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“この身体だから”泳げる夏 ――プールに浮かぶ優越と屈辱
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蝉の声が鳴き止まない真夏の午後。
二人の女は、それぞれの身体で、プールサイドに立っていた。
◆ 奈々(中身:元・地味でガリガリだった書店員)
「……これ、ホントに私の体……なんだよね」
パラソルの下で、奈々は水着姿の自分の身体を見下ろして、思わず笑みをこぼした。
胸元が大胆に開いたビキニ。張りのあるバストが水着にぴったりと収まり、くびれたウエストと、丸みを帯びたヒップが美しく映える。
かつては水着すら着たことがなかった――着たくなかった。
でも今は違う。この身体なら、自信を持って晒せる。見られることが快感に変わる。
「わ、すごい……見られてる、私が」
プールの周囲には若い男たちの視線が注がれていた。
すれ違いざまに振り返る者、わざと近くで泳ぐ者。
「……この夏、悪くないかも」
唇にグロスを塗り直しながら、奈々はプールへと足を踏み入れた。
水が、豊かな胸元を冷やす感覚が――快感にすら思える。
(この体が手に入ったなら……戻る必要なんて、どこにもない)
◆ 莉子(中身:元・人気インフルエンサー)
その頃、観客のように隅のパラソルの下に座っていた“莉子”――いや、奈々のガリガリの体に閉じ込められた彼女は、水着に着替えることさえできなかった。
「……無理、着れない……この体じゃ……」
水着の試着室で、服を脱いだ瞬間。
鏡に映った自分のあまりの貧相さに、言葉を失った。
胸はなく、鎖骨と肋骨がくっきりと浮き出し、脚は骨のように細い。
かつては、どんな水着も自信満々に着こなしていた自分。
あの頃の写真をスマホで見返すが、今の身体では“別人の夢”でしかなかった。
プールサイドに出ることすら躊躇し、長袖のラッシュガードを羽織って座っていると――
「ねえ、あれ莉子じゃない?」
「でもガリガリすぎない? 本物?」
視線が刺さる。笑い声が聞こえる。
奈々の姿をした“偽者”は、男たちに囲まれて笑っている。
(やめて……それ、私の身体……私の人生……!)
だけど、誰も気づかない。
誰も、見てくれない。
彼女がどれだけ中身を叫ぼうと、それは“ガリガリな他人の嫉妬”としか受け取られない。
莉子の目には、じんわりと涙がにじんでいた。
◆ プールに咲く“偽りの華”と“沈む本物”
夕暮れ。奈々はバスタオルで体を拭きながら、視線を泳がせた。
(……あそこ。まだいる)
遠くのパラソルの下で、ラッシュガード姿の“自分”がじっと見つめていた。
すれ違いざま、わざと目を合わせる。
「どう? 楽しかったよ、“莉子”としての夏」
“元の自分”が何も言えずに唇を噛むのを見て、奈々は少し笑った。
(もう、戻る気なんてないよ)
それは、誰も知らない、密やかで残酷な優越だった。
二人の女は、それぞれの身体で、プールサイドに立っていた。
◆ 奈々(中身:元・地味でガリガリだった書店員)
「……これ、ホントに私の体……なんだよね」
パラソルの下で、奈々は水着姿の自分の身体を見下ろして、思わず笑みをこぼした。
胸元が大胆に開いたビキニ。張りのあるバストが水着にぴったりと収まり、くびれたウエストと、丸みを帯びたヒップが美しく映える。
かつては水着すら着たことがなかった――着たくなかった。
でも今は違う。この身体なら、自信を持って晒せる。見られることが快感に変わる。
「わ、すごい……見られてる、私が」
プールの周囲には若い男たちの視線が注がれていた。
すれ違いざまに振り返る者、わざと近くで泳ぐ者。
「……この夏、悪くないかも」
唇にグロスを塗り直しながら、奈々はプールへと足を踏み入れた。
水が、豊かな胸元を冷やす感覚が――快感にすら思える。
(この体が手に入ったなら……戻る必要なんて、どこにもない)
◆ 莉子(中身:元・人気インフルエンサー)
その頃、観客のように隅のパラソルの下に座っていた“莉子”――いや、奈々のガリガリの体に閉じ込められた彼女は、水着に着替えることさえできなかった。
「……無理、着れない……この体じゃ……」
水着の試着室で、服を脱いだ瞬間。
鏡に映った自分のあまりの貧相さに、言葉を失った。
胸はなく、鎖骨と肋骨がくっきりと浮き出し、脚は骨のように細い。
かつては、どんな水着も自信満々に着こなしていた自分。
あの頃の写真をスマホで見返すが、今の身体では“別人の夢”でしかなかった。
プールサイドに出ることすら躊躇し、長袖のラッシュガードを羽織って座っていると――
「ねえ、あれ莉子じゃない?」
「でもガリガリすぎない? 本物?」
視線が刺さる。笑い声が聞こえる。
奈々の姿をした“偽者”は、男たちに囲まれて笑っている。
(やめて……それ、私の身体……私の人生……!)
だけど、誰も気づかない。
誰も、見てくれない。
彼女がどれだけ中身を叫ぼうと、それは“ガリガリな他人の嫉妬”としか受け取られない。
莉子の目には、じんわりと涙がにじんでいた。
◆ プールに咲く“偽りの華”と“沈む本物”
夕暮れ。奈々はバスタオルで体を拭きながら、視線を泳がせた。
(……あそこ。まだいる)
遠くのパラソルの下で、ラッシュガード姿の“自分”がじっと見つめていた。
すれ違いざま、わざと目を合わせる。
「どう? 楽しかったよ、“莉子”としての夏」
“元の自分”が何も言えずに唇を噛むのを見て、奈々は少し笑った。
(もう、戻る気なんてないよ)
それは、誰も知らない、密やかで残酷な優越だった。
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