仁川路朱鳥詩集

高3後半

うたかた

うたかた かたかたと
音を立てるやかんを尻目に
言葉たちは沸騰し そして
かたかたと消えていく

今一瞬しかいられないうたかたを
夜明けの街の黄昏の間うたかたを
縫って繋いで
人間とは地層のことだ
折り重なって人生とした
積み重なる1秒を見るたび
積層する─を思い浮かべて

夜に浮く万華鏡の透けて
光が見え 夢のように穏やかな

あまりに穏やかな
静かな死の訪れを
死は友人のように恋人のように
寄り添って命を狙う
最後の最期のガアドレエル

人生という道は時間と
死による守りで舗装されている
それ以外の逸脱方法はなくて
それこそ うたかたに消えて
未だかつて違反切符を見たことはない
うたかたに消えるわたしの記憶

うたかた かたかたと
鳴るやかんが沸騰を知らせる
今日は朝をささやかに豪華に
廉価な目覚めではなくささやかに高価
な朝の習慣に
たまにはこういう日だっていい
全てうたかたに消えるならば