異世界召喚されました。親友は第一王子に惚れられて、ぽっちゃりな私は聖女として精霊王とイケメン達に愛される!?〜聖女の座は親友に譲ります〜

あいみ

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第一章

青騎士②【キース】

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 変わりない日常に変化が訪れたのは、それから間もなくしてだった。

 カイザー様が召喚の儀を行ったのだ。

 それも無断で。

 本来、召喚の儀は聖女を召喚するためのもの。

 あれを使うには何百年の歳月と途方もないエネルギーを溜める必要がある。それを……。

 聖女召喚に使ったのならまだ許される。だがカイザー様は、自分の花嫁を得るためだけに使用してしまった。

 これでは国が危機に陥ったとしても滅びを待つのみ。力を持たない我々には聖女の存在と精霊王の加護が必要不可欠。

 今まで何も起きなかったからと、この先も安全でいられるわけではない。

「なぜこんなバカなことを……!!」

 私の独り言は誰に届くこともなく宙に消える。

 召還の儀は最後の希望。

 王族ならばその説明は受けているはず。

 隣国から結婚が認められなかったことへの腹いせなのか、その行動はとても許されるものではない。

 王子であることをやめて、カイザー様の騎士となり国を支える決断は間違っていたのだろうか?

 自信がなくなった。

 慕っていたからこそ、この愚行は許せない。

 私はいつもに疎まれていたが私は本当に兄を尊敬していた。

 カイザー様はこの国の頂となるお方。

 が、私欲のために民を危険に晒すのであれば私がお仕えする理由がない。

 人生で二度目のワガママ。陛下に頼んでカイザー様の護衛騎士から外してもらった。

「お前には苦労ばかりかけたな」

 陛下はすぐに了承してくれた。

 今回のことで再び私を王子に呼び戻すか、護衛騎士から外さないと言うか、どちらかだと思っていたのに。

 カイザー様にひどく失望した様子。

 それほどカイザー様の行いは非常識であると物語っているのだ。

 本人にも伝えたかったが召喚の儀以降、花嫁にかかりっきりであまり外に出なくなった。

 噂では一目で心を奪われる天使だとか。

 まさか本当に聖女ではなく花嫁が召還されるとは。

 そしてなぜか一緒にもう一人召喚されていた。おかしいな。どれだけ近くに人がいようとこの儀式で呼び寄せられるのは一人だけ。

 ──不具合でも生じたか?

 そっちの噂がまた、何と言うか……。どんな容姿なのか想像もつかないほど汚い言葉で見下していた。

 気にはなっていたが用もないのに会いに行くのも失礼。

 オマケと呼ばれる少女は精霊王の名を口してその場から消えたと。

 少女は王宮の庭園ですぐに発見された。

 証拠はないが彼女が本物の聖女だとしたら王宮の外に出すのは危険で保護をした。

 精霊王に選ばれし、清き心を持った聖女。

 邪な好奇心に負けて一目だけでも見ようと、訓練の休憩だと自分に言い聞かせながら部屋の真下の道を通った。

 朝、窓を開け風に吹かれるその人は皆が嘲笑うような醜さなどなく、とても綺麗だった。

 全身の血が沸騰したように熱く、生まれて初めて人を好きになったのは、まさかの一目惚れ。

 向こうは私の存在に気付いてもいない。声をかけたら困らせてしまう。

 冷静を装うも心臓はいつもより速く音がうるさい。

 もし護衛騎士が付くなら私ではなくアーサー卿にその役目がいく。彼以上に適任者もいない。

「私が貴女の騎士になりたい」

 欲望が言葉となったときハッとした。

 慌てて口を閉じて周りを見渡す。誰もいない。聞かれてはいなかった。

 ホッとするのも束の間。

 胸の奥が締め付けられる。

 ──あぁ、嫌だ。私以外が彼女の傍にいるのは。

 嫉妬にも似た感情は血と共に体中を巡る。

 王子としての身分があったときは婚約者候補として、同年代の女性とよく顔を合わせていたが、綺麗とか可愛いとか、ありふれたことを思っても、それだけ。

 また会いたいなんてことはなく、二度目に尋ねられても授業が忙しいという理由から会うことを避けていた。

 その気がないのに、期待させてガッカリさせたくなかったから。

 そんな自分が、一目見ただけの女性に恋焦がれる。

 初めての感情だ。

 見たのは一瞬。彼女に気付かれる前に足早に立ち去り、それなのに頭の中は彼女の顔が離れない。

 どんな声をしているのだろう。名前はなんというのだろう。

 知りたいことが沢山ある。

 彼女への想いは胸の中にしまい込むことで、いつも通りを装えた。

 そんなある日。私が彼女の、コトネ様の騎士になるように陛下は王命を出す。

 私のほうがコトネ様と歳が近い分、緊張させなくて済むという理由だったが、それでも嬉しかった。

 自然と零れた笑みに、頭を振って邪な気持ちを振り払う。

 私は騎士としてお守りする立場。それ以上でも以下でもない。

 「可能ならでいいのですが食事にスープを付けて頂けませんか。固いパンだけは食べずらくて」

 申し訳なさそうに口にした。

 その言葉が意味することは……。

 カイザー様も聖女のことは習っているはず。コトネ様だけが我々の希望となるお方。

 例え聖女でなくても、女性に対する扱いではない。

 ましてや食べ残した物を食事と偽ってでも食べさせるなど。

 陛下も王妃も甘やかしすぎたと反省しカイザー様の行動を改めて見直そうとしている。

 私が王位継承から退いた今、次期国王はカイザー様以外にはいないと周りは諦めムード。

 本人はそれを自覚しているからこそ、やりたい放題出来るわけだし、周りも機嫌を損ねないように必死。

 カイザー様もカイザー様だ。自身の好みではないからといってぞんざいに扱うなんて。

 何が気に食わないのかコトネ様の評判を下げるようなことばかり言いふらしては王宮内で孤立させようとしている。

 突然、見知らぬ世界に飛ばされ家族と離れ離れになった寂しさ。親友とも会えない辛さ。

 立場を自分に置き換えて考えみれば、そんな非道な行動には移せない。

 相手の都合で召喚されただけでなく、まるで早く死んでくれと言わんばかりに放置。

 カイザー様はコトネ様の気持ちなど微塵もわかろうとしない。ユア殿だけが不自由なく暮らせるように権力を振りかざす。

 私はもうカイザー様を兄とは思わない。思えない。

 コトネ様を守るためならば、この剣を向けることも躊躇わないだろう。

 私の全てはコトネ様に捧げる。

 聖女だからとか、想いを寄せているからではなく、我が国の王子が無礼を働きコトネ様の尊厳を奪ったせめてもの償い。
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