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春物語
3人からの説得
俺の提案を後押しするかのように、突然ベッドを囲っていたカーテンの隙間から、莉乃が嬉しそうに顔を出して言った。
「莉乃、読んでみたい!葵葉ちゃんが書く神耶君の物語、莉乃読んでみたい!!」
「莉乃?どうしてここに?」
「葵葉ちゃんの事が心配で、沢田先生と一緒に様子を見に来たの」
俺の質問に、莉乃はそう言ってカーテンをパッと開けると、莉乃の後ろに立っていた沢田の姿が覗いた。
「沢田まで?! 今の話聞いてたのか? 二人ともいつからそこにいたんだよ?」
「神耶君との思い出を物語にしてみませんかってあたりから」
「なんだよ、いたならもっと早く声かけろよ。恥ずかしい」
「ねぇ葵葉ちゃん、神耶君との物語、描いて描いて! 莉乃ね、絵本が良いな。描いてくれるなら莉乃でも読める絵本が良い!」
俺と沢田の会話などそっちのけに、莉乃が葵葉さんのベッドに乗り込んで懇願した。
当の葵葉さんはと言えば、少し困った顔で、「でも」と言った。
「でも? どうした?」
沢田が優しい口調で問いかける。
「でも……ただでさえ神耶君の顔が描けないのに、それを更に物語にするなんて……」
「完璧に描こうとしなくても良いんじゃないですか。思い出せない所は自分なりに脚色したって良い。ただ、忘れたくないのに忘れてしまう、その事が苦しいなら、今覚えてる限りの事柄だけでも形に残さないと。この先もっともっと忘れてしまいますよ」
「……祐樹君……」
沢田に溢した葵葉さんの不安を聞いて、俺は俺なりの考えを伝えてみる。
「葵葉、描いてみろよ。既に“神耶君”のファンが一人ここにいるわけだし」
沢田も、俺の提案を援護してくれるように、葵葉さんのベッドの上の莉乃の頭をポンポンと叩いて言った。
「うん、莉乃ね、神耶君の話聞いて、頑張ろうって勇気貰ったよ。だから、真理ちゃんとか祐君とか、一緒に病気の治療頑張ってる子達にも神耶君の事教えてあげたい!だから葵葉ちゃんお願い、神耶君の絵本描いて! お願いー!!」
最後は莉乃からの必死の懇願に、葵葉さんはついにうなずいた。
「……うん、わかった。私、描いてみる。神耶君との思い出を、絵本にしてみる」
「ホント?!やったーーー!!」
やっと返ってきた承諾の返答に莉乃は葵葉さんのもとへ抱きついて喜んだ。
「莉乃、読んでみたい!葵葉ちゃんが書く神耶君の物語、莉乃読んでみたい!!」
「莉乃?どうしてここに?」
「葵葉ちゃんの事が心配で、沢田先生と一緒に様子を見に来たの」
俺の質問に、莉乃はそう言ってカーテンをパッと開けると、莉乃の後ろに立っていた沢田の姿が覗いた。
「沢田まで?! 今の話聞いてたのか? 二人ともいつからそこにいたんだよ?」
「神耶君との思い出を物語にしてみませんかってあたりから」
「なんだよ、いたならもっと早く声かけろよ。恥ずかしい」
「ねぇ葵葉ちゃん、神耶君との物語、描いて描いて! 莉乃ね、絵本が良いな。描いてくれるなら莉乃でも読める絵本が良い!」
俺と沢田の会話などそっちのけに、莉乃が葵葉さんのベッドに乗り込んで懇願した。
当の葵葉さんはと言えば、少し困った顔で、「でも」と言った。
「でも? どうした?」
沢田が優しい口調で問いかける。
「でも……ただでさえ神耶君の顔が描けないのに、それを更に物語にするなんて……」
「完璧に描こうとしなくても良いんじゃないですか。思い出せない所は自分なりに脚色したって良い。ただ、忘れたくないのに忘れてしまう、その事が苦しいなら、今覚えてる限りの事柄だけでも形に残さないと。この先もっともっと忘れてしまいますよ」
「……祐樹君……」
沢田に溢した葵葉さんの不安を聞いて、俺は俺なりの考えを伝えてみる。
「葵葉、描いてみろよ。既に“神耶君”のファンが一人ここにいるわけだし」
沢田も、俺の提案を援護してくれるように、葵葉さんのベッドの上の莉乃の頭をポンポンと叩いて言った。
「うん、莉乃ね、神耶君の話聞いて、頑張ろうって勇気貰ったよ。だから、真理ちゃんとか祐君とか、一緒に病気の治療頑張ってる子達にも神耶君の事教えてあげたい!だから葵葉ちゃんお願い、神耶君の絵本描いて! お願いー!!」
最後は莉乃からの必死の懇願に、葵葉さんはついにうなずいた。
「……うん、わかった。私、描いてみる。神耶君との思い出を、絵本にしてみる」
「ホント?!やったーーー!!」
やっと返ってきた承諾の返答に莉乃は葵葉さんのもとへ抱きついて喜んだ。
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