ポップンロール

はやしまさひろ

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 とにかく来てみろよ。タケシならきっと俺の気持ちが分かるって。
 ケンジが俺の肩に手を回す。ケンジが楽しそうにしていると、俺までもが楽しくなってくる。まぁ、ケンジは言い出すと他人の意見なんて聞かないし、ケンジの誘いで間違いはこれまでには一度もない。正直俺には、いい予感しかしていなかった。けれど俺は素直じゃないんだ。口ではケンジに喰ってかかる。
 バンドをしたいならさ、あの長髪でも誘えばいいだろ? 俺には音楽なんて向いてないだろ?
 正直俺は、音楽になんて興味がなかった。小中の授業でも、合唱は口パクで通していたしな。ピアニカやリコーダーだって、まともに吹いた記憶はない。今では不思議だけど、音楽は女子のものだって本気で信じていた。合唱にしても楽器の演奏にしても、上手なのは女子ばかりで、真剣なのも女子だけだった。そんな中に入って歌ったり演奏したりするのが、恥ずかしいことだと感じていたんだよ。俺はバカで、幼かったってことだ。
 タケシはバンドマン向きだと思うけどな。はっきり言ってさ、うちの高校の軽音部はダメだな。ヨシオは入部しなくてよかったと思うよ。あれはただのお遊びだよ。これから本物を見せてやるよ。
 よぉケンジ! これから聞き屋の所に行くんだろ? 俺も連れて行ってくれよ。
 校門の前に、長髪男が立っていた。俺はあからさまに嫌な顔をしたよ。嫌いじゃないが、一緒には帰りたくない。あいつといると、俺までもがつまらない人間なんじゃないかって感じるんだ。
 悪いんだけどさ、今度紹介してやるよ。今日はちょっとさ、そんな暇ないんだよね。
 ケンジは無意識に嫌味なことを言うんだが、長髪男はそんな嫌味にまるで気づいていなかった。そいつは残念だな。なんて言いながら校内に引き返して行った。
 面白い奴だよな。俺がそう言うと、ケンジは、まぁ、あれで悪い奴ではないんだよ。そう言って苦笑いを浮かべていた。
 さぁ、本物を拝みに行くか。
 そう言って連れて行かれたのが、横浜駅西口の地下鉄へと降りて行く階段の裏側だった。相鉄線側の大きなデパートの側だよ。箱型の建物で、その裏側にはいつも誰かがしゃがんでいた。人通りが多くて、待ち合わせにも多く利用されている。まさか俺が、あんな場所に立ち止まり、腰を下ろすとは想像もしていなかった。なんていうか、校庭で行われる全体朝礼のときに、朝礼台の上に腰を下ろして生徒たちを眺めているような気分だよ。もちろん、朝礼台の上では校長が演説を垂れていて、横に並ぶ先生たちの姿もよく見える。
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