グラマラスな女性とガリガリの女性の入れ替わり

ジャンタマオ

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甘い罠と冷たい視線 ― 街で起きた“現実”

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◆ 奈々(中身は元・ガリガリの書店員)
グラマラスな身体に入った奈々は、その日、思い切って“莉子の服”で街に出た。
胸元が大胆に開いたトップスに、体の曲線を強調するスキニージーンズ。足元はピンヒール。

「すごい……こんなに、見られるんだ……」

信号待ちのたびに、男たちの視線が突き刺さる。
すれ違う女たちが、無言で舌打ちする。

露出度の高いファッションも、今の身体だからこそ堂々と着られる。
けれどその視線の中には、ただの“羨望”ではないものもあった。

「……ねえ、そこのお姉さん」

バーの前で声をかけてきた男は、ブランド物のスーツに香水の匂い。
その視線は彼女の胸元から脚へと、まるで商品でも品定めするように動いた。

「一人? どう? ちょっと飲みに――」

「……ごめんなさい」

胸がざわついた。
こんなに美しい身体を手に入れたはずなのに――なぜか怖かった。
“女”として扱われる。見た目だけで、値踏みされる。

(私は……莉子みたいに、こんなふうに生きてたの?)

今まで遠くから眺めていた世界。その裏側の、甘くて危険な誘惑が忍び寄る。

◆ 莉子(中身は元・人気インフルエンサー)
一方、痩せこけた身体に閉じ込められた莉子は、すっぴんで人混みを歩いていた。
オーバーサイズのパーカーにマスク。ヒールも似合わない。鏡に映る自分は、もはや“自撮り”すらできない存在。

「は? おい、前見ろよガリガリ」

駅の改札口で肩がぶつかった男に、舌打ちされた。
昔の自分だったら、黙っていても「ごめんなさい」くらい言ってもらえた。けれど今の彼女には、誰も優しくしない。

「……あの、返品したいんですけど」

服屋の店員に声をかける。だが店員は彼女を見て、明らかに無愛想な態度で言った。

「レシートは? ないと無理ですけど」

(ふざけんな……私、“莉子”だぞ!?)

言いかけた言葉が喉で止まる。
この身体では、何を言っても“ただのガリガリ女”にしか映らない。

隣を歩く女たちが、スマホで自撮りをしていた。そこに自分の居場所はなかった。
莉子は思った。

(奪われた……全部、奪われた。身体も、視線も、存在感も……)

そして、胸の奥に黒い熱が灯る。

(……取り戻す。あの身体も、人生も。絶対に)
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