上 下
71 / 73
第二章

63

しおりを挟む
 「……すまない、君という姫君の騎士としてはいつまでも護り抱きしめていたいが……判るな? 今はもう一人のやんちゃな姫を追わねばならない……」
 俺はネメシスを抱きしめながら頭を撫でる……
 「……ええ、情けない所をお見せいたしましたわ……わたくしはもう大丈夫です……」
 「先ほどの俺もそうだしお互い様だ。寧ろもっと弱さも見せて欲しいが……すまんな」

 ……改めて時間停止している迷宮を見る。
 「……これでわたくしも2回目の体験ですが、改めて不可思議な技能ですわね……悪意を察知して時間停止とは旦那様は実質的に無敵なのでは?」
 ネメシス達には俺の技能の大体の概要を教えてある。
 「いや、そういう事はない……緊急停止しても回避の出来ない広範囲の攻撃を受けるとアウトだろうし、上に飛べる訳でもないから数十メートルの穴に落とされての攻撃でも駄目だろうしな……悪意を感じないだろう設置罠や毒などにも未知数だし……あくまで日常範囲の危険回避だけさ」
 「日常ではそのような攻撃を受ける事があり得ませんが……今はともかく、ウェンティさんを追いましょう! 旦那様、この空間内での攻撃魔法の使用は?」
 「そういえば試した事がないな……弓や剣での攻撃は出来るのだが」
 ネメシスは壁から襲い掛かってきていた触手にめがけ詠唱し始める。

 「……我が前を遮る敵を爆砕せよ、エクスプロージョン!」
 
 ネメシスの杖から十数発? の炎が出たと思ったら、次々と周りの触手が爆発していくっ! 時間停止している空間なので彼奴等の破片が飛び散る事もなく、迷宮の先50mほどか? がすっかりと焼け焦げ、ウェンティが曲がっていった角までの道を切り開いた……ガクブル……改めてネメシスとは夫婦喧嘩をしないようにしないとな……。
 「回避出来る範囲は半径10mらしいですが、魔法の効果範囲には影響ないみたいですわね……わたくしが常時旦那様と密着していれば、広範囲の攻撃でも相殺して交わせますわね♪」
 そういって胸を密着させてにこりと笑う。
 「魅力的な提案だが、君と密着していると色々と我慢が出来なくなってしまいそうだ……アテナたちの目もあるしほどほどで頼むよ……今はこれで……っと、今俺の口は汚れているしな、キスも色々終わってからだ」
 「ふふっ、もう……折角のいい雰囲気でしたのに♪」
 先程のショックはもう引き摺ってないようだ……改めて俺たちはウェンティの後を追う。

 ウェンティが角を曲がったのは先ほどから(時間停止してたし)1分もかかってない筈だ……だが角を曲がると既にその先に彼女の姿はなかった。
 相変わらず触手の攻撃や先ほどの顔からの呪文攻撃が来るが……落ち着きを取り戻したネメシスがしっかりと対処をする。幸いこいつらは一階の触手の様に直ぐ再生が始まる、という事はなさそうだ。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...