悲しむメロディーに男たちは寄り添い「大丈夫だ」と言ってくれる。  そして学園の卒業式。  第一王子たちは自分の婚約者に婚約破棄を突き付ける。  そしてメロディーは愛する4人の男たちに愛されて……── ※話全体通して『ざまぁ』の話です(笑) ※乙女ゲームの様な世界観ですが転生者はいません。 ※性行為を仄めかす表現があります(が、行為そのものの表現はありません) ※バイセクシャルが居るので醸(カモ)されるのも嫌な方は注意。  ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げてます。

処理中です...