昭和官能小説ショートショートショート

露木阿乱

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「積極的に枕営業をする新人女優。気がつけば大きな舞台へと飛翔していた」

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 私は、とある中堅商業劇団の制作部に勤めている。
 制作は、テレビなどではプロデューサーにあたるが、うちの劇団ではチケット販売や集客が主な仕事だった。
 春になると劇団に、新しいメンバーが加わった。と言っても、研究生の男女が数名入団しただけで、特に変わり映えはしなかった。新人たちの顔ぶれを見ても、この中からスターが生まれるとは思えなかった。その中でも、田舎臭さ丸出しの女性がいて、それが目立つ程度だった。ところが、この娘のガッツは桁違いで、劇団のマネージャーにー、テレビや映画の仕事なら何でもやると日参するほどだった。その努力のせいか、次第に彼女に仕事が回ってくるようになった。最初は無名のエキストラだったが、今では、助演クラスの次あたりに、忍という名前が見られるようになっていた。それとともに見違えるほど美しくなり、一年経つ頃には、昔の田舎っぽさは消え去っていた。

 ある夜、マネージャーと話していた時、彼からショッキングな話しを聞いた。あるテレビ局のプロデューサーから話があって、その内容を忍に伝えたら、承諾したというのだ。それは、ホテルへの誘いだった。彼女は、そのような誘いを、ほとんど断ったことがないそうだった。忍には、才能があったのかもしれないが、その突破口を開いたのは、性接待によってだったのだ。心配なことがもう一つあった。彼女の見境いなしの肉弾攻撃を嫌悪する劇団幹部が、忍を追い出そうとしていたことだった。
「あの劇団のメンバーは、肉体で仕事をとっている」と噂になるのは困るのだ。 
 それを聞いて、私は忍が可哀想になった。研究生の中にも劇団員とできているものも多数いた。性にはルーズな業界なのだ。

 しばらくして、ある夜、忍が私のアパートを訪ねてきた。マネージャーから行けと言われたから、と彼女は告げた。その夜、私は忍を抱いた。それから、仕事のない日は、私のところを訪ねてくるようになった。たまには、断れない性接待に出掛けているようだが、そのことを私には言わない。忍は、私のところに来ると、一緒に食事に出かけた後は、二人で風呂に入り、裸で抱き合ったまま寝っていた。ある日、マネージャーがら電話があった。
「今度、連続ドラマのヒロインに決まった」
 その知らせとともに、「お前に任せてよかった」との言葉が続いた。

 彼は私の性格を知っていたのだ。あまり物事にこだわらない、執着心の少ない性格を。彼は、私を忍のための、一次避難所と考えていたのかもしれない。そういえば、これまでにもいく人かの新人達が、少しの間、わたしと暮らし、やがて飛躍して行った。マネージャーは、それを見ていたのだろう。
 その時、ベットの中から忍の甘える声が聞こえた。いずれ、このアパートから出ていく忍を、しっかりと抱いておきたい、と私は思った。
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