始まりの魔女と

あるまん

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第一章

第1話

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 勇者達を裏切り、魔王様の元へ付いてから早数カ月……戦いは既に魔族と人類の全面戦争と化し、幾千もの命が失われ、領土は毎日の様に塗り替わり、戦況は混迷の一途を辿っていた。

 幾多もの禁書を集めた秘密書架……王国禁書室の蔵書を遥かに越え、魔道書grimoireより希少且つ禁忌な魔導書Old Onesの力により亜空間と化し、である私にも既に全容など解からなくなっている。

「魔導書の配置が変わっていますね……」
 無論隠蔽はしてある。だが其れが「完璧」過ぎて却って解り易くなっている。私は溜息を一つ、直ぐ追跡魔法で「犯人」を炙り出し、目の前に「強制出頭」して貰った。

「わわっ!」
 ドスンという音と共に、コソ泥は目の前の床に尻もちを突く形で出現する。箒の前後に乗った書籍は……ひのふのみ、一度に持って行き過ぎでしょ……だから追跡魔法で直ぐ御用になるのよ。

「や、やぁ……久し振りだねっお嬢さんFäulein♪ 相変わらず吸い込まれる様な海の色の様なaquamarine瞳とキュートな金色の巻き毛だ。この間は風邪をひいていたようだが、快癒したかね?」
「御蔭様で。でも先程から又頭が痛いのです。何処の誰かは知らないけれど、性懲りもなく月に一度は我が書架にやってきて貴重な蔵書を盗んでいく泥棒鼠の処罰を考え過ぎた所為でしょうか?」
 私は持っている世界樹Yggdrasillの杖を大袈裟に振り、幾つもの火球を発生させる。其の1つ1つが鼠のローストを作るには充分だ。
「やだなあ、貴重な魔導書が眠る書架で火気は厳禁じゃないのかね?」
「安心して下さい、是は「特別製」です。
 光栄に思っても良いのですよ、この
「ミストレイジの奇蹟」
「智を司るもの」
「若き万能」
「絶対零度」
「死の風」
「子ネコちゃん」
 な私が貴方の為に練り上げた魔法ですので」
「最後のはワタシが付けた渾名でぎゃああああああああああっつううううううううううい!!」

 ま、勿論本気で燃やし消したりなどしない。鼠の魔法結界は其れなりで、其れを貫通する火力だけで書は勿論辺り数キロは焦土と化すだろう。
 ……鼠は鼠なりに利用方法がある。血生臭いカーペットを駆け回り混乱を誘発するのも、少しばかり面倒な勇者の命の残量を擦り減らすのも……私の夜の戯れの相手も。まだまだ燃やし尽くすのは惜しい。

「そ、其の割にっ! 今のは殺気を感じたよっ!」
「あら、丁度良い具合に野暮ったい服だけ燃えましたね。仕方ありません、高貴な私のドレスを貸してあげましょう。ついでにこの様な時に丁度良い道具を仕入れましたの。今宵も……良い具合に、哭いて下さるのかしら?」

 泣き喚く彼女を尻目に、私は彼女の為に仕立てた「奴隷守dress」をクローゼットから取り出した。
「全く……幾多の知を求める愚か者の侵入を悉く防いできた私の書架に簡易に入れる癖に、其れなりの火力で燃やしても無傷な癖に、逃げようともしないなんて……試されてるのは、実は私かしら……?」
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