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得体の知れない懐かしさ

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夕方、武道場を出て四人は駐輪場に向かった。
亜香里は普通の自転車、真紀理はハンドルがT状のスポーツ車を引っ張り出した。

「トマトちゃんの自転車カッコイイね」

香織が見入った。

「わたしこういうのじゃないと乗れないから」

沙織は「じゃ。うちらバイクだから」

「え?」

亜香里が無表情に言った。

「お不良なのですか」

「なんでよ!」

香織がすかさずツッコんだ。

「お不良?あははははは」

沙織のツボをよそに亜香里は天然の勘違い続けた。

「バイクで蛇行運転とかいけないと思います」

「誰が蛇行運転とかするの。もう…」

一瞬呆れたが思い直した香織が亜香里の目を見てに言った。

「武道女子はそういうことしないから」

ハッとした亜香里は慌てて「すみません。アネゴ!」頭を下げた。

「アネゴ?」

「いいよ。いいよ。オモシロいよ。うん」

「じゃあね。地井頭ネエさん」

「はいはい」

香織と沙織はバイクに荷物を乗せ、エンジンをかけた。

「じゃあ」

2人が走り去る。

呆気にとられた真紀理は「カッコイイ!」
しかし亜香里はなぜどうやって香織が己の剣をいや切り付けの腕を取ったのか考えていた。

あの体捌き…女子でも無刀取りができるものなのか…凄い…

リトルカブを走らせる香織も亜香里の抜刀が気になった。
女子の抜き出す剣。
なんとも言えない感覚。
それは得体の知れない懐かしさとしか言いようのないものだった。
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