ポップンロール

はやしまさひろ

文字の大きさ
6 / 34

6

しおりを挟む
 ケンジはチームのレギュラーだった。以前の監督時代はな。それが監督交代と同時にベンチ入りすらできなくなったんだよ。俺は巻き込まれなかったが、ケイコはベンチから外されたよ。新監督はケイコがケンジを好きだって勘違いしていたんだ。それを理由にそんな対応をした真意は意味不明だけどね。
 俺達五人に、恋愛感情なんてなかった。兄弟姉妹で恋に落ちないのと一緒だよ。新監督は確かに、ケンジの両親が嫌うに値する人間だったってことだ。
 さすがにケンジは怒りを爆発させたよ。ケイコだけでなく、俺たち四人を誘ってチームを去ることにした。しかし、ケンジは決して泣き寝入りなんてしない。五人で新しいチームを作ろうとしたんだ。なんともまぁ、ケンジらしい対応だよ。
 ケンジは父親に相談をし、協力を求めたが、それは無理だと言われた。面倒ごとはごめんだそうだ。やりたいなら勝手にすればいいとも言われたようだ。だからケンジは、勝手にすると決めたんだ。
 そんなケンジに協力する大人が一人いた。俺の父親だと言えたら嬉しいんだが、残念ながらそうじゃなかった。最終的には俺の父親も、ケンジの父親だって手伝ってはくれたんだが、その初動に協力してくれたのはヨシオの父親だけだったんだ。
 俺たちの町に、野球チームは一つしかなかった。隣町に行けばあったんだが、よその人間の力を借りたくはなかったんだ。ケンジの目的は、野球を続けることじゃなく、新監督をやっつけることにあったんだよ。
 しかし野球は五人ではちょっと厳しんだ。九人でやるスポーツだからな。後の四人仲間を探さなくちゃならなかった。
 意地が悪い俺は、新監督率いるチームから何人かを引き抜こうと提案したが、ケンジがそれを却下をした。それじゃあ意味がないんだとさ。
 それで結局、同じ学校の連中に声をかけることにした。それしか方法がなかったんだよ。他の小学校にも知り合いはいたが、練習時間を考えると、近場を誘うのが一番だったんだ。
 悔しいが、新監督率いるチームは強かった。俺達五人がいてもいなくても、全国大会に出場できるほどの強さだったんだ。俺達の一つ後輩だけど、今年の甲子園で大活躍した奴もチームにいたんだ。そいつは今からプロのスカウトに目をつけられているって噂だよ。
 同級生に目星い奴が二人いた。陸上をやっている奴と、サッカーをやっている奴だ。運動神経がよく、遊びでの野球にはよく参加をしている。理由を話すと、喜んで参加すると言ってくれた。
 後の二人を探すのが一苦労だった。運動が得意でなくても構わないと、とりあえずは男女の区別なく全員に声をかけた。しかし、誰一人として快い返事はくれなかった。
 私じゃダメですか? そう声をかけてくれたのは、一つ下の女子だった。俺達が声をかけていたのは同級生だけだったから、まさか年下から声をかけられるとは想像もしていなかった。
 別にいいけど、野球やったことある? 俺がそう言うと、彼女は首を横に振った。
 けど・・・・ 友達で一人上手な子を知ってるよ。女の子なんだけど。
 これでようやく九人が揃ったってわけだ。男子五人に女子が四人。なかなか珍しいチームだよな。バランスが取れていると俺は思うよ。今の時代にはよく合っている。
 しかし当時は、大いに笑われたよ。オカマチームだとか、女たらしだとかね。けれど俺達は、少しも気にしなかった。そういうことを言うのは、弱い奴らって相場が決まっている。俺たちのチームは、練習試合では負けなしだったんだからな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...