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【11】占領後の仕事
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占領から翌日、街の管理について様々なことを決めるために、クルースとラウィズと共に会議室に集まっていた時のことだった。3人で話し合いをしている最中、会議室の扉が開かれたかと思うと、アシスが鎧をまとった騎士を抱えて部屋に入ってきた。
「侵入者です」
そう言うと、アシスは抱えていた人物を床にポイっと投げた。
床に落とされた騎士は小さくうめき声を上げたが、手を後ろで縛られておりながらも何とか立ち上がり、空阿の方を向くと、
「貴様が侵略者だな!!私と勝負しろ!!」
「「……」」
あまりに急な出来事に誰も反応できないでいると、
「え、いや、その……」
騎士はまさか反応が返ってこないとは思っていなかったのかオロオロとしだした。
「……あー、アシスこの人は?」
「先ほどこの領主館に侵入してきたようで、捕まえておきました」
「……なるほど」
いやいや、それだけじゃあ、全然分からない……。
「……とりあえず、質問してみては?」
転移前にゲームやアニメで見た様々な騎士を思い浮かべていた空阿であったが、ラウィズの言葉で意識を取り戻した。
「あ、あぁ、そうだな」
空阿は騎士の方を向いた。
「えっと……。まず、あなたの名前は……」
「貴様なんぞに教えるものか!!」
「……」
食い気味の拒絶に面喰いながらも、咳ばらいをして場を整えた。
「……なるほど、分かりました」
空阿は悪魔を召喚すると鎧の人物を拘束して頭の甲冑を脱がした。
「やっぱり女か」
現れたのは、金髪でキリっとした目で、整った顔の女性であった。
声的に女だと思ったけど、めっちゃ美人だな……。
「くっ!!何をするつもりだ……!!」
美人だけど……。こんなゲームに出てきそうな騎士って本当にいるんだなぁ……。
騎士の美しさに思わず見とれていたが、
「空阿様。この者を始末しますか?」
シアスの言葉で我に返った。
「ん?あぁ、いや、そこまでしなくても大丈夫だよ」
「では、どうなさいますか?」
「うーん、今はやることもあるし、その悪魔を貸すから地下牢に入れておいて」
「かしこまりました」
アシスは悪魔達に命令して女騎士を部屋から出そうとすると、離せ!!と騒いで暴れたが、悪魔の力にはかなわずにズルズルと引きずられて部屋から出された。
「よし、それじゃあ、やることもいっぱいあるし、ちゃっちゃと決めていこうか」
「は、はい」
その後は、街の税金に関すること、領土内のルール所謂法律を決めていった。元々の税金と法律があったとはいえ、崩壊寸前の街で使われていたものをそのまま使う訳にもいかず、ほとんど0からのスタートとなり、気が付くと日も暮れてきて夕食時になった。
「んーっっ……。ふぅ」
いやー、疲れた疲れた。前領主時代のやつを参考にできなかったから、こんなに時間がかかるとはな……。
「2人ともお疲れ様」
「お疲れ様です。領主様」
会議も終わりを迎えようとしたところで、クルースが恐る恐る手を挙げた。
「あのー……」
「ん?どうした、クルース」
「まだ残ってる仕事とかってありますか?」
「え?」
「いえ、まだ残ってる仕事がありましたら、是非ともやらせていただきたいのですが……」
まさかの発言に茫然とした空阿であったが、
「ダメです。時間外労働は俺の許可がない限り認めません」
昨日も思ったけど、クルースって本当に仕事してるのが好きなんだな……。気を付けないと倒れるまで働きそうだな……。
それでもクルースは引き下がらず、
「でしたら、是非許可を……」
「ダメです!!クルースは仕事があればあるだけ倒れるまでやるでしょ」
「……そのようなことは」
「おい、なんで顔を背ける」
……監視を付けないといけないかもな。
「とにかく、まだ仕事は沢山あるけど、これ以上の仕事は許しません」
「……分かりました」
クルースは不満そうではあったものの、仕方ないかと承諾した。
「まだまだ、やらないといけないことはあるから、クルースに倒れられたら困るんだ。分かってくれ」
「……分かりました。お役に立てるように頑張らせていただきます」
「うん。ラウィズもよろしく頼む」
「はい。もちろんです」
とはいっても、いつまでもこの2人だけに任せるわけにもいかないからな。人材も募集しないといけないよなぁ。
「それじゃあ、今日はここまで、また明日もよろしくね」
「「はい」」
そう言うと、2人とも部屋を出ていった。
「……」
2人が出ていったあと、空阿は椅子に座ると頭を抱えた。
「何なんだこの街は……」
空阿は先程の会議で使われていた資料を再び見た。
「こんな赤字でよく街を存続できたな……。いや、崩壊ギリギリのところで俺が占領したって感じか……」
クルスハのことを信じたけど、本当に大丈夫か……?
街の惨状に頭を悩ませていた空阿であったが、
「……気分を変えよう」
空阿はステータスボードを出した。
〇---------------------------------------------------------〇
名前:苫芝 空阿
Lv:51
[ステータス]
HP:4500 MP:2200 力:132 身の守り:129
素早さ:93 魔法攻撃:106 魔法防御:101 運:10
[スキル]
・悪魔召喚
・陞滂スゥ闖エ?ソ陷ソ?ャ陜
〇---------------------------------------------------------〇
「うーん……」
ステータスボードを眺めていると、カブルが話しかけてきた。
(ステータスボードなんか出して何してんだ?)
「いや、ステータスを見ておこうと思ってね」
(どうしてだ?)
「まぁ、気分転換と今の俺の状況を把握しとくためだな。召喚にしても上級悪魔を何体も出しておけないし、もっと強くならないといけないなと思って」
(……MPを上げる方法を教えてやろうか?)
「そんな方法があるのか!?」
空阿は思わず椅子を立ち上がった。
(あぁ、レベルは上がらないけどな)
「いや、MPを上げたいと思ってたんだ!!これ以上ない提案だ!!」
(はは、喜んでもらえたようでよかったよ)
「で、肝心の方法は?」
(まずは、本の表紙に魔力を込めてみな)
カブルに言われた通りに悪魔の書を出して、表紙に魔力を込めていく。
こ、これは……すごい勢いでMPが減っていく……。
「す、すごい勢いでMPが減ってるけど、どこまで込めればいいんだ?」
(MPが無くなっても込め続けろ)
「……それって、大丈夫なのか……?」
(まぁ、死にはしないから安心しな)
死にはしないってことは、死ぬ手前まではあるってことだろ……。
「……強くなるためには、やるしかないか」
空阿は不安を抱きつつもステータスボードを確認しつつ、魔力を込め続けてMPが0になった。
MPが0になったけど、いったい何が……。
「!!」
な、なんだこれ……。し、視界がぼやけ……。
急に視界が狭くなっていき、もう少しで意識を失うといったところで、パチン。脳内で指を鳴らした音が鳴り響いて、反射的に魔力を込めるのを止めた。
「ハァ、ハァ……。な、なんだったんだ今の……うっ。」
魔力を込めるのを止めたことによって、ぼやけていた視界が徐々に戻ってくるが、急な吐き気に襲われてその場で吐いてしまった。
「うぅ……」
(大丈夫か?)
「ハァハァ……大丈夫なわけあるか。頭も痛いし、どうなってるんだ」
激しい頭痛と吐き気に襲われた空阿は膝をついて、肩で息をしながらなんとか答えた。
(MPを使い切っても、使い続けるとそうなるんだよ)
「……けど、魔力は送り込んでいた感覚はあったぞ?」
(それは、酸素を削ってるからな)
「酸素を?」
(あぁ、空気中には酸素の他に魔素が含まれているんだ)
「魔素……?」
(そう、魔素だ。普段は呼吸によって体内に取り込まれる魔素は微々たるものだが、今みたいに体の中の魔力が少なくなると、魔力を回復しようと身体はいつも以上に魔力を取り込もうとする。するとどうなるか、身体に取り込む酸素が少なくなるんだ)
「酸素が?どうしてだ?」
(普段は酸素の運搬に使われている機能の大部分が魔素の運搬に使われることによって、身体に取り込まれる酸素が相対的に少なくなる。だから、お前の体調が悪くなったのも、言わば酸素不足だな)
「酸素不足……」
なるほど、どうりで意識が遠のいたわけだ……。
「こんなことして大丈夫なのか?」
(まぁ、普通の奴は大丈夫じゃねぇな)
「大丈夫じゃないのかよ……」
(普通の奴はな。安心しろ、お前には俺がついてるだろ?)
「……逆に安心できないんだが?」
(はは、悲しいこと言うなよ。死ぬようなことにはならねぇから安心しな)
……まぁ、何回も助けてもらってるしな。
空阿はカブルの言葉に不信感を抱きつつも、信じてみることにした。
(あー、でも。やるのは、1日1回だけにしろよ?さすがに身体に悪いからな)
「1回だけか……」
確かにこんなのを1日に何回もやってたらまともに生活できない。
「分かった。1日1回寝る前にするから、その時は頼んだぞ」
(はいよ)
うぅ、まだ頭がガンガンする……。今日はもう寝よう……。
空阿は立ち上がり、会議室を後にすると自分の部屋に戻って眠りについた。
「侵入者です」
そう言うと、アシスは抱えていた人物を床にポイっと投げた。
床に落とされた騎士は小さくうめき声を上げたが、手を後ろで縛られておりながらも何とか立ち上がり、空阿の方を向くと、
「貴様が侵略者だな!!私と勝負しろ!!」
「「……」」
あまりに急な出来事に誰も反応できないでいると、
「え、いや、その……」
騎士はまさか反応が返ってこないとは思っていなかったのかオロオロとしだした。
「……あー、アシスこの人は?」
「先ほどこの領主館に侵入してきたようで、捕まえておきました」
「……なるほど」
いやいや、それだけじゃあ、全然分からない……。
「……とりあえず、質問してみては?」
転移前にゲームやアニメで見た様々な騎士を思い浮かべていた空阿であったが、ラウィズの言葉で意識を取り戻した。
「あ、あぁ、そうだな」
空阿は騎士の方を向いた。
「えっと……。まず、あなたの名前は……」
「貴様なんぞに教えるものか!!」
「……」
食い気味の拒絶に面喰いながらも、咳ばらいをして場を整えた。
「……なるほど、分かりました」
空阿は悪魔を召喚すると鎧の人物を拘束して頭の甲冑を脱がした。
「やっぱり女か」
現れたのは、金髪でキリっとした目で、整った顔の女性であった。
声的に女だと思ったけど、めっちゃ美人だな……。
「くっ!!何をするつもりだ……!!」
美人だけど……。こんなゲームに出てきそうな騎士って本当にいるんだなぁ……。
騎士の美しさに思わず見とれていたが、
「空阿様。この者を始末しますか?」
シアスの言葉で我に返った。
「ん?あぁ、いや、そこまでしなくても大丈夫だよ」
「では、どうなさいますか?」
「うーん、今はやることもあるし、その悪魔を貸すから地下牢に入れておいて」
「かしこまりました」
アシスは悪魔達に命令して女騎士を部屋から出そうとすると、離せ!!と騒いで暴れたが、悪魔の力にはかなわずにズルズルと引きずられて部屋から出された。
「よし、それじゃあ、やることもいっぱいあるし、ちゃっちゃと決めていこうか」
「は、はい」
その後は、街の税金に関すること、領土内のルール所謂法律を決めていった。元々の税金と法律があったとはいえ、崩壊寸前の街で使われていたものをそのまま使う訳にもいかず、ほとんど0からのスタートとなり、気が付くと日も暮れてきて夕食時になった。
「んーっっ……。ふぅ」
いやー、疲れた疲れた。前領主時代のやつを参考にできなかったから、こんなに時間がかかるとはな……。
「2人ともお疲れ様」
「お疲れ様です。領主様」
会議も終わりを迎えようとしたところで、クルースが恐る恐る手を挙げた。
「あのー……」
「ん?どうした、クルース」
「まだ残ってる仕事とかってありますか?」
「え?」
「いえ、まだ残ってる仕事がありましたら、是非ともやらせていただきたいのですが……」
まさかの発言に茫然とした空阿であったが、
「ダメです。時間外労働は俺の許可がない限り認めません」
昨日も思ったけど、クルースって本当に仕事してるのが好きなんだな……。気を付けないと倒れるまで働きそうだな……。
それでもクルースは引き下がらず、
「でしたら、是非許可を……」
「ダメです!!クルースは仕事があればあるだけ倒れるまでやるでしょ」
「……そのようなことは」
「おい、なんで顔を背ける」
……監視を付けないといけないかもな。
「とにかく、まだ仕事は沢山あるけど、これ以上の仕事は許しません」
「……分かりました」
クルースは不満そうではあったものの、仕方ないかと承諾した。
「まだまだ、やらないといけないことはあるから、クルースに倒れられたら困るんだ。分かってくれ」
「……分かりました。お役に立てるように頑張らせていただきます」
「うん。ラウィズもよろしく頼む」
「はい。もちろんです」
とはいっても、いつまでもこの2人だけに任せるわけにもいかないからな。人材も募集しないといけないよなぁ。
「それじゃあ、今日はここまで、また明日もよろしくね」
「「はい」」
そう言うと、2人とも部屋を出ていった。
「……」
2人が出ていったあと、空阿は椅子に座ると頭を抱えた。
「何なんだこの街は……」
空阿は先程の会議で使われていた資料を再び見た。
「こんな赤字でよく街を存続できたな……。いや、崩壊ギリギリのところで俺が占領したって感じか……」
クルスハのことを信じたけど、本当に大丈夫か……?
街の惨状に頭を悩ませていた空阿であったが、
「……気分を変えよう」
空阿はステータスボードを出した。
〇---------------------------------------------------------〇
名前:苫芝 空阿
Lv:51
[ステータス]
HP:4500 MP:2200 力:132 身の守り:129
素早さ:93 魔法攻撃:106 魔法防御:101 運:10
[スキル]
・悪魔召喚
・陞滂スゥ闖エ?ソ陷ソ?ャ陜
〇---------------------------------------------------------〇
「うーん……」
ステータスボードを眺めていると、カブルが話しかけてきた。
(ステータスボードなんか出して何してんだ?)
「いや、ステータスを見ておこうと思ってね」
(どうしてだ?)
「まぁ、気分転換と今の俺の状況を把握しとくためだな。召喚にしても上級悪魔を何体も出しておけないし、もっと強くならないといけないなと思って」
(……MPを上げる方法を教えてやろうか?)
「そんな方法があるのか!?」
空阿は思わず椅子を立ち上がった。
(あぁ、レベルは上がらないけどな)
「いや、MPを上げたいと思ってたんだ!!これ以上ない提案だ!!」
(はは、喜んでもらえたようでよかったよ)
「で、肝心の方法は?」
(まずは、本の表紙に魔力を込めてみな)
カブルに言われた通りに悪魔の書を出して、表紙に魔力を込めていく。
こ、これは……すごい勢いでMPが減っていく……。
「す、すごい勢いでMPが減ってるけど、どこまで込めればいいんだ?」
(MPが無くなっても込め続けろ)
「……それって、大丈夫なのか……?」
(まぁ、死にはしないから安心しな)
死にはしないってことは、死ぬ手前まではあるってことだろ……。
「……強くなるためには、やるしかないか」
空阿は不安を抱きつつもステータスボードを確認しつつ、魔力を込め続けてMPが0になった。
MPが0になったけど、いったい何が……。
「!!」
な、なんだこれ……。し、視界がぼやけ……。
急に視界が狭くなっていき、もう少しで意識を失うといったところで、パチン。脳内で指を鳴らした音が鳴り響いて、反射的に魔力を込めるのを止めた。
「ハァ、ハァ……。な、なんだったんだ今の……うっ。」
魔力を込めるのを止めたことによって、ぼやけていた視界が徐々に戻ってくるが、急な吐き気に襲われてその場で吐いてしまった。
「うぅ……」
(大丈夫か?)
「ハァハァ……大丈夫なわけあるか。頭も痛いし、どうなってるんだ」
激しい頭痛と吐き気に襲われた空阿は膝をついて、肩で息をしながらなんとか答えた。
(MPを使い切っても、使い続けるとそうなるんだよ)
「……けど、魔力は送り込んでいた感覚はあったぞ?」
(それは、酸素を削ってるからな)
「酸素を?」
(あぁ、空気中には酸素の他に魔素が含まれているんだ)
「魔素……?」
(そう、魔素だ。普段は呼吸によって体内に取り込まれる魔素は微々たるものだが、今みたいに体の中の魔力が少なくなると、魔力を回復しようと身体はいつも以上に魔力を取り込もうとする。するとどうなるか、身体に取り込む酸素が少なくなるんだ)
「酸素が?どうしてだ?」
(普段は酸素の運搬に使われている機能の大部分が魔素の運搬に使われることによって、身体に取り込まれる酸素が相対的に少なくなる。だから、お前の体調が悪くなったのも、言わば酸素不足だな)
「酸素不足……」
なるほど、どうりで意識が遠のいたわけだ……。
「こんなことして大丈夫なのか?」
(まぁ、普通の奴は大丈夫じゃねぇな)
「大丈夫じゃないのかよ……」
(普通の奴はな。安心しろ、お前には俺がついてるだろ?)
「……逆に安心できないんだが?」
(はは、悲しいこと言うなよ。死ぬようなことにはならねぇから安心しな)
……まぁ、何回も助けてもらってるしな。
空阿はカブルの言葉に不信感を抱きつつも、信じてみることにした。
(あー、でも。やるのは、1日1回だけにしろよ?さすがに身体に悪いからな)
「1回だけか……」
確かにこんなのを1日に何回もやってたらまともに生活できない。
「分かった。1日1回寝る前にするから、その時は頼んだぞ」
(はいよ)
うぅ、まだ頭がガンガンする……。今日はもう寝よう……。
空阿は立ち上がり、会議室を後にすると自分の部屋に戻って眠りについた。
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