不可思議の部屋小物語集

露木阿乱

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「不幸を呼ぶ人」

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 ある宗教家に聞いた話しだ。側から見ていると、同じような不幸を抱えながら、逞しく生きている人と、不幸に負けてしまう人だ。だからと言って、結果が変わるわけではない。同じような結果が訪れることも多い。例えば、同じように家族に不幸が続く人がいるとする。現実にはどちらも不幸だ。しかし、片方は明るく、もう片方は暗く澱んでいる。
 この違いは、神や仏との接し方の違いにある。一方は、信じるものの懐に抱かれ、一方は絶えず、「なぜ」と問いかけ続けているのだ。現実は不幸でも、心はいつも安らぎの中にある人と、神や仏が自分に試練を与え続けていると、不満タラタラの人だ。
 それでは、神や仏を信じ続けている人は助かり、そうでない人は救われないのですか、とたずねた。その宗教家は、「二人とも助かっている」と語った。不満タラタラの人も、不満をぶつけていることで助かっていると教えてくれた。二人とも神や仏を信じているからだ。
「本当の不幸は、信じるものをなくした人だ。信じるものをなくした人は。周りの人に不幸を引き寄せ、辺りを暗闇に包んでしまう」。
 そう言えば、自分の境遇を決して不運と言わない人の家族は明るかった。不満タラタラの人の家族も、「いつも悪く考えてばかりで、幸運が逃げて行きますよね」と笑っていた。
 宗教家は、最後に付け加えた。
「不幸を呼ぶ人がいるんです。私も、その人の抱える闇に、引き摺り込まれそうになったことがあります」
「そんな人に会った時は、どうすればいいのですか」
「近づかないように。そして、心に闇を抱えないこと。闇は闇に引き寄せられてしまいます」
 私は、そんな闇をかかえた人物に出会ったことはないが、他人まで、自分を包む闇に引き摺り込んでしまう人がいるらしい。そう言えば、ある人物と知り合ったことで、それまで善良だった人が、家族を殺してしまった事件があった。これは、サイコパスに洗脳された事件として話題になった。闇に引き摺り込まれてしまったのだ。
 不幸とは、自分の心の中にあるような気がしてきた。
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