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後輩との稽古

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「わたしは合気道なるものを稽古したい」

そう言ったのはメガネをとった亜香里だ。

「わたしは地井頭ネエさんの詠春拳が習いたいな」

と、真紀理は沙織に笑顔を向けた。

「じゃ、別れてやってみようか」

「そだね。とりあえず」

香織は袴道着、沙織はチャイナ服に着替えた。

「地井頭ネエさんチャイナ服似合ってるぅ」

「ありがと」

沙織はそっけなく答えた。
一方で香織は黒い居合道着を見て亜香里に聞いた。

「それ、なんか履いてる?」

亜香里の袴を見て言った。

「袴の下にか?笑止。すでに袴を履いているのにその下になにを履く?居合ではせいぜい膝当てくらいだ」

「あのね。受け身を取るとき中見えちゃうから」

「なに?もう一度言ってみよ!」

「いやだから袴は裾が広いから回転受け身したら見えちゃうって。もう一度言ってみよって、聞こえるでしょこの距離」

「うぬ…まあよい危うく武士の恥を晒すところ。礼を言う」

いや武士じゃくて女子だからだろ…

香織は心の中でツッコんだ。

沙織は真紀理に詠春拳を立ち方から教えていた。

「内股なんだ。女子っぽい」

「まあ尼さんが作った拳法だけど。男もやるから」

「そうなんだ。か弱いわたしに合ってるかも」

「知らんけど。じゃ突きからやるよ」

見よう見まねで真紀理は沙織の突きを模倣する。

「違う違う。腰ひねらない」

「え?」

言われたとおりに腰にをひねらずに突くと今度は肩が出る。

「ほら、肩も出しちゃダメ」

「え?それでどうやって威力を出すの?」

「やってけば出てくるから。まず最初は動かないことを学ぶの」

「キックボクシングと全然違う…」

亜香里は片足を蹴り出してジャージの裾を香織に見せた。

「履いてきたぞ」

「じゃとりあえず礼から」

亜香里と香織は互いに正座で向き合い、両手をついて頭をさげた。

「お願いします」

「お頼み申す!」

香織、その言葉で思わずサッと頭を上げて亜香里をじっと睨んだ。

「まあいいや。全部言ってたらキリがない」

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