私に幸せになって欲しい?なら婚約破棄よ

空月 若葉

文字の大きさ
2 / 7
本編

2話 婚約破棄ですわ

しおりを挟む
 ニコニコと笑顔を作って話題を逸らそうと試みる。面倒だからあまり根掘り葉掘り聞かないで欲しいのだが。それにしても、どうしてこの男は私の屋敷にいるのだろうか。ヒロインのことが好きなら私との婚約を破棄してヒロインと婚約して、堂々としていればいいものを。私のところに来てご機嫌取りなどする必要はないのに。まあ、私にとっては準備も整っているし、好都合なのだけれど。
「何か悩みがあるなら話してごらん。僕はいつでも君の幸せを願っているよ」
いつでも、ねえ。ヒロインを慕っているあなたがねえ。
「そうですか。そんなに私の幸せを願っているのなら……」
それなら言ってあげる。あなたも待ち望んでいるであろう言葉を、あなたに送ってあげる。
「婚約破棄、しましょうか」
顔に笑みを浮かべて私は言い放った。驚きすぎて声も出ない彼に優しく微笑みかける。早く頷きなさいよ。今なら許してあげるかもしれないわよ。あなたのう、わ、き。
「私、知っていますのよ。あなたと私の従姉妹の関係を」
エイダン様は相変わらず何も言わなかったが、私の言葉に反応したのか肩をビクッと動かした。あなたは好き放題していましたものね。何度も平民に扮してデートをして、公園でキスをしたのを私は知っているのよ。あなたたちは誰にも知られていないつもりだったのでしょうけれど、平民に変装するための服は誰が選んだと思っているの。町まで連れて行ってくれたのは誰だと思っているの。従者たちよねえ。そんなことをしていれば従者たちに信頼されないのも当然ね。いろいろ話してくれたわよ。罪悪感があったみたいで、一つ質問したら十も返答が返ってきましたわ。
「ねえ、ご存知。私達の婚約に関する書類の内容を」
まあ、どこの貴族の婚約でも取り決められるような内容でしょうけれど、あなたが知らないと言うのであれば一応お教えしておきましょう。
「片方が浮気をしたらもう片方は慰謝料を請求でき、婚約破棄ができる、と書かれておりますの」
慰謝料の上限は残念ながら決められていたけれど。きっと本来は王子様であるあなたのために決められた事項なのでしょうけれど、結局私が利用することになってしまいましたわね。
「慰謝料、請求させていただきますわそれと」
嫌ね。何か返事をなさったら。どうして私1人で話さなければいけないのかしら。人形遊びでもしている気分だわ。
「婚約破棄ですわ」
笑っているつもりだけれど、きっと私の目は目の前にいる彼を睨んでいることだろう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カタリナ・クレールの断罪はお断り(断罪編)

三色団子
恋愛
カタリナ・クレールは、悪役令嬢としての断罪の日を冷静に迎えた。王太子アッシュから投げつけられる「恥知らずめ!」という罵声も、学園生徒たちの冷たい視線も、彼女の心には届かない。すべてはゲームの筋書き通り。彼女の「悪事」は些細な注意の言葉が曲解されたものだったが、弁明は許されなかった。

お金に目がくらんで、婚約破棄しました

こうじゃん
恋愛
婚約していたアランに婚約破棄しました。 だって、お金がないんだもん。 新たに婚約を申し出てくれたトレーニ伯爵は、お金持ち。 しょうがないよね???? わたし、愛よりお金をとります!!

わたくし、連座で処刑は嫌ですわ!!!

碧井 汐桜香
恋愛
連座で処刑される、悪役令嬢の取り巻きに転生したわたくし。 悪役令嬢親衛隊の下っ端で、殿下と令嬢の恋を見守る会の一般会員。 そんな下っ端のわたくしが連座で処刑なんて、絶対に嫌ですわ! 必死に妨害をして、少しだけストーリーが変わったきがするような……?でも、ついに断罪の日になってしまいましたわ! あれ?何か様子がおかしいですわ……?

婚約破棄。される前にしてやりましょう

碧井 汐桜香
恋愛
乙女ゲーの悪役令嬢だと気づいたのは、断罪されるパーティーに向かう馬車の中!? お父様に頼んで各所と交渉してもらい、いろんな証拠をしっかりと固めて、先に婚約破棄を宣言して差し上げましょう。

婚約破棄した王子が見初めた男爵令嬢に王妃教育をさせる様です

Mr.後困る
恋愛
婚約破棄したハワード王子は新しく見初めたメイ男爵令嬢に 王妃教育を施す様に自らの母に頼むのだが・・・

婚約破棄されたのに、王太子殿下がバルコニーの下にいます

ちよこ
恋愛
「リリス・フォン・アイゼンシュタイン。君との婚約を破棄する」 王子による公開断罪。 悪役令嬢として破滅ルートを迎えたリリスは、ようやく自由を手に入れた……はずだった。 だが翌朝、屋敷のバルコニーの下に立っていたのは、断罪したはずの王太子。 花束を抱え、「おはよう」と微笑む彼は、毎朝訪れるようになり—— 「リリス、僕は君の全てが好きなんだ。」 そう語る彼は、狂愛をリリスに注ぎはじめる。 婚約破棄×悪役令嬢×ヤンデレ王子による、 テンプレから逸脱しまくるダークサイド・ラブコメディ!

魔法にかかった本物の悪役令嬢は求婚される

仲室日月奈
恋愛
「フランツェスカ・ヴァイス。君との婚約を、今日限りをもって破棄させていただく。理由は君が一番理解しているだろう」 婚約破棄から始まる断罪イベント。決められたシナリオのように話は進むが、新たな婚約者に指名されたディアナにはある秘密があった――。

堕とされた悪役令嬢

芹澤©️
恋愛
「アーリア・メリル・テレネスティ。今日を持って貴様との婚約は破棄する。今迄のレイラ・コーストへの数々の嫌がらせ、脅迫はいくら公爵令嬢と言えども見過ごす事は出来ない。」 学園の恒例行事、夏の舞踏会場の真ん中で、婚約者である筈の第二王子殿下に、そう宣言されたアーリア様。私は王子の護衛に阻まれ、彼女を庇う事が出来なかった。

処理中です...