グラマラスな女性とガリガリの女性の入れ替わり

ジャンタマオ

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“莉子として生きる”という悦び

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入れ替わりから、ちょうど三週間が経った。

奈々はもう、“元の自分”の名前すら口にしなくなっていた。

◆ “莉子”としての朝
鏡の前。ブローを終えたばかりの艶やかな長い髪が、肩に柔らかく落ちる。
光の角度で立体的に映える顔立ち。メイクはナチュラルでも、十分に華がある。

(今日の現場は、カフェで撮影か……)

カレンダーには、莉子名義のスケジュールがびっしりと埋まっていた。
「モデル」「撮影」「タイアップ」「打ち合わせ」――そのどれもが、かつての自分には縁のなかった“キラキラした世界”。

だが今、それは“自分の生活”だ。

スマホのロックも、顔認証で開く。
メッセージは、「莉子さんへ」「莉子ちゃん、また撮りたい!」という称賛ばかり。

奈々は小さく笑い、唇にツヤのあるグロスを引いた。

◆ 撮影現場にて
「莉子さん、今日も完璧です! その笑顔、いただきました!」

「やっぱり莉子ちゃんって、空気から違うよね~。オーラがあるっていうか」

スタッフの声。カメラのシャッター音。
自分に向かって何十もの視線とレンズが集中するこの感覚――初めてのはずなのに、不思議と怖くなかった。

いや、むしろ心地よかった。

(この身体って、本当に魔法みたい)

ただ立って微笑むだけで、人を惹きつける。
媚びなくても、自然に男たちの手が差し出される。
この世界は、“外見”がすべてを決める。

そして今、自分はその頂点にいる。

◆ 莉子(中身:本物)は…
その日の午後、ビルの隅で撮影を見つめていたラッシュガードの影――
中身が本物の莉子であるその“細い身体”は、警備員に怪しまれて遠ざけられていた。

「ちょ、違う、私は……!」

だが、声は届かない。

すべては、あの女――奈々が持っていった。
身体も、生活も、名前も、愛される権利も。

◆ “莉子”としての夜
撮影後の打ち上げ。
高級レストランの個室で、奈々はひときわ目立つ存在になっていた。

男たちの視線、シャンパングラスの中に映る美貌、触れられる手――
すべてが、まるで「選ばれた存在」へのご褒美のように降り注ぐ。

「莉子ちゃんって、彼氏とかいるの?」

「……いないよ? 今は、自由を楽しんでるの」

意味深に微笑むと、隣の男の瞳が明らかに揺れた。

(ああ……わたし、“莉子”として愛されてる)

名前も、身体も、人生も、全て手に入れて――もう、奈々は奈々ではない。

◆ そして、決意
夜、自宅のベッド。
スマホを開き、自分のSNSを眺める。

フォロワーは増え続けている。仕事も絶えない。誰も疑わない。

(この人生……絶対に、手放さない)

画面に映った“莉子”の笑顔を見て、奈々はそっと呟いた。

「私が……本物になる」
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