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社会人(成人)
つみのない国
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コンカウルファウトの
海辺に腰をかけて
むかしの旅を思い出し
いまの扉を開けています
あれはわたしが
29歳だった
24年前のこと、
留学でホームステイをした
ある国のできごとでした
人殺しも、
強盗も、
性犯罪でさえ、
だれもが罪をもたない国は
もちろん旅行に適しています
わたしの混入した家族は、
「あした、私は私ではなくなる」
と、言い続けていました
来る日も、来る日も、
4年くらい滞在していましたが、
言い続けていました
きのうの夕飯のレシピでも、
聞いておこうとしたのですが
家族は夕飯の記憶を持っていなかった
カレーうどんか冷ややっこ、
そのあいまいな答えでさえ
家族は持っていなかったのだから
本当に、他人に変わっていたのだと
確信したのです
つきのいない夜、
落ち着かなかったわたしは
となりの寝室を覗きます、
おばさんが、一心不乱に
メモを書き留めていたこと、
「あした、私は私ではなくなる
だからこそ、私が私だった、
証拠を、
書かなければ、書かなければ」
荒れた寝室は心を見せた、
でも手首はきれいなまま
やがて彼女は夢に向かう
毛布に抱っこされるそれを見て、
次の日、おばさんは
「きのう私を滞在した人は
こんなことを考えていたのね」
あっけらかんと言い放ちました
さて、わたしは
ただ学びに熱中できる
よき留学ができた、
だけだと思われましたか?
コンカウルファウトの近く、
サーマエヴという国の
お話でした、
サーマエヴはかつて
犯罪が多い国でした
死体は道を不法占拠して、
建物ができるぐらいまで
つみ重なっていた
そこでかつての技術者たちが
思い浮かんだ発想が
わたしの見てきたすべてです
人を殺す、犯す、騙す、食べる
もしかしたら、本当は、
自分だったかもしれない、
食べているうどんは、豆腐は、
自分の肉体だったかもしれない、
誰かを刺す時、
人は自分をも刺すものだ
だからこそ、誰かの無念を、
背負うしか、
道はない
海辺に腰をかけて
むかしの旅を思い出し
いまの扉を開けています
あれはわたしが
29歳だった
24年前のこと、
留学でホームステイをした
ある国のできごとでした
人殺しも、
強盗も、
性犯罪でさえ、
だれもが罪をもたない国は
もちろん旅行に適しています
わたしの混入した家族は、
「あした、私は私ではなくなる」
と、言い続けていました
来る日も、来る日も、
4年くらい滞在していましたが、
言い続けていました
きのうの夕飯のレシピでも、
聞いておこうとしたのですが
家族は夕飯の記憶を持っていなかった
カレーうどんか冷ややっこ、
そのあいまいな答えでさえ
家族は持っていなかったのだから
本当に、他人に変わっていたのだと
確信したのです
つきのいない夜、
落ち着かなかったわたしは
となりの寝室を覗きます、
おばさんが、一心不乱に
メモを書き留めていたこと、
「あした、私は私ではなくなる
だからこそ、私が私だった、
証拠を、
書かなければ、書かなければ」
荒れた寝室は心を見せた、
でも手首はきれいなまま
やがて彼女は夢に向かう
毛布に抱っこされるそれを見て、
次の日、おばさんは
「きのう私を滞在した人は
こんなことを考えていたのね」
あっけらかんと言い放ちました
さて、わたしは
ただ学びに熱中できる
よき留学ができた、
だけだと思われましたか?
コンカウルファウトの近く、
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お話でした、
サーマエヴはかつて
犯罪が多い国でした
死体は道を不法占拠して、
建物ができるぐらいまで
つみ重なっていた
そこでかつての技術者たちが
思い浮かんだ発想が
わたしの見てきたすべてです
人を殺す、犯す、騙す、食べる
もしかしたら、本当は、
自分だったかもしれない、
食べているうどんは、豆腐は、
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誰かを刺す時、
人は自分をも刺すものだ
だからこそ、誰かの無念を、
背負うしか、
道はない
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