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第一章
プライドと保身
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──あらあら。誰が来たかと思えば……。
招待客は全員揃っているのに、扉が開いたことにより一斉に視線が集まる。
さっきまで騒がしかったのにヘレンの登場により静まり返った。
きっと、扉を開ける前までは幸せ全開オーラを放ちながら笑顔を絶やさなかったことでしょう。
あの子のことだから、上から目線で、「ヘレン・ローズの誕生日会にようこそ」なんて言おうとしてたのかしら。
つい、笑ってしまうのを我慢する。
主役を差し置いて始めれたパーティーを見て絶句状態。
いくら考えなしの愚か者でもこの状況は理解出来るわよね?聡明なお兄様方。
「嘘でしょ。あのドレス」
「主役気取り?何を考えているのかしら」
「カスト様もハンネス様も注意しなかったのかしら」
「待って。そういえば今日って……」
収集のつかない陰口を止めたのはニコラ。淑女としての立ち振る舞いに一同が察した。
彼女の発言を邪魔してはならないと。
流石は公爵令嬢。勉強になるわ。
「カスト・ローズ様。ハンネス・ローズ様。そしてヘレン・ジーナ令嬢。今日は私の妹、セツナの誕生会にお越しいただき心よりお礼申し上げます」
「妹…?なん、っ……だって今日は私の……!!アリーだって私のために準備してくれてたんじゃないの!?」
「私が?いつそんなことを言ったのかしら?」
私も我が家で開くことになるとは思っていなかった。
プレゼントを買いに行った日、ニコラから申し訳なさそうに今日のことを告げられた。
妹が姉の働く家で誕生日のパーティーをやりたいと言い出したらしい。
それはロベリア家からの命令ではなく純粋なお願い。
──断ってくれてもいいと言ってくれたけど……。
ニコラの手紙で私が優しいお嬢様だと思い込んでいる。
これまでずっと会えなかった可愛い妹のワガママ。何としてでも叶えたい気持ちが強く出ていた。
他でもないニコラのお願いだ。聞かないわけにもいかない。
屋敷の使用許可だけは取ってある。
用途は話していない。日にちと使う部屋だけ。
勝手に使えば難癖つけるに決まっているから。
あ、もしかしてお父様も勘違いしていたから許可してくれたのね。
その割に誰も手伝わせなかったけど。
使用人は当てにならないからニコラとヨゼフ、料理長達と屋敷で一番大きな部屋を飾り付けた。
ウォン卿とラード卿から、使用人の何人かがわざとらしく部屋の前を通ると報告を受けて、期待に胸を膨らませてるんだろうなと他人事だった。
聞かれたら誰のために準備しているのかは答えてあげたけど、聞きに来ないんだもん。
関係のないヘレンにわざわざ教えてあげる必要もない。
招待するつもりもなかったし。
それにヘレンのためじゃないとわかったら、せっかく飾った部屋を荒らさね兼ねない。
目的のためなら手段を選ばない人達だ。何らかの妨害があっても不思議じゃない。
招待状はロベリア家から出した。公爵家と縁のある家門と、私が親しくしてもらってる数人の令嬢。
私が何をしても関心を示さない家族に、招待客は不審がる。
同じ家に住んでいながら私が誰のための準備をしていたのか知らないなんてことがあるのか、と。
不幸なことにセツナちゃんとヘレンは誕生日が同じ。毎年祝ってあげていたから勘違いをするのも無理はない。
それでも去年までは、「楽しみにしていて」と声をかけていたのに今年はそれがなかった。
察して欲しい……なんて無理よね。そこまで頭が回るなら、今この場にヘレンが立っているはずもない。
あの青いドレスも私が着ると思って用意したのね。
──人の話を盗み聞きするなんて。
私が青色がいいと言ったのはセツナちゃんに着てもらうドレスのこと。
色んなカタログを見て、それでも青色を選んでしまった。
天使のように可愛いセツナちゃんならどんな色でも似合う。国中のドレスを贈ったら引かれそうだし、世界で一つ、セツナちゃんだけのドレスをオーダーメイドしよう。
勝手に贈ったらニコラに怒られそうだから、事前に話しておく。
主役と被らないように私はシャロンと同じ薄紫のドレスを新調。ニコラは緑色。
他の人にもドレスの件をお願いしたかいがあって誕生会は大成功で終わる……はずだったのに。
ヘレン達は追い出しておくべきだった。これは私のミスだ。トラブルメーカーがいて問題を起こさないはずがないのに。
お父様を言いくるめてレストランを貸切にして食事に出掛けてもらえば良かった。
私が冷たくあしらっていたのに、なぜ祝ってもらえるなんて勘違いしたわけ?
ドレスをお揃いにしたところで仲良しになれるわけじゃない。むしろ自分の評価を落とすとは思わなかったのかしら。
誰も彼もなぜ、この期に及んで私への期待を胸に抱くのかわからない。
私の欲しい愛情という餌を垂らしておけば従順な人形で在り続けるとでも?
たった一度だけでも、それこそ嘘でもいいから「愛してる」と言ってくれたのなら、裏切られ、真実を知った今でもその呪いに縛られ心のどこかで縋っては貴方達のために尽くしたことでしょう。
私を操るための嘘のでも、私のために発してくれた言葉なのだから。
場の雰囲気を悪くしないためにも彼らには出て行ってもらおうか。
「おねーちゃんも誕生日なの?一緒にお祝いしよ」
セツナちゃんの提案にヘレンの顔が引きつった。提案を受け入れるってことは自分が主役じゃなくなるってこと。
特別でありたいヘレンは共同なんて認めない。
断ってもまた良くない噂が流れる。
私が何かしなくてもよさそうね。
プライドと保身。貴女はどちらを選ぶのかしら?
招待客は全員揃っているのに、扉が開いたことにより一斉に視線が集まる。
さっきまで騒がしかったのにヘレンの登場により静まり返った。
きっと、扉を開ける前までは幸せ全開オーラを放ちながら笑顔を絶やさなかったことでしょう。
あの子のことだから、上から目線で、「ヘレン・ローズの誕生日会にようこそ」なんて言おうとしてたのかしら。
つい、笑ってしまうのを我慢する。
主役を差し置いて始めれたパーティーを見て絶句状態。
いくら考えなしの愚か者でもこの状況は理解出来るわよね?聡明なお兄様方。
「嘘でしょ。あのドレス」
「主役気取り?何を考えているのかしら」
「カスト様もハンネス様も注意しなかったのかしら」
「待って。そういえば今日って……」
収集のつかない陰口を止めたのはニコラ。淑女としての立ち振る舞いに一同が察した。
彼女の発言を邪魔してはならないと。
流石は公爵令嬢。勉強になるわ。
「カスト・ローズ様。ハンネス・ローズ様。そしてヘレン・ジーナ令嬢。今日は私の妹、セツナの誕生会にお越しいただき心よりお礼申し上げます」
「妹…?なん、っ……だって今日は私の……!!アリーだって私のために準備してくれてたんじゃないの!?」
「私が?いつそんなことを言ったのかしら?」
私も我が家で開くことになるとは思っていなかった。
プレゼントを買いに行った日、ニコラから申し訳なさそうに今日のことを告げられた。
妹が姉の働く家で誕生日のパーティーをやりたいと言い出したらしい。
それはロベリア家からの命令ではなく純粋なお願い。
──断ってくれてもいいと言ってくれたけど……。
ニコラの手紙で私が優しいお嬢様だと思い込んでいる。
これまでずっと会えなかった可愛い妹のワガママ。何としてでも叶えたい気持ちが強く出ていた。
他でもないニコラのお願いだ。聞かないわけにもいかない。
屋敷の使用許可だけは取ってある。
用途は話していない。日にちと使う部屋だけ。
勝手に使えば難癖つけるに決まっているから。
あ、もしかしてお父様も勘違いしていたから許可してくれたのね。
その割に誰も手伝わせなかったけど。
使用人は当てにならないからニコラとヨゼフ、料理長達と屋敷で一番大きな部屋を飾り付けた。
ウォン卿とラード卿から、使用人の何人かがわざとらしく部屋の前を通ると報告を受けて、期待に胸を膨らませてるんだろうなと他人事だった。
聞かれたら誰のために準備しているのかは答えてあげたけど、聞きに来ないんだもん。
関係のないヘレンにわざわざ教えてあげる必要もない。
招待するつもりもなかったし。
それにヘレンのためじゃないとわかったら、せっかく飾った部屋を荒らさね兼ねない。
目的のためなら手段を選ばない人達だ。何らかの妨害があっても不思議じゃない。
招待状はロベリア家から出した。公爵家と縁のある家門と、私が親しくしてもらってる数人の令嬢。
私が何をしても関心を示さない家族に、招待客は不審がる。
同じ家に住んでいながら私が誰のための準備をしていたのか知らないなんてことがあるのか、と。
不幸なことにセツナちゃんとヘレンは誕生日が同じ。毎年祝ってあげていたから勘違いをするのも無理はない。
それでも去年までは、「楽しみにしていて」と声をかけていたのに今年はそれがなかった。
察して欲しい……なんて無理よね。そこまで頭が回るなら、今この場にヘレンが立っているはずもない。
あの青いドレスも私が着ると思って用意したのね。
──人の話を盗み聞きするなんて。
私が青色がいいと言ったのはセツナちゃんに着てもらうドレスのこと。
色んなカタログを見て、それでも青色を選んでしまった。
天使のように可愛いセツナちゃんならどんな色でも似合う。国中のドレスを贈ったら引かれそうだし、世界で一つ、セツナちゃんだけのドレスをオーダーメイドしよう。
勝手に贈ったらニコラに怒られそうだから、事前に話しておく。
主役と被らないように私はシャロンと同じ薄紫のドレスを新調。ニコラは緑色。
他の人にもドレスの件をお願いしたかいがあって誕生会は大成功で終わる……はずだったのに。
ヘレン達は追い出しておくべきだった。これは私のミスだ。トラブルメーカーがいて問題を起こさないはずがないのに。
お父様を言いくるめてレストランを貸切にして食事に出掛けてもらえば良かった。
私が冷たくあしらっていたのに、なぜ祝ってもらえるなんて勘違いしたわけ?
ドレスをお揃いにしたところで仲良しになれるわけじゃない。むしろ自分の評価を落とすとは思わなかったのかしら。
誰も彼もなぜ、この期に及んで私への期待を胸に抱くのかわからない。
私の欲しい愛情という餌を垂らしておけば従順な人形で在り続けるとでも?
たった一度だけでも、それこそ嘘でもいいから「愛してる」と言ってくれたのなら、裏切られ、真実を知った今でもその呪いに縛られ心のどこかで縋っては貴方達のために尽くしたことでしょう。
私を操るための嘘のでも、私のために発してくれた言葉なのだから。
場の雰囲気を悪くしないためにも彼らには出て行ってもらおうか。
「おねーちゃんも誕生日なの?一緒にお祝いしよ」
セツナちゃんの提案にヘレンの顔が引きつった。提案を受け入れるってことは自分が主役じゃなくなるってこと。
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