私に幸せになって欲しい?なら婚約破棄よ

空月 若葉

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本編

1話 私の正体

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 おかしなことを言っていると思わないで欲しいのだが、私はとある秘密を抱えている。その秘密は今まで誰にも話したことはなく、私はずっと1人でその秘密を抱えている。けれど孤独だと思ったことはない。私を大切にしてくれる両親がいるからだ。
 私の秘密。それは。
「アリッサ。どうかしたかい」
ゲーム世界の悪役令嬢アリッサに転生した元地球人であると言うことだ。

 隣には婚約者。私が前世、鈴菜だった頃プレイしていた乙女ゲームに出てきた悪役令嬢の婚約者だ。けれど今となっては彼は私の婚約者だ。
 私は気がつけばこの世界に転生していた。鈴菜である私が生きているのか、死んでいるのか。話してこれが夢なのかはわからないが夢にしては覚める気配がないし、おそらく転生してしまったのだろうと思う。赤ん坊の頃、初めて目を開けたときは戸惑ったものだ。私は高校生のはずなのに、どうして赤ちゃんになってるの。驚きすぎて泣くのも忘れてしまったくらいだ。それと、ここがゲームの世界で私が悪役令嬢だと気がついたとき。気がついた時には私はこの国の第二王子のエイダン様と婚約してしまっていたし、今更断るなどできなくて。どうせヒロインのあの子と結ばれるとわかっていたのなら何か理由をつけて婚約しなければいい話なのだが、それはもうできないのだと気がついた時の絶望感はすごかった。どうすればいいかわからなくて、怖くて不安で泣いた日もあった。けれど私はあることに気がついてある日から泣かなくなった。
「アリッサ」
もう一度声をかけられて流石に返事をしなければと心配そうに私の肩に手を添えるエイダン様の顔を見上げる。
「すみません、少し考え事をしていました」
肩に置かれた手を優しくひっぺがす。あなたが好きなのはヒロインなのだから、私に優しくしなくていいのに。というよりも、触らないでちょうだい。
「考え事。何を考えていたんだい。今日のおやつかい。それなら極上のものを用意しているから、楽しみにしておいて」
今日のおやつ。国民は重すぎる税金に苦しんでいるのに。それを訴えたヒロインに心惹かれるはずだったあなたなのに。どうしてそんなことが言えるのかしら。ゲームと違いすぎて訳がわからないわ。それなのにヒロインに惹かれるところは変わらないなんて、困ったものね。悪い所どりじゃないの。
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