ポップンロール

はやしまさひろ

文字の大きさ
20 / 34

20

しおりを挟む
 高校受験になんて、正直興味がなかった。俺は勉強なんて好きじゃないし、大学に行きたいとも考えていない。かといって、中卒で働こうとも思ってはいなかった。
 ケンジと一緒の高校なら、行ってもいいんだけどな。俺がそう言うと、だったら決まりだなとケンジは言った。そしてその日の放課後から、秘密の勉強会が始まったんだ。
 当初は本当に秘密だった。俺とケンジで部活後にケンジの家で勉強をするんだ。受験の半年前だったけれど、ケンジはまだまだ余裕だと言っていたよ。
 俺が目指した高校は、その学区では一番頭のいい学校だった。当然だが、俺がそこを目指したわけじゃない。ケンジがそこに行くと決めていたから、そうしたってだけだ。
 ケンジの勉強法は、単純だった。教科書を読んで、考える。それだけなんだ。覚えるってことを意識した勉強はしない。どうしてこうなるのか? どうしたらこうなるのか? それを考えるんだ。分からなくて苦しい気持ちになることもあったけれど、なにかを考えるってことは、とても楽しかった。
 俺はすぐに、結果を出した。テストで始めて百点を取ったんだ。そんな俺の異変に、カナエが一番驚いていたな。カナエはケンジとは違う本当の天才だったからな。勉強が苦手な俺を不憫に思ったのか、何度か勉強を教えてくれたことがあったんだ。けれど結果は出なかった。
 カナエは自分が頭がいいってことを理解していない。自分ができることを、他人ができないことに不思議がるんだ。ここがこうだからこうなるのよ。分かるでしょ? よく言うセリフだった。
 ケンジは違う。あいつはただ単純に頭がいいっていうわけではなく、どうすれば答えに辿り着くかを考えていて、その説明が上手だった。自分に理解できることを、当然のように他人が理解できているとは考えていなかった。もちろん、その逆もある。他人が理解できていても、ケンジには理解できないことがいくらでもある。ケンジはそんなとき、少しでも理解をしようと考える。勉強だけじゃなく、その他のことに対しても同様に。
 俺が志望校を口にすると、みんなが驚いた。けれど、その理由を聞くと納得する。だったら私もそうすると、ケイコが言い、私の志望校はもともとそこしかないのよとカナエが言った。ヨシオは、僕も勉強をすれば受かるかな? と、ケンジに向かって言っていたよ。ケンジは即答した。タケシより頭がいいんだから、問題ないってね。
 こうして俺たちは、五人揃ってこの高校に入学したってわけだ。なかなかにいい高校だよな。元々は女子校だったらしく、女子率が高いのが最大の弱点だよ。俺はあまり、甲高い声が好きじゃないんだ。ちょっと男っぽいハスキーな声が好みなんだ。ユウキのようにね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

光のもとで2

葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、 新たな気持ちで新学期を迎える。 好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。 少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。 それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。 この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。 何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい―― (10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

処理中です...