性に関する幾つかの話

spikered

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第十三話

幽霊(1)

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 俺の住むアパートは曰く付きのアパートだ。
 ひと月ほど前、ここの住人だった女性は、今俺が座っているあたりで彼氏の手によって命を落としたらしい。いわゆる"事故物件"というヤツである。

 ここに住み始めて10日、幽霊だとか心霊現象というものは未だ経験していない。正直ちょっと拍子抜けではある。
折角こんな物件に住んでいるんだから、何か一つくらい話のネタが欲しいもんだ。

そんな事をぼんやり考えていたある日の夜…さてそろそろ寝ようかと思っていると、目の前のテーブルを「コンコン」とノックでもするように叩く音がした。
「なんだ?」テーブルに目をやると、何か倒れたわけでも落ちてきたわけでもない。とりあえずテーブル上のモノを少し整理していると、また「コンコン」と音がした。

 …ひょっとして…「コンコンコン」…間違いなさそうだ。
ドキドキと上がる心拍を感じながら言葉をかける。
「だれ?なに?」
すると何もないはずの空間から若い女性の声がした。
「あの…聞こえますか?」
少し遠慮がちな声である。
「ええ、聞こえますよ。」
「なんかすいません。驚かせちゃったみたいで。」
「いや、それはかまいませんが…あなたはこちらで亡くなった人?」
「あ、はい、そうです。」
「へぇ…じゃあ幽霊ですね?」
「幽霊…まぁそうですね」
「…ですかぁ…」
生まれて初めての心霊現象は、なんとも間抜けな感じで始まった。

 「ところで、何か用があって出てきたんですか?」
「用っていうか…暇だったモノで」
「…はぁ…暇なんすか…」
「えぇ、特にやることもないですし、仕事もしなくていいし…あ、ちょっと姿見せてもいいですか?」
え、姿見られるの?それは願ったり叶ったりだ。どうぞ、と即答する。
どんな風に出てくるのだろうか…いきなりポン!と現れるのか、それともジワジワと壁から這い出すのか…

 そんな事を思っていると、なんとなくフワァ~と現れた。透明~半透明~実体化まで、2秒くらい。一番リアクションしにくい出方だ。
「すいません、改めましてこんばんは。」
「え、あ、どうも。」
…なんだこれ…

 見たところ、背格好は身長160センチ弱、痩せてもいなけりゃ太ってもいない、本当にごく普通の女性。服装も小綺麗というか地味というか…顔は何処かで見たことあるけど具体的に思い出せないくらいの、失礼ながら知り合いに2人3人はいそうな感じ。

「なんかすいません。急に押しかけちゃったみたいで。」
「いえいえ…て言うか、やっぱり何か未練とかあって、この部屋に居着いてるんですか?」
「いや、未練はあるにはあるけど、それほどは。それに居着いてるわけでもなく、割と自由に動いてます。昨日も彼のいる…あ、私を殺した人ですね…その彼のいる拘置所にも行ってきました」
「拘置所…やっぱり恨みつらみを晴らしにですか?」
「いえいえ、今回のは事件というより事故ですし。私が"首絞めて"って頼んだんですから」

 事件の報道は見聞きしたが、それによると感情のもつれで彼氏が彼女を絞殺、っとあったが…自分から絞めさせた?
俺は好奇心が俄然沸き立ち、彼女に聞いた。
「なんで首を絞めさせたの?自殺願望か何かあったの?」
「いや、そう言うのじゃなくて…えっと…引かないで下さいね…」
なんとなく読めたが、コクリと頷き続きを聞いた。
「首を絞めると、アソコも締まりが良くなるって言うじゃないですか。だから試してもらったんです。でもあんまり変わらないから"もっと絞めて"って言ったら…死んじゃいました。」
死んじゃいました…って…しかし彼は調べの中でそれを主張しなかったのだろうか?
「あー、変なところで責任感強いというか、根が真面目というか…昨日行ったのも、それを言いに行ったんですけど、ちょっと声かけたらガタガタ震えて手を合わせてごめんなさいゴメンなさい許して許してナンマンダブナンマンダブって…」
そりゃ自分が文字通り手をかけた相手が化けて出りゃそうなるだろう。
「ところで今日は、何しにここに現れたの?なんか俺を呪い殺そうって感じでもなさそうだし。」
「呪う殺すとか無理ですって。どうもそんな力はないみたいです。あるのは移動がスゥッと飛ぶように出来て、あと人に触る事は出来るみたいです。こんな風に。」
そう言うと彼女は俺の肩に触れた。たしかに感触がある。
「なるほど。じゃあ相手を殺す事も出来るじゃない。」
「そんなことしたら犯罪ですよ」
…刑法は幽霊に適用されるか分からんが、まぁ道徳的な感覚か。
「で、話を戻して…なんで俺の前に現れたの?」
「さっき言った通り、暇だったんで。てか、構って欲しくて出てきちゃいました。なんか引っ越してきてからそっと見てたけど、女っ気なさそうだし、毎日パソコンで動画見てなんかやってるし。」
…ウルセェ…てか見んな。
「で、幽霊ってお腹は減らないし眠くもならないけど、ムラムラするんですよ。わかります?」
わかります?って言われてもなぁ…
「でね、さっきやってみせた通り、触れる事は出来る…正確には触れているように脳というか精神というか心というか、まぁとにかくそんな部分に錯覚を起こさせるような事らしいんですが…それで私とセックスしません?」
へ?幽霊とセックス?
「私みたいなタイプ、嫌いですか?」
そう言うと彼女はさっきのようにふわっと裸になった。これまた色気のない脱ぎ方だが、その身体は思ったより女性的な身体だった。
胸は少し大きいくらいだが、しっかり張っている。全体的にうっすらと脂肪が乗っている感じで抱き心地良さそうだ。

「おっぱい、割と自慢なんですよ。お客さんにも褒められました」
「お客さん?」
「あ、死ぬ前はデリヘルやってましたから」
あ、そうなの…だから脱ぎっぷりいいのね…などと変な感心しつつ、恐る恐る胸に手を伸ばしてみる。なるほど、弾力あって気持ちいい胸だ…ちょっと大きめの乳首もつまみごごちがいい。
しかし…幽霊とセックスして副作用みたいなモンはないのだろうか?それとなく聞いてみると
「ん~、病気とかは多分大丈夫だし、妊娠もしないかと。てか、そもそもが脳内の話なので問題ないと思いますよ?」
そうだよなぁ…うん、そうだ。これは大いなる妄想なのだ。幻であり幻覚とか錯覚の類なのだ。そう自分を言い聞かせると俺は少々乱暴に彼女の唇を奪った。
ううっ…と喘ぎながらも俺の首に手を回してくる彼女。感触は生身の女そのままだ。

 彼女を仰向けに寝かせておっぱいを吸う。これもまた生身そのもの。強いて言えば、味と匂いは全くない。
 乳首を舌で転がすと、小さくウッと反応した。更に転がしたり甘噛みしたりすると、自分の小指を噛み始めた。
 乳首を愛撫しつつ股間に手をやる。ちょっと濃い目の陰毛の下は、柔らかくそして湿り気を帯びていた。
「へぇ…濡れるんだ」彼女はか細い声でウンと小さく頷いた。俺は彼女の股間に顔を埋め、クリトリスを舐め上げた。
「ン、あぁぁ…」彼女は軽くのけ反る。
「ここ、好きなんだ」
「うん…もっと…して…」
俺は執拗にクリトリスを舐め上げつつ、膣に指を入れて刺激する。さっきよりのけ反りが大きくなる彼女。しかし相変わらず味や匂いはない。

「ねぇ、わたしにもちょうだい」そう言うと彼女は上体を起こし、俺のペニスを咥え、美味しそうにしゃぶりあげる。かなり情熱的なフェラチオだ。さすが元デリヘル嬢。おれもつい、くぐもった声を上げてしまう。それを聞いた彼女は、上目遣いで俺の顔を見上げながら、俺の乳首を指で転がしはじめた。
「んはぁ!」思わず声が出るほど気持ちいい。このまま口内に果ててしまうか、とも思ったが、ここはやはり本懐を遂げないと。

 俺は再度彼女を仰向けにして、足首を持って広げた。
「来て」彼女は俺をトロンとした目で見つめる。俺はそのまま彼女にペニスを挿入する。これもまた生身そのままだ。というか、かなり良い。
「すごいね、グニュグニュ気持ちいいよ。」俺はグイグイと腰を深く当て続ける。
彼女はまたのけ反りながら、小指を噛んでいる。

「ねぇ、首絞めて」
え…懲りてないのかよ…
「いや、あんたそれで死んだんだろ?怖いよ」
「大丈夫、もう死なないから」
…まぁそうか…好奇心の方が勝ってしまった俺は、彼女の首に手をかける。
感触はあるから、そのまま締めようとするが…やはり良心の呵責なのか、本能的なのか、一定以上に力が入らない。
「もっと、もっと絞めて!」
彼女は俺の手に自らの手を重ねてギュッと絞め始める。その感触に恐怖を感じた時、彼女の手が緩んだ。
「…そっか…死んじゃってるから死にそうな苦しみとかないのか…」
すっかり意気消沈してしまったペニスを彼女から離した俺と彼女は、座り直して向かい合い、色々としゃべりはじめた。

「でもさ、乳首とかクリとかは感じるんだろ?快感はある、って事だよね。」
「うん、そうだね。あ、ちょっと腕つねってみて」
言われる通りに、彼女の腕をつねった。
「あー、痛くないんだ…そういうことか…」
何かに納得する彼女
「ん?何がそういう事なの?」
「よくわからないけど、痛いとか苦しいとか、何か危機を感じる部分は、多分死んじゃってるから必要ないんだと思います。でも快感はあまり命を左右しないからあるのかも。」
なんだかよくわからん話だが、本人が言ってるんだからその通りなんだろう。
「マイナスな刺激は感じず、プラスの刺激しか感じなくなってるんだと思います、多分。だから生きてるうちに首を絞められる苦しみを快感に転換出来てれば今も気持ちよかったのかも。でもそれやると死んじゃう、ってのはわかりました。」
彼女の地頭が良いのはわかった。

 俺と彼女は服を着直してテーブルを挟んで話を続けた。
「で、これからどうするの?」
「私ですか?特に行くところもないし、彼氏のあんな感じだし、下手に友達とか家族の前に出ても驚かしちゃうだろうし…しばらくいてもいいですか?」
「ん~…食費もかからんし、別に何か特別な事もしなくて良さそうだし…」
「あ、エッチはヤリ放題です。しかも中出しOK!」俺は即決した。

 こうして、幽霊と俺の生活がはじまった

続く
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