愛とケロイド(18禁)

佐藤優

文字の大きさ
1 / 1

愛とケロイド(18禁)

しおりを挟む
雨が止まない。


 僕が運転する車に大粒の雨が打ち付ける。


「雨、止まないね」


 助手席に座るミキが明るく言った。


 ミキとは付き合って半年。ミキは今まで多種多様な男性と肉体関係を持ってきた。ようするに男好きなのである。


 なぜ、僕は男好きのミキを好きになってしまったのか。それは説明できない。好きという感情は勝手に一人歩きをして、悪さをすることがある。まあ、女神様の思し召しということにしよう。


 もちろん、僕から告白した。


 他にも男がいるわよ、とミキ。


 好きだから構わないよ、と僕。


 僕らは付き合い始めた。


 ミキの性格は明るい。母子家庭で母親と二人暮らし。色々と大変だったらしいが、大変な人生も笑って過ごせば楽しいわよ、と母親に言われて育てられ、いつ間にかそんな性格になったらしい。そういえば、ミキの父親のことは聞いたことがない。どんな人なんだろうか。


「ねえ、休憩しましょう」


「どこで」


「いい所があるじゃあない」


 ミキはフロントガラス前方を指さす。雨の影響で良く見えないが、おそらく、ラブホテルの看板だ。見えた。ラブホテル夢殿。田舎臭丸出しの名前。


 僕らは吸い寄せられるように、ホテルの前の小さな駐車場に入った。部屋に入る。消毒液の匂いが、やけに性欲を刺激する。


「さあ、始めましょう」


 ミキが脱ぎ始めた。いつもこうだ。ムードもへったくれもない。


「もうちょっとセクシーに脱いでよ」


「アダルトビデオの見すぎよ」


 ミキはブラジャーを放り投げた。君のような性に奔放な女性が出てくるのがアダルトビデオだよ、と僕は言いかける。


 ミキが近づく。キス。舌が絡む。唇が離れる。


 ミキの胸は大きくないが、小ぶりでもない。張りのあるいい形をしている。そして、左胸の上、鎖骨付近に火傷の跡がある。ケロイド。


 初めてセックスをした後、小さい頃にお母さんが味噌汁をこぼしちゃって、こんな跡が残っちゃった、とミキがあっけらかんと言った。


 僕はみそ汁ぐらいで火傷になんないよ、と言った。そんなやり取りを思い出す。



「触って」


 僕はミキの胸に触れる。僕の手に肌が吸い付く。乳首を吸う。身体がピクンと反応する。ミキが嘆息を漏らした。


 僕はミキの陰部に手を伸ばす。濡れている。彼女はすぐに性的興奮をもよおす。前戯をする必要はなさそうだ。


 僕はミキをベッドに倒した。僕も服を脱ぐ。その間、ミキは僕の陰茎を触る。膨張。僕はズボンを脱ぐ。


 ミキがベッドに置かれたコンドームを手に取る。装着。そして、ミキの陰部に挿入。温かい。ベッドが揺れる。


「ねえ、火傷の跡、気になる」


 セックスの最中、喘ぎながら、ミキが聞いた。


「気にならないよ」


「本当に」


「うん」


 僕は火傷の跡を見た。ミキのきれいな肌がケロイドの部分だけ歪んでいる。ひずみ。ごめん。気にならないというのは嘘だ。年頃の女性の体に痛々しい火傷の跡があるのだ。興ざめする男もいることだろう。でも、人には自分の体で気になる部分は必ずあるはずだ。そう思うと、この傷も受け入れなきゃあいけないと思った。僕はケロイドに手を伸ばした。


 ミキが僕の手を止める。悲しい表情。そこから、二人の手が恋人つなぎになる。僕は火傷の跡に顔を近づけた。舐める。ザラザラする。でも、変な味はしない。ミキの味がする。


「もっと舐めて」


 ミキはいつも以上に興奮していた。僕は舐めながら腰を動かす。ミキは絶頂し、僕も果てた。


 ミキはぐったりとベッドに横たわった。反応しない。今日のセックスは激しかったし、疲れたのかな、そっとしておこう。僕はシャワーを浴びた。


 シャワーを終え、ベッドルームの扉を開けようとドアノブに手をかけた時だった。ミキの鳴き声が聞こえてきた。


 僕はなにか悪いことをしたのだろうか。ケロイド。ミキは触れて欲しくなかったのかもしれない。自分の衝動的行動を戒める。謝ろう。でも、別れに繋がりそうで怖い。扉を開けられない。


 数分が経ち、ミキの鳴き声が止んだ。僕はそっとベッドルームに入る。ミキの眼が赤い。


「ごめん。火傷の跡、気にしていたよね」


「ううん。大丈夫」


 ミキは首を振る。


「今までの男は、気にしない、と言っていたけど、火傷の跡を見なかった。ないものとして扱った。私の一部なのに。でも、あなたは見た。そして、受け入れてくれた。そう思ったら、嬉しかった」


 僕はミキの頭を撫でた。ミキが抱き着く。


「男は嫌い。父親も嫌い。でも、寂しいのはもっと嫌。だから、男とセックスをしてきた。でも、あなたは特別、好き」


 僕らはキスをした。



しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

処理中です...