何度目かの恋

弘前 天海

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第一章 出逢い

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「えー本日は、熊野菘弌君の恋を応援する会にご臨席を賜りまして、誠に有難うございます」
昼休みも中頃。食堂に殺到していた生徒や教職員達が次々と席を立ち始める頃、それを見計らって席に着いた僕達に、三隈はまるで忘年会の幹事のように話し出した。
『ご臨席』したのは、当然ながら僕と最上の二人だけであって、別に立派そうな挨拶をする必要も無い。
「だるい…」
そう呟きながら、僕は昼食の饂飩をすする。
僕は天麩羅饂飩。三隈はハンバーグ定食。最上は豚骨醤油ラーメンだ。
 「で?どう応援すんだ?」
と、最上は云う。いらんことを・・・と僕は思う。
「まずは、菘弌君。アナタが頑張って!」
「丸投げかよっ!」
僕は思わず声をあげた。
「はい終了終了。頑張って!菘弌君」
結局出た案は「根性論」ただ一つであった。
何のために集められたのだろうか。
僕は早々と饂飩をすすると「ご馳走さま」と二人を置いて食堂をあとにした。そして、僕は行き着けの屋上へと向かう。
「退屈だな・・・」と、冷たい珈琲をすする。暑さもあって、珈琲が喉に染み渡る。
「どうしたの?そんなつまらなそうな顔して」
突然の声に驚いて、僕は思わず珈琲缶を落としてしまった。
あれ?こんな事・・・何処かであったような・・・まぁ、気のせいだろう。
中身が無かったのが幸いだが、後で拾いに行かないと・・・
「あ・・・ごめんなさい」
「いや。いいよ」
と、振り返ると、其処には一人の少女が立っていた。
サラサラとした黒髪。切れ長の目から除くキラキラとした瞳。しなやかな肉体。そして香る、甘い香り。
「衣笠・・・?」
えーっと僕は心の中で叫んだ。
「どうしたの?そんな吃驚しちゃって。悩み事?」
と、楓は僕の顔を覗き込んだ。
ついさっきまで、お前のことで悩んでたんだよ!とは云えず、「いや。何でもないよ」と返した。
「まぁいいよ。あ、後で一緒に探すからね。あの缶」
「いいよ。そこまで手はかけさせない。それで?何の用だ?」
すると、楓は柔らかそうな唇をおもむろに開いた。
「私はね。アナタと話したくてここに来たんだ」
「え?・・・」

    
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