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【14】魔術師ギルド

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 クエストを終えて街に帰ってくると、日も傾いており時計の針は17時を少し過ぎた辺りを指していた。

「はい。確かに受け取りました。ヒール草かどうかを確認しますので、少々お待ちください」

 ヒール草と討伐の証であるゴブリンの耳を受付嬢に渡すとギルドの奥に引っ込んで行った。

「んー、なるほどなぁ……」

 手持無沙汰になってしまった俺は、椅子に座りながらぼーっとギルド内を眺める。

 冒険者ってのは、これが普通なのかなぁ……。やっぱり、軍隊にはかなわないってところか……。

 特にすることも無いためギルド内にいる冒険者たちを眺めていたのだが、はっきり言ってレベルや能力、スキルの数などは王国軍の方が上だった。

 ……いやでも、レベルやスキルが全てって訳ではないか。

 メレンの戦いを思い返して、考えを改める。メレンのレベルや能力は王国の騎士とは比べ物にならないほど低い。それに、スキルすら覚えていないにも関わらず並みの兵士ほどには動けていた。

「……まぁ、それが実力通りの力なのかは分からないけど」

 そんなことをぼーっと考えていると、名前が呼ばれたため受付に向かった。

「お待たせしましたラベオン様。今回集めていただいた82枚すべてヒール草だと確認できました。それと、ゴブリン1体の討伐を合わせた報酬、6,040ノラールです。お受け取りください」

 報酬を受け取り、バッグの中に入れてその場を立ち去ろうとしたところで受付嬢に話しかけられた。

「それにしてもすごいですね。Eランク冒険者でこんなにヒール草を集められる人なんて中々いませんよ」

 冒険者は全てEランクから始まりD、Cと貢献度に応じて上がっていくのだとアリシアが言っていた。当の本人のランクは教えてもらえなかったわけなのだが。

「へぇ、そうなんですね、ありがとうございます。でも、アリシ……、仲間の1人が元々冒険者だったので、それが助けになりました」

「あー、そういうことだったんですね。それにしてもすごいと思いますよ!!」

 やけに褒めてくる受付嬢にお礼を言いつつ、ふとメレンのことを思い出した。冒険者ギルドの職員であれば何か知っているかもしれないと考え、尋ねてみることにした。

「あのー、催眠状態になる魔法かスキルについて知っていることを教えて欲しいのですが……。何かありますかね?」

「催眠ですか? そうですねぇ、魔法やスキルについては詳しくないのであれですけど、そういうことでしたら魔術師ギルドに行けば何か聞けるかもしれませんよ」

「魔術師ギルド……」

「はい。状態を変化させるスキルよりも魔法の方が圧倒的に多いので、まずは魔術師ギルドに行ってみることをお勧めします」

「なるほど、分かりました。教えていただきありがとうございます」

「いえいえ、冒険者のサポートをするのが冒険者ギルド職員の仕事ですから!!」

 その後魔術師ギルドまでの道を教えてもらい、受付嬢に再びお礼を伝えた後、冒険者ギルド出て魔術師ギルドに向かうことにした。

「魔術師ギルドかぁ……」

 王国にも魔術師ギルドがあったのを思い出した。実際に入ったことは無く目の前を通り過ぎただけだが、魔術師ギルドとでかでかと書かれた看板が目を引いたのは覚えている。

 興味はあったけど、王城にいたときはなんだかんだで行く機会が無かったなぁ。

 王城にいた頃を懐かしみながらも教えてもらった道を歩いていると、魔術師ギルドと書かれた看板を見つけた。

「これは、マジセルだったけかな。いいもの使ってるんだなぁ」

 魔術師ギルドの建物は魔法をある程度打ち消す効果のあるマジセル鉱石とレンガを混ぜ合わせた、マジセルレンガが使われた壁だった。

 やっぱり、魔術師ギルドだけあって壁にもこだわってるのかもなぁ……。

 マジセル鉱石は産出量はそれほど多くないため、マジセルレンガはかなり高価なモノであり、王城にも使用されているほどである。そんなマジセルレンガを外壁に使えるほど、魔術師ギルドは儲かっているということであろう。

「入っても……、大丈夫だよな?」

 少しの不安を感じつつも、魔術師ギルドの扉を開く。すると、魔術師ギルドの中は冒険者ギルドと違い、どこか静かというか、落ち着いた雰囲気だった。冒険者ギルドが酒場に近い感じであれば、魔術師ギルドはどちらかというと役所に近いものを感じる。

「ちょっとよろしいですか?」

 受付と書かれているところに座っている男性職員に話しかける。すると、その男性は顔をゆっくりと上げて俺の顔をじろりと見てきた。

「……何でしょうか?」

「実は魔法について聞きたいことがありまして。相手を催眠にかける魔法はありますか?」

「催眠ですか……。担当の者を呼んで少々お待ちください」

 そう言って職員はギルドの奥へと歩いて行く。

 また待たないといけないのか……。どうしようかな……。

 時間も時間なためどれくらい待たないといけないんだろうと考えていると、思っていたよりもずっと早く担当者が来た。

「お待たせしました。催眠に関する魔法についてですね。よろしければ、もう少し詳しく教えていただけますか?」

 俺はメレンのことについて説明した。ただ、あまりバレて良いことは無いため、鑑定眼のことについては伏せて、あくまでも憶測だということを強調しておいた。

「なるほど……。確かにお話を聞く限り催眠がかかっている可能性はありますね。……ですが、どうして催眠だと分かったのですか?」

「それは、そのー……。催眠だと確信したわけではないんですが、色々調べてみて催眠がかかっているのではないかと考えたんですよ。それで、冒険者ギルドで相談したら魔術師ギルドを紹介されたんです」

「そうだったんですね」

 ふぅ……。急とはいえ、我ながら上手く誤魔化せたんじゃないかな……。

「催眠をかける魔法はございますが、人間に直接かけてある場合と持ち物に効果が付与してある場合がありまして、調べてみない限り分かりません」

「道具……」

 道具と聞いた瞬間、メレンと出会った時から身に着けていた指輪を思い出した。

 でも、お母さんの形見だと言っていたし、そんな催眠がかけられていることなんてあるのか?

「一応、どちらの場合も解くことはできます。ただ、解くのは明日以降となってしまいますが、どうしますか?」

「明日以降ですか? 今日中は無理なんですかね?」

「まことに申し訳ないのですが、本日の営業は終了しておりまして……。催眠を解くのに時間がかかってしまうため、本日中は無理なんですよ」

 時計をチラリとみると時計の針は18時を少し過ぎたところだった。

「そうですか……。それなら、仕方ありませんね。また明日きますね」

「お待ちしております」

 明日行く予約をして魔術師ギルドを後にした。
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