貴方の愛に価値があるとでも?〜婚約破棄を望む公爵令嬢、ナルシスト王子と親友の浮気、知っていましたが何か?〜

あいみ

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私こそが一番!【ミリア】

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 私とナターシャは小さいときから一緒だった。同じ公爵位というのが理由。

 最初は姉妹のようだと周りに言われ、今では親友。

 私達の関係はずっと続くんだと信じていた。

 ──それなのに……。

 いつだってナターシャだけがチヤホヤされる。この私を差し置いて。

 しかも!!よりにもよって王太子の婚約者に選ばれたですって!?

 歳が同じって理由だけで!!私だって殿下と同じ歳だし、爵位だって公爵。

 同じ条件なのに、陛下は私には目もくれずナターシャを選んだ。

 ──どうしてよ!!?

 私のほうが女として上なのに。

 パーティーでエスコートをさせて欲しいと事前に手紙をくれる男はみんな、本当はナターシャを誘いたかったと表情が語っていた。

 隣にいる私ではなく、婚約者のいるナターシャにばかり目を向けて。

 淑女である私は、彼らの本音を読み解きながらも知らないふりをしてあげる。

 ダンスが終われば皆、早々にナターシャを取り囲む。

 熱のこもった好意が隠された視線。

 他の令嬢だって憧れ羨む。

 ──私のほうがその座に相応しい。

 人の上に立つのも、羨望の眼差しを向けられるのも。

 王太子妃に選ばれるのも全て!!

 選ばれるべきは私だった。陛下は間違えたのよ。

 王命を下す相手を。

 国王してトップに君臨してきたお方だとしても、所詮は人の子。
 間違いのない完璧な人間は存在しない。

 だから……奪ってやったのよ。

 決定した王命は覆せなくとも、本人が婚約破棄を強く望めば強制して縛り続けることは出来ない。

 後々になって面倒な問題を起こされたら、それこそ厄介だから。

 身分だけしか取り柄のないバカは、ちょっと煽ておだてるとすぐその気になって恋人のように接してくる。

 ナターシャに劣等感を抱いていたからこそ、持ち上げてあげるだけで気分が良くなり私を特別扱いしてくれた。

 仕上げに体の相性でエルはナターシャより私を選んだ。

 結婚前に男女の関係になったらいけないなんて決まりはない。

 ナターシャは体の発育は良いし、エルもよくそういう目で見ていた。

 何度か誘ってはみたけど、いつも上手くあしらわれるばかり。

 傍から見たら我慢の限界に達していたのが丸わかりだった。

 そこに純情で健気な私からの愛の告白。
 涙で目を潤ませればエルの心臓は撃ち抜かれた。

 力強く抱きしめては

 「やっとわかった!真実の愛はここにあったんだ!!」

 なんて、訳のわからないことを言った。


 ──可哀想なナターシャ。

 大切な婚約者がいとも簡単に寝取られるなんて。

 盛大に見下し嘲笑ってあげようと思っていたのに、ナターシャはエルの浮気を怒ることはなく、むしろ私達を祝福してくれた。満面の笑みで。

 は?

 何それ。もっと悔しがりなさいよ!次期王妃の座を奪われたんだから!!

 むしゃくしゃする!

 強がりだったとしても、あの態度は一体……。

 「エル。私達は晴れて婚約者になったんだし、みんなに祝福してもらいたいからパーティーを開かない?」

 こうなったら意地でも私とナターシャの違いをわからせてあげる。

 どんな理由があろうとも、婚約破棄をした女は傷モノ。しかも寝取られたとなれば、女としての価値がなかったと証明された。

 「ね?いいでしょ?」
 「あぁ。もちろんだ」

 腕に絡みつき上目遣いで目を潤ませれば、ニヤケ顔で唾を飲み込む。

 視線は私の胸元。

 鼻息も荒い。

 「ほんと!?嬉しい!ありがと♡」

 胸を押し付けるように抱きついた。

 お待ちかねのキスをしてあげると鼻の下は伸び、咳払いで一つ取り繕おうとする。

 こんなだらしのないナルシストなんて気持ち悪いだけ。

 扱いやすくて思い通りに動かせるバカ王子じゃなければ、相手にもしなかった。

 「お礼に今日はたっぷり、エルの好きなこと、してあげる♡」

 耳元で囁いた。

 もう取り繕うことさえしていない。
 欲望丸出し。

 私としてもそのほうが助かる。

 何でも願いを叶えてくれるしもべはいてくれるだけで役に立つ。

 私は優しくて親友のことを第一に考えているから、招待状は誰よりも早く届けてあげる。

 セルの私への待遇を目の当たりにしたら、いくらナターシャでも手放したことを後悔するに決まっている。

 王太子妃以上に最高の地位なんて、あるわけがないんだから。
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