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処刑の危機
夕食の前にお父様も帰ってきた。
珍しく自分から王宮に行っていたみたい。普段は何かと理由を付けて足を運ぼうともしないのに。
それが不敬にならないからこその行動。
勇敢な人なんだ、お父様は。
食事を摂りながら王宮に行った理由を聞いてみた。
「我が家はこれから、第二王子を支持する派閥に入る。その挨拶だ」
歓迎はしてくれるだろう。
リードハルム家は他貴族からの信頼も厚く、もしも王族が失脚するなんて最悪の事態になったら貴族も平民も間違いなく、次の王にはお父様を選ぶ。
これほどまでに心強い家臣はいない。
「あの方は中々に見所がある」
「何かありましたか」
「ほとんど顔を合わせていないアンのことを心配してくれていた。政略結婚とはいえ、一方的に婚約破棄を大勢の前で突き付けられて周りから笑い者にされていないかと。謝罪もしてくれた。兄の身勝手さは許されるものではないが、弟として謝らせて欲しいと頭まで下げてくれた」
「おお!あのバカとは違う誠実の塊だな」
たった一日でお父様とお兄様からの信頼を得た。
「アナタ。まさか今度はリカルド殿下と婚約した、なんて言いませんよね?」
「陛下からその話は上がったが、丁重にお断りした。既に第一王子がやらかしたのに、また王命でアンを縛るのかと」
それは丁重なのかな?ほとんど脅迫な気がする。
「何を言っても不敬にならないよう、部屋には陛下夫妻とリカルド殿下しかいなかった」
私の不安を読み取ったお父様はすぐに情報を付け足した。
「まぁ最も、誰がいようが、不敬と言われようが、その場にいた全員を黙らせることぐらい容易ではあるがな」
顔。顔が怖いです。お父様。それでは悪人です。
冗談ではなく本気なところが怖いのだ。
相手が誰でも家族のためなら容赦しないのはお父様の長所であり短所。
それら全てを含めて私はお父様を愛している。もちろん、お母様とお兄様も。
私を愛してくれる家族に今日の出来事を話せば、鎮まった怒りがまた燃える。
どうするか悩んでも意味はない。どうせギルが報告するのだから。
事後報告より、先に言ったほうが断然いい。
「実は殿下のことでご報告が。復縁を申し込まれました」
「は?」
さっきよりも眉間に皺が。
お母様の笑顔に影が見える。
お兄様はお肉にナイフを突き刺す。誰の顔を思い浮かべたのかしら。
部屋の温度が一気に下がった気がした。温かいスープが飲みたいな。
「詳しく説明しなさい」
声だけで人が殺せてしまいそうなほどドスが効いている。
先だろうが後だろうが、怒りの頂点を超えることは絶対だった。
詳しくと言われても、上から目線で復縁を迫られ、断っただけ。
復縁といっても私は側室で、王妃の座はクラッサム嬢。
一応、伝えると危機を察知したフランクが即座に食事を下げた。行動が速い。
拳を握り締めたお兄様がテーブルをダンと叩く。
咄嗟のナイス判断により料理が無駄にならずに済む。
お父様直々にスカウトをされ、若くしてリードハルム家の執事長を務めるだけはある。
「晒し首にしましょう。あのクソ王子」
今すぐにでも王宮に乗り込み、首をはねそうな勢い。
その間にお母様はクラッサム家に行き、クラッサム嬢を連れて来るのかな。
使用人達は二人の愚行を国中に知らせ、死刑を煽らせる。
未来が確定する前にどうにか止めなくては。
私としては正直、殿下がどうなろうが興味はない。ただ、殿下如きのために貴重な時間を費やすことも、ましてや首謀者になるなんて嫌なだけ。
当の本人達の中で二人は極悪人になっているから処刑することに罪悪感はこれっぽっちも抱いてないだろうけど。
それに世論を味方につけるなんてリードハルム家からしたら朝飯前。
裁いた私達が正義となるのは目に見えている。
「私は気にしていないから、何もしないであげて」
可哀想だから。
王太子から外され、幼くして玉座に座ることを当たり前に思っていた未来が失われた。その上、死ぬなんて。可哀想すぎる。
「こんなにも優しいアンを侮辱したクソ王子が生きてる意味なんてあるのかよ」
「ないな」
「ないわね」
両親共に口を揃えて即答した。
大勢の前で身勝手にも婚約破棄を宣言した翌日に、復縁を望むなんて常識がなくても非常識だとわかりそうなものだけど。
何が何でも処刑しようとする三人の意志は固い。
「殿下のことは無視しましょう。復縁なんて絶対にありえないんだから」
「しかしだな」
「お父様。殿下のせいで時間を無駄にするなんてもったいないです」
「アンはてっきり、クソ王子に情が湧いたのかと思っていたけど違うのか」
「情はあったわ。これっっっぽちも好きになる要素はなかったけど。むしろ結婚せずにすんで良かったぐらいよ」
強がりではなく本心。
私がいかに殿下に興味がないか伝わり、ついでに処刑の件も改めてくれることに。
いくら頭の出来が酷くても、婚約破棄から復縁を望んだだけで処刑なんて、国王夫妻が黙っていない。
議論する暇があるなら仕事を片付けたほうがマシであると気付いた。
「こんなことなら一ヵ月前に殺しておけば良かったな」
物騒な独り言。ここは何も聞こえていないふりが妥当。
瞳から殺意の色が消えると、フランクが素早く料理を並べ直してくれる。
フランクが優秀すぎて怖い。
お父様達を観察してもう大丈夫と確信したのか、家族団欒の邪魔をしないよう音を立てずに退室した。
あんな優秀な執事、どこで見つけてくるのか。お父様の人を見る目がありすぎる。
珍しく自分から王宮に行っていたみたい。普段は何かと理由を付けて足を運ぼうともしないのに。
それが不敬にならないからこその行動。
勇敢な人なんだ、お父様は。
食事を摂りながら王宮に行った理由を聞いてみた。
「我が家はこれから、第二王子を支持する派閥に入る。その挨拶だ」
歓迎はしてくれるだろう。
リードハルム家は他貴族からの信頼も厚く、もしも王族が失脚するなんて最悪の事態になったら貴族も平民も間違いなく、次の王にはお父様を選ぶ。
これほどまでに心強い家臣はいない。
「あの方は中々に見所がある」
「何かありましたか」
「ほとんど顔を合わせていないアンのことを心配してくれていた。政略結婚とはいえ、一方的に婚約破棄を大勢の前で突き付けられて周りから笑い者にされていないかと。謝罪もしてくれた。兄の身勝手さは許されるものではないが、弟として謝らせて欲しいと頭まで下げてくれた」
「おお!あのバカとは違う誠実の塊だな」
たった一日でお父様とお兄様からの信頼を得た。
「アナタ。まさか今度はリカルド殿下と婚約した、なんて言いませんよね?」
「陛下からその話は上がったが、丁重にお断りした。既に第一王子がやらかしたのに、また王命でアンを縛るのかと」
それは丁重なのかな?ほとんど脅迫な気がする。
「何を言っても不敬にならないよう、部屋には陛下夫妻とリカルド殿下しかいなかった」
私の不安を読み取ったお父様はすぐに情報を付け足した。
「まぁ最も、誰がいようが、不敬と言われようが、その場にいた全員を黙らせることぐらい容易ではあるがな」
顔。顔が怖いです。お父様。それでは悪人です。
冗談ではなく本気なところが怖いのだ。
相手が誰でも家族のためなら容赦しないのはお父様の長所であり短所。
それら全てを含めて私はお父様を愛している。もちろん、お母様とお兄様も。
私を愛してくれる家族に今日の出来事を話せば、鎮まった怒りがまた燃える。
どうするか悩んでも意味はない。どうせギルが報告するのだから。
事後報告より、先に言ったほうが断然いい。
「実は殿下のことでご報告が。復縁を申し込まれました」
「は?」
さっきよりも眉間に皺が。
お母様の笑顔に影が見える。
お兄様はお肉にナイフを突き刺す。誰の顔を思い浮かべたのかしら。
部屋の温度が一気に下がった気がした。温かいスープが飲みたいな。
「詳しく説明しなさい」
声だけで人が殺せてしまいそうなほどドスが効いている。
先だろうが後だろうが、怒りの頂点を超えることは絶対だった。
詳しくと言われても、上から目線で復縁を迫られ、断っただけ。
復縁といっても私は側室で、王妃の座はクラッサム嬢。
一応、伝えると危機を察知したフランクが即座に食事を下げた。行動が速い。
拳を握り締めたお兄様がテーブルをダンと叩く。
咄嗟のナイス判断により料理が無駄にならずに済む。
お父様直々にスカウトをされ、若くしてリードハルム家の執事長を務めるだけはある。
「晒し首にしましょう。あのクソ王子」
今すぐにでも王宮に乗り込み、首をはねそうな勢い。
その間にお母様はクラッサム家に行き、クラッサム嬢を連れて来るのかな。
使用人達は二人の愚行を国中に知らせ、死刑を煽らせる。
未来が確定する前にどうにか止めなくては。
私としては正直、殿下がどうなろうが興味はない。ただ、殿下如きのために貴重な時間を費やすことも、ましてや首謀者になるなんて嫌なだけ。
当の本人達の中で二人は極悪人になっているから処刑することに罪悪感はこれっぽっちも抱いてないだろうけど。
それに世論を味方につけるなんてリードハルム家からしたら朝飯前。
裁いた私達が正義となるのは目に見えている。
「私は気にしていないから、何もしないであげて」
可哀想だから。
王太子から外され、幼くして玉座に座ることを当たり前に思っていた未来が失われた。その上、死ぬなんて。可哀想すぎる。
「こんなにも優しいアンを侮辱したクソ王子が生きてる意味なんてあるのかよ」
「ないな」
「ないわね」
両親共に口を揃えて即答した。
大勢の前で身勝手にも婚約破棄を宣言した翌日に、復縁を望むなんて常識がなくても非常識だとわかりそうなものだけど。
何が何でも処刑しようとする三人の意志は固い。
「殿下のことは無視しましょう。復縁なんて絶対にありえないんだから」
「しかしだな」
「お父様。殿下のせいで時間を無駄にするなんてもったいないです」
「アンはてっきり、クソ王子に情が湧いたのかと思っていたけど違うのか」
「情はあったわ。これっっっぽちも好きになる要素はなかったけど。むしろ結婚せずにすんで良かったぐらいよ」
強がりではなく本心。
私がいかに殿下に興味がないか伝わり、ついでに処刑の件も改めてくれることに。
いくら頭の出来が酷くても、婚約破棄から復縁を望んだだけで処刑なんて、国王夫妻が黙っていない。
議論する暇があるなら仕事を片付けたほうがマシであると気付いた。
「こんなことなら一ヵ月前に殺しておけば良かったな」
物騒な独り言。ここは何も聞こえていないふりが妥当。
瞳から殺意の色が消えると、フランクが素早く料理を並べ直してくれる。
フランクが優秀すぎて怖い。
お父様達を観察してもう大丈夫と確信したのか、家族団欒の邪魔をしないよう音を立てずに退室した。
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