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第14話「マカルガエシ」
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彼女たちが去って、一時間ぐらいが経った。
このまま戻ってこないのではないだろうか、すべて私のせいにするつもりなのではないだろうか、そんなことを疑ったりして、不安な気持ちになった。
岩の上にはナムちゃんの体が横たわっている。開いた目は、光を失い、今は白く濁り始めているように見えた。
ササちゃんを見守っているように言われたけれど、私はナムちゃんのそばにいて、彼女の体に寄ってくるアリや、米粒ぐらいのコバエを追い払った。
ナムちゃん。この町で、初めてできた私の友達。
私は彼女の冷たくなった手を握った。彼女の指はかたく、開くことができなかった。それに彼女の手がもう二度と、私の手を握り返してくれることはないと思い知らされた。
「本当に、死んじゃったんだね……」
息がつまり、涙で視界がにじんだ。
ふと、ササちゃんのことを思い出した。今彼女はどうしているだろうか。
彼女は少し離れたところで屈んでいた。
「ササちゃん、なにしてるの?」
「ヤグチさんがいってた物をあつめてるの……」
彼女は雑草を引き抜いて集めているようだった。
それはヤグチさんが私にしておくように言ったことだけれど、意味がわからなくて、とてもする気になれなかった。何かの葉っぱと植物のツルを集めて、それを何に使うのか、まったくわからなかった。
「ヤグチさんは、それでなにをするつもりなの?」
「マカルガエシ」
「まかるがえし? なにそれ?」
耳慣れない言葉に私は聞き返した。
「死んだ人を生き返らせるの」
ササちゃんもヤグチさんの言ってたことを信じているようだった。
「そんなこと、できるわけない」
ようやく私は目の前の現実をみとめ、冷静さを取り戻すことができて、そう口にすることができた。相手がササちゃんだからかもしれないけれど。
ササちゃんは私の方を見向きもせず、
「ナムちゃんは、わたしが助ける……わたしが助けるの……」
そうひとりごとを言いながら、雑草を集め続けていた。
* * *
北の山裾の、シシガキの森にきたのは朝の八時ぐらいだった。日が空の上にのぼっていて、森にきてから三時間ぐらいが経ったかもしれない。
ようやくヤグチさんとピコちゃん、セリちゃんが戻ってきた。そのヤグチさんの手には、この場につりあわない、おもちゃのステッキがあった。アニメで少女が変身するのに使っていたものだったと思う。ほかにも三人を呼ぶようなことを言っていたけれど、結局彼女たちだけだった。
三人はそれぞれリュックサックを背負っていて、重たそうにおろして、岩の近くに置く。
「これ……」
ササちゃんが手にいっぱい集めた雑草をヤグチさんに見せる。
「けっこう集めたな」
ヤグチさんがそう言って、リュックサックの中から短い棒とすり鉢を取り出し、ササちゃんにわたす。
「葉っぱだけすりつぶしておいて」
「わかった……」
次にヤグチさんはナムちゃんを見る。
「とりあえずナムちぃの服を脱がそう」
そう言ってヤグチさんがナムちゃんの服を脱がそうとする。
ナムちゃんが死んでから、もう三時間ほど経っている。彼女の体はかたくなっていて、関節を曲げ伸ばすことができなくなっていた。
ヤグチさんがリュックサックの中からカッターを取り出し、ナムちゃんのシャツを切り裂いて裸にしていく。
それに私は、あまりのことに気が遠くなりそうだった。
死んでいるからといって、どうしてこんなひどいことができるのだろうか。
いつもはヤグチさんが悪さをすると、ピコちゃんやセリちゃんが注意するのに、今彼女がすることを責めたり怒る様子はなかった。
「セリ、脱がすの手伝って」
「うん」
それどころかセリちゃんはヤグチさんを手伝って、ナムちゃんのサンダルや下を脱がす。
ピコちゃんはもってきたリュックサックから、水の入った大きなペットボトルと牛乳パックを取り出していた。
そのうちにナムちゃんが裸にされる。彼女の細い体には肋が浮いていて、服で見えなかった肌には青や紫色のアザがあった。
「ピコナ、水ちょうだい」
ヤグチさんはピコちゃんからペットボトルごと受け取り、フタを開けると、水をナムちゃんの体にかける。体を洗おうとしているのかと思ったけれど、次に牛乳をかけていた。かけおわると、濡れた彼女の体が白い膜におおわれているように見えた。
「ササカ、できた?」
「うん」
「ナムちぃの全身にぬっておいて」
ササちゃんがすり潰した葉っぱをナムちゃんの体に塗りつけていく。それをセリちゃんが手伝った。それがおわると、ヤグチさんは集めたツルをナムちゃんに巻きつけていく。途中でそれをピコちゃんと交代して、ヤグチさんは線香のような細い棒を取り出すと、その端にライターで火をつけた。それを振って火を消すと、青みを帯びた白い煙がゆらゆらとのぼり、線香とは違う、甘いような、鼻の奥がちくちくするような辛い香りが広がった。火葬で人が焼かれたあとの匂いに似ている気がした。
ナムちゃんの体はいろいろなものに濡れて、全身に植物のツルが巻きつけられて、邪悪な何かに捧げられる供物のようだった。
マカルガエシというのが何かわからない。ただおぞましく、忌まわしいことが行われているのはわかった。それでも私は彼女たちを見ていることしかできなかった。
* * *
それから彼女たちはリュックサックの中からいろいろなものを取り出す。
セリちゃんは三本のストールと、二つのコンパクトを取り出した。黄色と黒のストライプと、淡い緑色、蛇の鱗を思わせるモザイク柄のものだった。コンパクトは、金色とピンク色で、表面にはレリーフが刻まれ、宝石のようなものがはめこまれていた。
ピコちゃんはお祭りの屋台にありそうな、色や模様の違うゴムボールを四つ。それぞれ握り拳ぐらいの大きさだった。
「どれがどれだっけ?」
ピコちゃんがヤグチさんに聞く。
「それっぽいのでいいんじゃない? どれがイクタマっぽい?」
「青いのかな。なんか地球っぽいし」
「それでいいんじゃない」
ヤグチさんはピコちゃんとセリちゃんのもってきたものに名前をつけていった。
セリちゃんのストールはハチノヒレ、クサグサノヒレ、ヘビノヒレ。コンパクトは金色のものがオキツカガミ、ピンク色のものがヘツカガミ。ピコちゃんのボールはイクタマ、マカルガエシノタマ、タルタマ、チガエシノタマ。そしてヤグチさんがもってきたステッキがヤツカノツルギ。
この状況でなければ、何かのごっこ遊びをしているように思っただろう。彼女たちは真面目に、これが死んだ人を生き返らせることに必要なことだと思っているようだった。
「タネコはこれやって」
不意にヤグチさんが、私に二本のストールを手渡してくる。私は逆らえずそれを受けとった。一つは黄色と黒のストライプのもので、ハチノヒレと呼んでいた。もう一つは淡い緑色のもので、クサグサノヒレと。
セリちゃんはそれぞれの手にコンパクトをもち、開くとフタの裏が鏡になっていた。
ピコちゃんはステッキとゴムボール。ヤグチさんはそれぞれの手にゴムボールをもつ。そしてササちゃんは最後のゴムボールと、モザイク柄のストールをもたされた。
「ナムちぃを囲んだら、それぞれもったものをナムちぃに向けて、わたしの動きにあわせて腕を揺らして」
「わかった」
ピコちゃんたちがナムちゃんを囲むように立つ。私はわけがわからないまま、彼女たちの様子を見ながら従った。
「それじゃ、はじめるから」
そう言ってヤグチさんが手にもったゴムボールをナムちゃんに向けてかざす。それに三人も続いた。私も同じようにする。
「ひ、ふ、み、よ、いつ、む、なな、や、ここ、とお」
ヤグチさんが何かを唱え始めた。
「ふるべ、ゆらゆら、ゆらゆらと、ふるべ」
その呪文にあわせて、彼女が手にもったゴムボールを揺らすように振る。ほかの三人も同じようにしていたので、私もそれを真似した
「ふるべ、ゆらゆら、ゆらゆらと──」
ヤグチさんが繰り返し唱えながら、手にもったものを振り続ける。私たちも同じように続けた。
ヤグチさんはこれを、ナムちゃんを生き返らせるために行っているようだけれど──私は少しも信じていなかった。ナムちゃんに生き返ってほしいと思うけれど、こんなことは無駄だと思っていた。
それでもヤグチさんがこんなことをするのは、彼女がこの現実を受け入れることができないからかもしれない。
ピコちゃんやセリちゃんだって、ナムちゃんが死んだことに動揺して、何も考えられなくてヤグチさんに従っているのだろう。
そう思って納得しようとしても、彼女たちの得体の知れない不気味さと、違和感は拭えなかった。
十回ほど繰り返したあと、ヤグチさんが唱えるのをやめ、手をおろす。ピコちゃんやセリちゃんもおろすのを見て、私も同じようにやめた。
それから私たちはナムちゃんを見守った。儀式がおわったのだから、ナムちゃんが生き返るはずだった。
わかっていたことだけれど、そんなことでナムちゃんが生き返るわけがなかった。彼女は変わらず死んだままだった。
夏の日差しがじりじりと首の後ろを焼く。セミの声が何かをせき立てるように聞こえた。
「ああああああああっ!」
突然ササちゃんが悲鳴をあげてうずくまる。私は驚いて彼女を見た。うずくまり、顔をおおって、彼女は悲鳴をあげ続けていた。
彼女の身に何か異変が起きたのではないかと心配になったけれど、ヤグチさんたちは無表情に彼女を見ているだけだった。
「これを今日から二十七日間、毎日続ける」
そうヤグチさんが言った。
私は、こんなことで死んだ人が生き返るとは思えないし、それをあと二十六回することに意味があるとは思えなかった。
ただピコちゃんもセリちゃんも何も言わなかった。ササちゃんはわからないけれど、二人がヤグチさんの言っていることを信じているように思えて怖かった。
このまま戻ってこないのではないだろうか、すべて私のせいにするつもりなのではないだろうか、そんなことを疑ったりして、不安な気持ちになった。
岩の上にはナムちゃんの体が横たわっている。開いた目は、光を失い、今は白く濁り始めているように見えた。
ササちゃんを見守っているように言われたけれど、私はナムちゃんのそばにいて、彼女の体に寄ってくるアリや、米粒ぐらいのコバエを追い払った。
ナムちゃん。この町で、初めてできた私の友達。
私は彼女の冷たくなった手を握った。彼女の指はかたく、開くことができなかった。それに彼女の手がもう二度と、私の手を握り返してくれることはないと思い知らされた。
「本当に、死んじゃったんだね……」
息がつまり、涙で視界がにじんだ。
ふと、ササちゃんのことを思い出した。今彼女はどうしているだろうか。
彼女は少し離れたところで屈んでいた。
「ササちゃん、なにしてるの?」
「ヤグチさんがいってた物をあつめてるの……」
彼女は雑草を引き抜いて集めているようだった。
それはヤグチさんが私にしておくように言ったことだけれど、意味がわからなくて、とてもする気になれなかった。何かの葉っぱと植物のツルを集めて、それを何に使うのか、まったくわからなかった。
「ヤグチさんは、それでなにをするつもりなの?」
「マカルガエシ」
「まかるがえし? なにそれ?」
耳慣れない言葉に私は聞き返した。
「死んだ人を生き返らせるの」
ササちゃんもヤグチさんの言ってたことを信じているようだった。
「そんなこと、できるわけない」
ようやく私は目の前の現実をみとめ、冷静さを取り戻すことができて、そう口にすることができた。相手がササちゃんだからかもしれないけれど。
ササちゃんは私の方を見向きもせず、
「ナムちゃんは、わたしが助ける……わたしが助けるの……」
そうひとりごとを言いながら、雑草を集め続けていた。
* * *
北の山裾の、シシガキの森にきたのは朝の八時ぐらいだった。日が空の上にのぼっていて、森にきてから三時間ぐらいが経ったかもしれない。
ようやくヤグチさんとピコちゃん、セリちゃんが戻ってきた。そのヤグチさんの手には、この場につりあわない、おもちゃのステッキがあった。アニメで少女が変身するのに使っていたものだったと思う。ほかにも三人を呼ぶようなことを言っていたけれど、結局彼女たちだけだった。
三人はそれぞれリュックサックを背負っていて、重たそうにおろして、岩の近くに置く。
「これ……」
ササちゃんが手にいっぱい集めた雑草をヤグチさんに見せる。
「けっこう集めたな」
ヤグチさんがそう言って、リュックサックの中から短い棒とすり鉢を取り出し、ササちゃんにわたす。
「葉っぱだけすりつぶしておいて」
「わかった……」
次にヤグチさんはナムちゃんを見る。
「とりあえずナムちぃの服を脱がそう」
そう言ってヤグチさんがナムちゃんの服を脱がそうとする。
ナムちゃんが死んでから、もう三時間ほど経っている。彼女の体はかたくなっていて、関節を曲げ伸ばすことができなくなっていた。
ヤグチさんがリュックサックの中からカッターを取り出し、ナムちゃんのシャツを切り裂いて裸にしていく。
それに私は、あまりのことに気が遠くなりそうだった。
死んでいるからといって、どうしてこんなひどいことができるのだろうか。
いつもはヤグチさんが悪さをすると、ピコちゃんやセリちゃんが注意するのに、今彼女がすることを責めたり怒る様子はなかった。
「セリ、脱がすの手伝って」
「うん」
それどころかセリちゃんはヤグチさんを手伝って、ナムちゃんのサンダルや下を脱がす。
ピコちゃんはもってきたリュックサックから、水の入った大きなペットボトルと牛乳パックを取り出していた。
そのうちにナムちゃんが裸にされる。彼女の細い体には肋が浮いていて、服で見えなかった肌には青や紫色のアザがあった。
「ピコナ、水ちょうだい」
ヤグチさんはピコちゃんからペットボトルごと受け取り、フタを開けると、水をナムちゃんの体にかける。体を洗おうとしているのかと思ったけれど、次に牛乳をかけていた。かけおわると、濡れた彼女の体が白い膜におおわれているように見えた。
「ササカ、できた?」
「うん」
「ナムちぃの全身にぬっておいて」
ササちゃんがすり潰した葉っぱをナムちゃんの体に塗りつけていく。それをセリちゃんが手伝った。それがおわると、ヤグチさんは集めたツルをナムちゃんに巻きつけていく。途中でそれをピコちゃんと交代して、ヤグチさんは線香のような細い棒を取り出すと、その端にライターで火をつけた。それを振って火を消すと、青みを帯びた白い煙がゆらゆらとのぼり、線香とは違う、甘いような、鼻の奥がちくちくするような辛い香りが広がった。火葬で人が焼かれたあとの匂いに似ている気がした。
ナムちゃんの体はいろいろなものに濡れて、全身に植物のツルが巻きつけられて、邪悪な何かに捧げられる供物のようだった。
マカルガエシというのが何かわからない。ただおぞましく、忌まわしいことが行われているのはわかった。それでも私は彼女たちを見ていることしかできなかった。
* * *
それから彼女たちはリュックサックの中からいろいろなものを取り出す。
セリちゃんは三本のストールと、二つのコンパクトを取り出した。黄色と黒のストライプと、淡い緑色、蛇の鱗を思わせるモザイク柄のものだった。コンパクトは、金色とピンク色で、表面にはレリーフが刻まれ、宝石のようなものがはめこまれていた。
ピコちゃんはお祭りの屋台にありそうな、色や模様の違うゴムボールを四つ。それぞれ握り拳ぐらいの大きさだった。
「どれがどれだっけ?」
ピコちゃんがヤグチさんに聞く。
「それっぽいのでいいんじゃない? どれがイクタマっぽい?」
「青いのかな。なんか地球っぽいし」
「それでいいんじゃない」
ヤグチさんはピコちゃんとセリちゃんのもってきたものに名前をつけていった。
セリちゃんのストールはハチノヒレ、クサグサノヒレ、ヘビノヒレ。コンパクトは金色のものがオキツカガミ、ピンク色のものがヘツカガミ。ピコちゃんのボールはイクタマ、マカルガエシノタマ、タルタマ、チガエシノタマ。そしてヤグチさんがもってきたステッキがヤツカノツルギ。
この状況でなければ、何かのごっこ遊びをしているように思っただろう。彼女たちは真面目に、これが死んだ人を生き返らせることに必要なことだと思っているようだった。
「タネコはこれやって」
不意にヤグチさんが、私に二本のストールを手渡してくる。私は逆らえずそれを受けとった。一つは黄色と黒のストライプのもので、ハチノヒレと呼んでいた。もう一つは淡い緑色のもので、クサグサノヒレと。
セリちゃんはそれぞれの手にコンパクトをもち、開くとフタの裏が鏡になっていた。
ピコちゃんはステッキとゴムボール。ヤグチさんはそれぞれの手にゴムボールをもつ。そしてササちゃんは最後のゴムボールと、モザイク柄のストールをもたされた。
「ナムちぃを囲んだら、それぞれもったものをナムちぃに向けて、わたしの動きにあわせて腕を揺らして」
「わかった」
ピコちゃんたちがナムちゃんを囲むように立つ。私はわけがわからないまま、彼女たちの様子を見ながら従った。
「それじゃ、はじめるから」
そう言ってヤグチさんが手にもったゴムボールをナムちゃんに向けてかざす。それに三人も続いた。私も同じようにする。
「ひ、ふ、み、よ、いつ、む、なな、や、ここ、とお」
ヤグチさんが何かを唱え始めた。
「ふるべ、ゆらゆら、ゆらゆらと、ふるべ」
その呪文にあわせて、彼女が手にもったゴムボールを揺らすように振る。ほかの三人も同じようにしていたので、私もそれを真似した
「ふるべ、ゆらゆら、ゆらゆらと──」
ヤグチさんが繰り返し唱えながら、手にもったものを振り続ける。私たちも同じように続けた。
ヤグチさんはこれを、ナムちゃんを生き返らせるために行っているようだけれど──私は少しも信じていなかった。ナムちゃんに生き返ってほしいと思うけれど、こんなことは無駄だと思っていた。
それでもヤグチさんがこんなことをするのは、彼女がこの現実を受け入れることができないからかもしれない。
ピコちゃんやセリちゃんだって、ナムちゃんが死んだことに動揺して、何も考えられなくてヤグチさんに従っているのだろう。
そう思って納得しようとしても、彼女たちの得体の知れない不気味さと、違和感は拭えなかった。
十回ほど繰り返したあと、ヤグチさんが唱えるのをやめ、手をおろす。ピコちゃんやセリちゃんもおろすのを見て、私も同じようにやめた。
それから私たちはナムちゃんを見守った。儀式がおわったのだから、ナムちゃんが生き返るはずだった。
わかっていたことだけれど、そんなことでナムちゃんが生き返るわけがなかった。彼女は変わらず死んだままだった。
夏の日差しがじりじりと首の後ろを焼く。セミの声が何かをせき立てるように聞こえた。
「ああああああああっ!」
突然ササちゃんが悲鳴をあげてうずくまる。私は驚いて彼女を見た。うずくまり、顔をおおって、彼女は悲鳴をあげ続けていた。
彼女の身に何か異変が起きたのではないかと心配になったけれど、ヤグチさんたちは無表情に彼女を見ているだけだった。
「これを今日から二十七日間、毎日続ける」
そうヤグチさんが言った。
私は、こんなことで死んだ人が生き返るとは思えないし、それをあと二十六回することに意味があるとは思えなかった。
ただピコちゃんもセリちゃんも何も言わなかった。ササちゃんはわからないけれど、二人がヤグチさんの言っていることを信じているように思えて怖かった。
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