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私達の前世

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「なんで自分だけピンクの着物なの?そんな武士いないから」

昼休みの学校の屋上で香織は夢とまったく同じことを言った。

「あはははははは。夢と同じこと言ってる~。オモロ」

「それに人斬りはあんたでしょ!」

「え?なんでなんで?」

「人斬り地井頭って世に知らしめたのはおぬし」

「なんでよ。香織が自分で名乗ったんでしょ。自己責任だから」

「いやいやいやいや。沙織だから人斬りは」

「だからなんでよ!なんでわたしを人斬りにしたがってるの?」

「もっと深い夢みなよ。もっと真実に近づいた夢」

沙織は目を細めた。

「あんたなんか知ってるの?」

香織は沙織の目をじっと見て言った。

「それはおそらく私達の前世…」

「前世…?」

一瞬キョトンとした沙織だったがすぐに笑い出した。

「あはははははは。なにを言い出すかと思ったら…」

「…」

香織は表情を崩さずにじっと沙織を見つめている。

「冗談でしょ?」

香織は静かに首を横にふった。

「え?本気のやつ?」

香織はしっかりとうなづいた。

「え?ちょっと待ってどういうこと?なんで私達のって言い切れるの?」

「じつはね…」

香織は口をつぐんで考えた。

「いや今全部話すよりも夢の続きを見てよ。それで話すから」

「わたしの夢を聞いてから話のつじつまを合わせようって魂胆ね」

「違う違う。うーん。じゃあこうしよう。明日までにメールに前世のことを書いておくから。それを明日夢の続きが見れた話を教えてくれる直前に送る。で、夢の内容を聞いたらメールを確認すればいいじゃない」

沙織は腕を組んで考えにふけった。

「いいでしょ。フェアで」

「いいけどさ…」

「まだなにか?」

「わたしの前世ってお侍なの?美少女戦士だと思ってたのに」

「それは絶対ないから」

「なんでよ!ムカつく!」
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