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ゲーム開始(後編)
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ゲームが始まって数分。
カードの動きは止まり、ただ順番だけが空転していた。
テーブルの外、ひとり立ち尽くす姫川ゆうだけが、その構造を見抜いていた。
脱落者──それが今の彼女の立場。
けれど、ただの敗者で終わるつもりなどなかった。
ゆうはテーブルをゆっくりとまわる。
残った4人の視線は、彼女を気にしながらも、互いに目を合わせようとはしなかった。
そしてゆうは、安藤みことの肩にそっと手を置く。
「ねえ、あなた……もう詰んでるわよね?」
みことがびくりと肩を揺らした。
「あなた、もう出せるカードないでしょ。だって──」
ゆうはその視線をひかりに向ける。
「あの子が止めてるもの」
「はあ!? なにそれっ!」
東條ひかりが声を荒げる。
「ズルでしょそれ! ねえ案内人さん、今の言っちゃダメでしょ!?」
案内人はきょとんとした顔で首を傾げた。
「えっ? いや、ルールには“黙ってなきゃいけない”なんて書いてないけど?」
その返答に、ひかりは顔を真っ赤にする。
「……じゃあ、出してほしいなら──全員、50ポイントずつ寄越しなさいよ!」
場がざわついた。
なるほど、ポイントはこういう風に使うのか。
残りのメンバーが感心する中、とんでもない事を口にする者がいた。
「あら、そんなことしなくても、私が全部引き取ってあげるわよ?」
ゆうが、柔らかく笑った。
「あなたのカード、ぜんぶ。50ポイントでね」
「なっ……! ちょっと待ってよ! そんなの許されるわけ──」
「なにそれ、初めて聞いた!」
案内人が急に大声を出すと、通信機に手を当てた。
「あっ、ゲームマスター? うんうん、今ね、すっごく斬新な提案があって……えっ、いいの? うん、わかった!」
耳から手を離し、パッと笑顔で手で丸をつくる。
「OKでーすっ! カードの無くなったみことちゃんはクリア。ゆうちゃんが引き取ったカードは、ルール上“場に出す”ってことで処理するねっ!」
みことは50ポイントをゆうに支払った。
手札の無くなったみことはトップでクリアとなる。
そして、カードを受け取ったゆうは、黙ってそれらを1枚ずつ場に並べていく。
止まっていた列が動き出した。
そのとき──
「あの……私、もう、勝てないから」
佐々木れんが、ゆうにカードを差し出した。
「引き取ってくれる?」
「もちろん。……でも、30ポイントもらうわ」
れんはうなずき、30ポイントを支払う。
ひかりが怒りを爆発させた。
「……だったら私のも引き取ってよ!!」
だが、ゆうはぴしゃりと言い放つ。
「引き取らないわ。だって私、あなたがカード止めてたせいで負けたんだから」
ひかりは唇を噛み、手札を一気に場に叩きつけた。
「こんなのインチキじゃない!!」
残ったのは、真壁あおい。
ゆうが静かに語りかける。
「もう、あなたもトップは無理よ。ポイント足りないから。このままいくとあなたが最下位ね」
あおいはしばらく目を伏せてから、カードを差し出した。
「……お願い」
「ええ、もちろん。でも、あなたのポイントはいらないわ」
あおいは無言でうなずく。
案内人が満足げに手を叩く。
「はーい! これにて、ポイント七並べ、終了でーすっ! 結果発表~!!」
◆ 最終スコア
プレイヤー名 七並べ順位 持ち点 合計
姫川ゆう 脱落(-50pt) 180pt 130pt
安藤みこと 1位(+50pt) 50pt 100pt
佐々木れん 2位(+30pt) 70pt 100pt
真壁あおい 3位(±0pt) 100pt 100pt
東條ひかり 4位(-30pt) 100pt 70pt
カードの動きは止まり、ただ順番だけが空転していた。
テーブルの外、ひとり立ち尽くす姫川ゆうだけが、その構造を見抜いていた。
脱落者──それが今の彼女の立場。
けれど、ただの敗者で終わるつもりなどなかった。
ゆうはテーブルをゆっくりとまわる。
残った4人の視線は、彼女を気にしながらも、互いに目を合わせようとはしなかった。
そしてゆうは、安藤みことの肩にそっと手を置く。
「ねえ、あなた……もう詰んでるわよね?」
みことがびくりと肩を揺らした。
「あなた、もう出せるカードないでしょ。だって──」
ゆうはその視線をひかりに向ける。
「あの子が止めてるもの」
「はあ!? なにそれっ!」
東條ひかりが声を荒げる。
「ズルでしょそれ! ねえ案内人さん、今の言っちゃダメでしょ!?」
案内人はきょとんとした顔で首を傾げた。
「えっ? いや、ルールには“黙ってなきゃいけない”なんて書いてないけど?」
その返答に、ひかりは顔を真っ赤にする。
「……じゃあ、出してほしいなら──全員、50ポイントずつ寄越しなさいよ!」
場がざわついた。
なるほど、ポイントはこういう風に使うのか。
残りのメンバーが感心する中、とんでもない事を口にする者がいた。
「あら、そんなことしなくても、私が全部引き取ってあげるわよ?」
ゆうが、柔らかく笑った。
「あなたのカード、ぜんぶ。50ポイントでね」
「なっ……! ちょっと待ってよ! そんなの許されるわけ──」
「なにそれ、初めて聞いた!」
案内人が急に大声を出すと、通信機に手を当てた。
「あっ、ゲームマスター? うんうん、今ね、すっごく斬新な提案があって……えっ、いいの? うん、わかった!」
耳から手を離し、パッと笑顔で手で丸をつくる。
「OKでーすっ! カードの無くなったみことちゃんはクリア。ゆうちゃんが引き取ったカードは、ルール上“場に出す”ってことで処理するねっ!」
みことは50ポイントをゆうに支払った。
手札の無くなったみことはトップでクリアとなる。
そして、カードを受け取ったゆうは、黙ってそれらを1枚ずつ場に並べていく。
止まっていた列が動き出した。
そのとき──
「あの……私、もう、勝てないから」
佐々木れんが、ゆうにカードを差し出した。
「引き取ってくれる?」
「もちろん。……でも、30ポイントもらうわ」
れんはうなずき、30ポイントを支払う。
ひかりが怒りを爆発させた。
「……だったら私のも引き取ってよ!!」
だが、ゆうはぴしゃりと言い放つ。
「引き取らないわ。だって私、あなたがカード止めてたせいで負けたんだから」
ひかりは唇を噛み、手札を一気に場に叩きつけた。
「こんなのインチキじゃない!!」
残ったのは、真壁あおい。
ゆうが静かに語りかける。
「もう、あなたもトップは無理よ。ポイント足りないから。このままいくとあなたが最下位ね」
あおいはしばらく目を伏せてから、カードを差し出した。
「……お願い」
「ええ、もちろん。でも、あなたのポイントはいらないわ」
あおいは無言でうなずく。
案内人が満足げに手を叩く。
「はーい! これにて、ポイント七並べ、終了でーすっ! 結果発表~!!」
◆ 最終スコア
プレイヤー名 七並べ順位 持ち点 合計
姫川ゆう 脱落(-50pt) 180pt 130pt
安藤みこと 1位(+50pt) 50pt 100pt
佐々木れん 2位(+30pt) 70pt 100pt
真壁あおい 3位(±0pt) 100pt 100pt
東條ひかり 4位(-30pt) 100pt 70pt
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