外れ天職持ちの冒険者だが、皇女様にスカウトされて人生変わった。

空タ 多々

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<梟の矢>

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「アジト三カ所に、隠れ家やら溜まり場やらが十カ所以上。まだあるかもとか言ってたな……」

 目をつけていた<梟の矢>の構成員をマークし、そこから芋づる式に探り出したそうだ。全貌が洗い出せたかは不明らしいが、アジトには幹部級と覚しき者たちも出入りしているという。構成員は判明しているだけで三十人超。それは男爵に許された戦闘職の保有数五十と大枠では変わらず、野蛮な戦争が行えるだけの戦力である。

「主要拠点や構成員の情報は私の得たものとほぼ一致しています」
「だから問題ないって……?」

 齟齬があることこそ問題で、戦力そのものは考慮に値しない。
 一流とされる熟練度三十以上の戦闘職が複数名いて、天与を所持している可能性もあるというのに。
 アークとしては呆れるしかない感覚だ。

「潰すのは拠点三カ所。人員を七割ほど削れれば組織としては終わるでしょう――……あの家ですね」

 冒険者ギルド南支部から五分の疾走と一分ほどの徒歩で、二人は一件目の目的地に辿り着いた。

「……なんか、ふつーの家だな。いかにもって雰囲気があっても困るけどよ……」

 そこは市街区の中でも比較的裕福な平民の住む区画であり、闇ギルドのアジトとされている二階建ての家もまた小綺麗な佇まいを見せている。

「間違いないでしょう。地下室もあるようなので」
「へえ……」

 物入れ程度などよくあるが、部屋と呼べるほどの地下空間を個人宅で作ることは稀だろう。そういう情報を聞くと、家から怪しげな気配が漂ってくるから不思議なものである。

「中にいるのは八、いえ九人」
「……地下室といい、どうやって探ってるんだ?」

 遮蔽物の少ない野原ならまだしも、建物の構造や中にいる人間の数まで割り出せるのは何らかのスキルやアビリティによるものとしか思えなかった。

「<冥界騎士>には<生命感知>というアビリティがあります。命を奉ずる天職ですから。ただし感知できるのは生命の在処と大まかな形のみで、構成員か否かはわかりません。殲滅ならここからでも可能ですが、無関係の人間を巻き込まないためにはお邪魔する必要があります」
「こっからやれるってのも気になるが……ま、八か九かわかりづらいんなら、一人はいるのかもしれないな」
「問題ないとは思うのですが。連れ込むなら隠れ家の方でしょうから」
「ごもっとも」

 そうして話している間に、<闇姫>は糸のように細く変形させた<無限龍の尾>によって視線の先にある家を囲ってしまった。
<無限龍の尾>はほぼ破壊不能。つまりこの時をもって、<梟の矢>のアジトは脱出も侵入も不可能な牢獄と化したということだ。

 現在時刻は午後五時。
 太陽が赤く染まりつつある時分。

 襲撃を行うに際し、あまり適した時間ではないかもしれない。
 だが、アークも<闇姫>も闇ギルドの生態を詳しく知っているわけではなかった。事業内容からして、仕事は夜にすることが多いのではないか、という漠然とした印象しか持っていない。

<闇姫>はその辺りのことも聞き出してはいたが、結局は『依頼による』としか言えないものだった。ただ、そうして聞き出せた時点で、<梟の矢>の底が浅いことはわかる。百年前から名が存在しているような闇ギルドの構成員であれば、情報を漏らすような真似は決してしなかっただろう。

「アークさんは帰ってくる者がいれば対処を。殺す場合は原形がなくなるまで潰せば証拠隠滅的には問題ありませんので」
「思い出させるなよ……」

 爆散。アークが道すがら戦った魔物の末路で、熟練度の急激かつ天井知らずの上昇による産物である。
 破裂する血肉にいい思い出がないアークは頭を抱えるしかなかった。

「一般人やギルドの監視員が来た場合はこれを」

 無造作に投げ渡されたのは五つ星冒険者のタグ。
 説明には十分だろう。

「それでは」

 一瞬で全身鎧装備に姿を変えた<闇姫>は家の前まで歩いていき――……ドアを無造作に蹴破った。

「おーおー……」

 間違いでしたでは済まされない行為だが、すぐにいくつもの野太い怒声が上がり、さらに「<闇姫>」と叫んだ者がいたことでその懸念は解消された。

 辺境都市で活動するソロの五つ星冒険者――<闇姫>の名は皇都にも伝わるほど有名だが、その姿を見て即座に口にできる者は決して多くないだろう。
 中の者がドアを蹴破った敵対者を<闇姫>だと名指しできたのは、<闇姫>の名が最初から頭の中に存在していたためだ。例えばそう、仕事の対象として。

「<梟の矢>の皆さん、ごきげんよう」

 敵意の充満した空間に足を踏み入れつつ行われた<闇姫>の確認は否定されなかった。
 人を食い物にしている組織が故の傲慢か、己らの戦闘力に対する自信か。何にしてもその判断によって彼らの命運は閉ざされた。

<闇姫>がアジトに入り、秒ごとに聞こえる声や物音が少なくなっていく。
<無限龍の尾>の檻が消え、<闇姫>が戻ってくるまで一分とかからなかった。

「一人はどうだった……?」
「構成員でした。枕元からナイフを投げられたので」
「武闘派だな……」

 アジトの奥まで踏み込んで来た完全武装の敵――五つ星冒険者相手にナイフ一本で挑むのは無謀だ。自殺行為どころか自殺そのものだろう。いっそ反撃を諦め、悲鳴を上げて無関係を装えば助かる道もあったはずだ。
 情交の相手や仲間を全て見捨てることになるため、徹底抗戦も当然の選択ではあるのだが……闇ギルドの構成員の行動としては稚拙というかお粗末のようにアークには思える。
 結局のところ、<梟の矢>は結成しては潰れていく、あるいは潰される、凡百の裏組織止まりということなのだろう。

「次に行きましょう」

 事実として、<梟の矢>は今日壊滅することになる。

 * * *

「……――<闇姫>が訪ねてきた? 一人で?」
「え、ええ……首領を呼んでます」
「そいつ、本物なのか?」

<梟の矢>の首領、<弓士>のサーヴァスは部下の報告に疑問を呈する。

「それは……わかりません。ただ……見てもらえばわかると思いますが、五つ星の風格はあります」

<梟の矢>は現在、<闇姫>をターゲットにした依頼を受けている。
 殺害や拉致などではなく、ただ『監視しておけ』というものだ。

 だからサーヴァスは知っている。
『<闇姫>への伝令を排除せよ』という追加の依頼を受けた時点で、<闇姫>はまだ辺境都市ライジェルにいたことを。そして状況的には、その伝令が<闇姫>の元へ辿り着くまで、<闇姫>はライジェルを出る動機はなかったはずだ。

(<闇姫>がここに来たってことは、カイルたちはやっぱり失敗したのか?)

 依頼を確認した旨の報告があったのを最後に、辺境都市に送っていたメンバーからの連絡が途絶えていた。
 連絡には生き物を利用しているため、トラブルが起きることは稀にある。
 だから、本来であればまだ不審がるほどの日数ではないが、もし妨害に失敗して<闇姫>とぶつかってしまったのであれば。
 ここ数日、メンバーをアジトに集合させているのもそれが原因だ。

(だが、<闇姫>に伝令が届いていたにしても……早すぎないか? ……いや、<闇姫>は五つ星冒険者。常識は通用しない。噂通り<黒騎士>なら……馬の扱いにも長けているだろう)

「……南と西に人をやれ。応援を呼ぶ」
「戦うんですか?」
「いや、それは最終手段だ。なるべく話し合いで済ませる。応援は念のためだ」
「わかりました……!」

 名は何と言ったか、ともかく下っ端の男が部屋を飛び出していった。

(カイルがいれば『鳥』を飛ばせたんだが……)

 カイルは<鳥獣使い>――その名の通り、鳥を使役できる天職だ。力を発揮するのは主に長距離の連絡役。鳥に手紙を運ばせれば、地上を走るよりも何倍も早く情報をやり取りできる。
 欠点は、鳥に場所を覚えさせるために<鳥獣使い>が届け先へ一度は出向く必要があること、<鳥獣使い>しか鳥の行き先を決められないこと、鳥が上位の捕食者に襲われて情報を遺失する可能性があること、などだ。

 今はこのアジトにカイルがいないため、鳥を飛ばしても主がいる辺境都市に向かうだけ。他のアジトと連絡を取るには人を直接向かわせるしかない。

「だ、だめです……」

 下っ端はわずかな時間で、二人になって部屋へ戻ってきた。

「糸のようなもので囲まれていて、どこからも出られません……」
「どういうことだ?」
「切れないんすよ……! ほっせぇのに……!」

 下っ端二人の顔は焦りと疑問で満ちていた。
 サーヴァスは二人を伴い、窓のない部屋を出た。
 廊下には窓があるため、一つを選んで開ける。

 確かに黒い糸のようなモノが五センチ間隔で張られていた。

「これか……」

 ナイフを当てても刃が通らない。斬りつけても無駄だった。切ることはおろか、五センチの隙間が広がりすらしない。

「ちっ、お前たちの適性武器でも駄目なのか?」
「ぶ、武器の方がイカれちまう有様で……」

(この様子だと壁を壊しても意味がないか。くそ……こんなスキルは聞いたことがない。黒い糸……やったのは<闇姫>か? 迷宮産のアイテム? それとも天与か……?)

「ど、どうすれば……?」
「……<闇姫>は?」
「まだ玄関にいると……せ、先輩方もそこに」

(閉じこめたのは逃がす気がないからか? なら初手から殺しにかかるべき……いや待て、早まるな)

 相手は五つ星――しかもソロでそこまでいった化け物だ。
 だが、<梟の矢>には熟練度三十超えの戦闘職が揃っている。

 熟練度五十超えの戦闘職が熟練度三十の戦闘職の十倍の強さを発揮することは、可能だ。
 ただし、それは対魔物戦においてならばの話。

 対戦闘職ならば、五十超えであっても三十の十人に囲まれれば封殺されて終わる。
 互角の戦力であれば、多く見積もっても四~五人程度。
 囲む側の熟練度が十でも戦闘職十人相手は厳しい。

 何故なら、人は魔物ほど頑丈ではないからだ。

 首を斬られて、致死毒を食らって、治療なしに死なない人間はほぼ皆無。
<闇姫>のように全身鎧を纏っていればそれらはある程度は防げるが、それでも熟練度十以上の戦闘職の攻撃ならば通る。
 重量武器ならば、頭に当たれば首が折れ、手足に当たれば関節が砕けるだろう。

 唯一スピード特化の場合には攻撃が当たらない可能性があるが、全身鎧の<闇姫>はどう考えてもそのタイプではない。
 周囲の予想通りに天職が<黒騎士>なのであれば、さらに戦闘力は下がることになる。

 囲めば問題なく倒せる。

(姿を見せても私の天与ならば不意を突けるしな。敵意の有無を確かめるのが先決か)

 サーヴァスはあるものを握り込むと、ポケットに手を入れ、部下二人を引き連れて階下へ向かった。

 玄関では<梟の矢>メンバーと<闇姫>が向かい合っていた。
 雰囲気は一触即発。逆に言えば、血の気の多いメンバーたちがまだ仕掛けてはいないということだ。

(武器は持ってきていない……いや、<闇姫>が武器を持ち歩いているという話は聞いたことがない、か)

 サーヴァスは階段の半ばで足を止め、<闇姫>を見下ろす形で向き合った。

「私がサーヴァスだ。<闇姫>殿、名高き五つ星冒険者が何用かな? 依頼なら内容次第で引き受けるが」
「聞きたいことがありまして」

 そのくぐもった女の声に、恐怖や焦りの色は微塵もこもっていない。数メートルの距離があるとはいえ、十人以上の戦闘職に囲まれているというのに。もっとも、敵が少しでも弱気を見せていたならすでに戦闘に発展していただろうが。

「それもまた依頼の範疇。報酬次第で答えよう。ただし、他の依頼に関する情報は答えられない旨、ご理解願いたい」
「天与所有者を拉致しているのは<梟の矢>で間違いないですか?」

(ちっ……)

 それは予想外の質問であった。聞かれるのは、<闇姫>を監視していたことか<闇姫>への伝令を襲ったことだと思っていた。
 サーヴァスは反応していない自信があったが、メンバーの幾人かは警戒を高めるという反応を見せてしまっただろう。<闇姫>がその変化した気配を感じていたら、サーヴァスが返答するまでもなく結論を導いているはずだ。

 同時に。
 依頼とせずにこの場で問うてきた事実は友好的な関係を構築する気がないことの宣言。
<闇姫>は情報を強奪しに来たのだ。

「我々と商売する気がないなら、お引き取り願おうか」

 ドアに手を向けるという動作で、サーヴァスは手の中にあるモノを放った。

 迷宮産出のアイテム――『炎の牙』。
 魔力を込めて投じることで、封じられている魔法を解放する使い捨ての魔導具。

 それを、<闇姫>に向けて放り投げたのだ。
 ゆっくりと、山なりに。

 しかしそれでは五つ星冒険者どころか、天職を得る前の子供にすら容易く避けられてしまうだろう。

 ただし。
 それは投じられた炎の牙が見えていればの話。

(<手中の不在証明>……!)

 それがサーヴァスの天与スキルだ。

 効果は『持っている物を見えなくする』で『その効果は手を離しても握っていた時間分は持続して作用する』。
 物語に登場する派手な天与スキルと比べれば効果は地味だが、利便性は高い。
<弓士>というサーヴァスの天職にも非常に噛み合っている。

(そうだ、そのまま動くなよ――……)

 願いは、通じた。
<闇姫>は弧を描く炎の牙を見送り――その足下で、魔導具が爆ぜる。

 炎の牙に込められた魔法は、人間を鎧ごと丸焼きにできるほどの威力がある。
 本来なら屋内で使っていい代物ではないが相手が相手だ。
 こちらが有利であろうと、初手で確実に優勢を奪っておく必要がある

「――……」

 巻き起こった炎の柱が<闇姫>を包んだ。
 熱風と驚きが撒き散らされる。

「よし、今だ! かか――ぎぃッ!?」

 追撃の号令を掛けようとした瞬間、脳を貫いた悪寒と激痛。
 わずかに遅れ、サーヴァスの視界が傾いた。

 自分の身に何が起こったのか。
 サーヴァスはそれを見た。

 足下――影から生まれた黒い顎によって、下半身を喰い千切られたのだ。
 サーヴァスだけではない。
 玄関ホールにいた<梟の矢>メンバー全てが同じように――。

「ぐう、ぁぁあああっ……!?」

 下半身を失ったサーヴァスは階段を転がり落ちる。
 視界の回転が治まったとき、そこには火が燃え移った天井と黒い鎧が映っていた。

「不意打ちは警戒していましたので」
「ち――づぅっ……!?」

 サーヴァスは反射的に距離を取ろうとしたが、足はすでにない。
 反転こそできたものの、痛みと機能喪失により床の上をのたうつだけに終わる。

(くぅ、完全に防がれたのか……!? 天与……っ、い、や、まさ、か……魔法、職ッ!?)

 影からの攻撃もそうなのではないか、と。

「がああああっ……!」
「なん、だっ、なんだよこれっ!」
「足がねえっ!? オレの足がぁっ!」

(ま、まずい……! 動ける者が――……)

 更なる悲鳴が各所で上がる。
 それはサーヴァスも例外ではなかった。
 気づけば、手も影に喰われてなくなっていた。

 気絶しそうな激痛。しかしそれは不意に和らぐ。
<闇姫>が歩きながら無分別に振りまいた大量のポーションが血止めと痛み止めの効果を発揮したのだ。

 だが、そのまま階段を登る<闇姫>に、何かできる者はいなかった。

 憤怒と怨嗟が満ちる空間。
 そこに<闇姫>が再び姿を見せたのは、一分後だったのか五分後だったのか。
 体内時計は短い時間を告げていたが、サーヴァスにはよくわからなかった。
 家探しをしたにしてはどちらにせよ、短い時間だったから。

「――せっかくです、火葬にしましょう」

 投じられたのは、内部で赤色が揺らめく水晶柱――炎の牙。
 止血に使用されたポーションと同様にそれなりに高値なアイテムが次々と投じられ、新たな炎がアジトを満たしていった。

「では良き旅を」

 言い残して、<闇姫>はアジトを出て行った。
 扉を開けっ放しにした状態で。

「は、ははは……ははははは……」

 炎の牙が直接的に生んだ炎には誰も焼かれてはいないが、このままでは遠からず、燃え広がる火に焼かれ、崩れる家に押し潰されることになるだろう。

 だが、それがわかっていてもどうすることもできない。
 手足を全て失えば、ほとんどの戦闘職は加護を受けることができなくなるからだ。

 サーヴァスの天職――<弓士>も同様だ。
 小型の弓を常に腰に下げているが、それを扱う手足がなければ装備中とは認められない。

 ああそれでも。
 芋虫のように這うことくらいはできる。
 命を繋ぐためなら、それで命を繋げるなら、人は必死でそうするだろう。

 事実、そうしているメンバーもいる。
 炎から逃れようと、喚きながら這いずっている者たちがいる。

 その顔が向いているのは玄関ドア。
 ドアなどもう開けられない体にされたが、幸いにも今ドアは開いている。
 そこから逃げられる、と。

 ない。そんなことはない。
 逃げようとしている者たちは知らないのだ。

<弓士>の補正とは関係なく優れている視力によって、サーヴァスには見えている。
 通れるように見えて、そこがすでに封鎖されていることを。
<闇姫>が出た後も、例の黒い糸が維持されていることを。

 五センチの隙間からでは人は生きては出られない。
 特殊な天与があればもしかしたら、という程度だ。

 必死に這いずっても辿り着くのは絶望のみ。
 ならばもう笑うしかないではないか。

「な、なんだこれッ!?」
「オイ、なにやってンだッ、さっさと出ろよっ!?」
「でれねえんだよぉっ! クソがぁっ!」
「おおいっ、誰かっ! 誰かいねえのかっ!」
「ゲホッ! ゲホッ! だす、だずけでぐでぇ……っ」
「あぢぃっ、あぢいよぉっ!」

 自分たちがさんざん無視してきた命乞いの声を聞き届ける者などいない。

(くそ……あれが五つ星……いや、五つ星どころではない、だろう……あれは……)

 現役の五つ星冒険者は非常に少ない。サーヴァスも会ったことがない。
 だが、四つ星ならば会ったことがあるし、戦闘を見たこともあるし――殺したこともある。
<梟の矢>としても、貴族の下で増長し、不要になった熟練度四十超えの戦闘職の始末をしたことがある。

 だから、高をくくっていた。
 対人戦闘においては熟練度がどれだけ高くとも大した脅威ではない、と。

(……身の程も知らずに跳ね回った結果、か。つまらない死に様だが……相手が本物だった、ことが……せめてもの救い、だな……)

 そうして、<梟の矢>を構成していた総てがオレンジ色の炎と煙に包まれていった。

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