未完成な世界のサバイバル開拓記―UNFINISHEDWORLD―

ヤササヤ

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第1章 そんなはじまりの物語

01 そんな出会いの物語

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〈セットアップが完了しました。〉

その声のとともに意識を感じた。けれどもまだ意識は朦朧としている。

すると少ししか聞いていないはずなのに懐かしいように感じるノナの声が聞こえてくる。

「あ、目が覚めたんですね。よかったです。」

まだあたふたとしている思考から言葉を申し訳程度に絞り出す。

「すいません。寝落ちしていたっぽいです。」

「熱中症ですかね…まあ、とりあえず他の人が集まっているんで来てもらえますか。」

「それじゃあ、すぐに行きます。」

ボーッとしていた体を叩き起こし、懸命に彼女の背中を追った。

その最中にも、ウィンドウがしつこいぐらい光っている。

しばらく歩くと、意識がはっきりとして来るが元通りとは言えない。

数百メートル歩いたところで向こう側から二人の人影がこっちに向かって手を振っている。

「ノナさん、ダバルさん、こっちです。」「やっとやな、待っとったで。」

片方の男の人の方はおとなしい感じだけど、あの女の人嫌な予感が背中に走る。

なんとなく、走ったほうがいい気がして思わず走り出す。

「ちょ、ちょっと、急に走るのやめてもらえます?」

そんなノナさんの声も気にせず、無我夢中に走り出す。

…… さすがに置いていくのは駄目だったかな?

そう思い足を止めると、それに気付かずにノナさんは横を颯爽と駆け抜ける。

「結局、走ってるじゃないですか!」

その声に気づきノナさんは足を止める。けれども僕の足は止まらない。

そして、「ザッポーン」と足の着かないぐらいの池に突っ込んでいた。

「全く、どこに向かって走っているんや。真っ反対やで。」

急いで走ってきた女の人に助けてもらい、やっと合流した。

------------------------------------------------------------------------

「自己紹介でもしますか。」

全員が黙り込んでいると、おとなしい感じの男の人が先手を打ってきた。

「僕からいきますね。キャラクターネームはチェドで、ネクストネームは奇跡の羽。

元の世界では、記者でした。体力は無いけれど知識は多い方だと思います。」

黒縁眼鏡で背は170前後で青髪の信用できそうな人だ。

「あのー。」

「どうしました?ノナさん。」

「七の掟にプレイヤーの現実の情報を、流出、利用する事を禁じる。ってありますけど、元の世界の職業を言って大丈夫なんですかね?」

「まあ、大丈夫でしょう。多分ですけど。」

意外といい加減なところもあるようだ。

「まず、七の掟って何ですか?」

「ダバルさん起きたばかりでしたね。黄色いウインドウがでていませんか?」

たくさん開かれている青いウインドウをのけ黄色いウインドウを探した。

「ありました。これですよね?」

「ウインドウは他の人にはみえへんよ。」

これは結構恥ずかしい。顔が赤くなっていなかったらいいけど。



七の掟  最低限の秩序を保つため、七の掟を立てることとする。

 また、この掟を破った場合現実世界への帰還ができない場合があります。



一,プレイヤーの現実の情報(名前や偽名等の個人を特定する情報)を、流出、利用する事を禁じる。

二,プレイヤーの死体を意図的に傷付ける事を禁じる。

三,CPUを武力等によって拷問する事を禁じる(NPCは可)

四,システム上のバグを利用する事を禁じる。

五,権限を超越した行為を禁じる。

六,身体で他人を傷付ける事を禁じる。(手袋、靴等を通してなら可)

七,一人一人が、〈変革〉を目指して行動すること。



以上の掟をGMアランタルナーの名において制定する。



「普通に名前や偽名等の個人を特定する情報って補足入ってません?」

「私たちはもうウインドウを閉じてしまったからわかりませんけど、後から追加されたのかもしれませんね。」

「でもせやったらウインドウ残しとったほうが有利ちゃうか?」

「だからと言ってウィンドウを残したままだとぐちゃぐちゃになりそうなんで、一長一短ですね。」

女性たちの独特なふいんきのある話をチャドさんはうなずきながら聞いている。



「次、いきますね。キャラクターネームはノナ、ネクストネームは時の願いです。

現実世界ではカウンセラーをしていました。宜しくお願いしますね。」

「それにしても奇跡の羽といい、時の願いといい、厨二っぽいネクストネームやな。」

「そうですか結構洒落乙な気がしますけどね。」

とノナさんは皮肉を感じさせない口調で言う。

「ノナさん意外とセンスが男寄りですね。」

「ちょっと、ダバルさんそれどういう意味ですか?」

やばい結構怒っている気がする。

「そのままの意味ですよ、決して他意はありません。」

「中二病っぽいとかいうことではないんですね?」

これで厨二だというのなら、某フリーローグライクゲームの二つ名を大学生にもかかわらず

二時間もかけていたおれは、魔王か何かだろうか。

「本当ですよ。」

「そうですか。次からは言葉に気をつけるようにしてくださいね。」

「はい、肝に銘じておきます。」

「ていうか、そのままの意味でもアウトやな。」

「ですね、僕も気を付けないと。」

今までよく聞き手に回っていたチェドは何か思い当たる節でもあるのか、どこかと遠くを見ていた。
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