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第一幕 板東編
いざ、板東へ!
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「そんな事より、どうだ秋成?」
「? どうだとは、何がでございましょう?」
「この髪型じゃ!」
「はぁ。まぁ……似合っているんじゃなでいすか?」
「何じゃその適当な答えは!」
「……と言われましても……」
「他には何かないのか?」
「…………何か……とは?」
「だから何か感想はないのか?」
「………はぁ。まぁ……姫様らし――」
「あ~~~~~!千紗姫様、何故そんな奴が乗る馬に? 千紗姫様がその馬に乗ると言うのならば私も乗せて下さい。おい、秋成! 私もその馬に乗せろ!!」
秋成が何やら言いかけた言葉を遮って、突然に朱雀帝が二人の元に駆け寄って来て騒ぎ出す。
またうるさいのが来たと、秋成は小さくため息をついた。
「………はぁ」
「その溜息は何だ?! 私を馬鹿にしているのか? いいから私もその馬に乗せろ!」
「……」
「おい、聞いているのか? 私も千紗姫と共にお前の馬に乗せろ!」
「……」
完全に朱雀帝の相手ををする事が面倒になったらしい秋成。無視を決め込んで決して返事をしようとはしなかった。
流石に朱雀帝を哀れに思ったのか、秋成に代わって千紗が朱雀帝に向けて声を掛ける。
「チビ助、もう"我"は止めたのか?」
「旅の間は、"私"と呼ぶように。と、忠平に言われたので。……それより千紗姫様、私もその馬にっ……」
「すまぬな、お前は他の馬に乗ってくれ。これ以上乗っては馬が可愛いそうだ」
「ならば秋成が下りろ! 私が千紗姫様と乗る!」
「嫌じゃ、千紗は秋成とが良い」
「そっそんなぁ、千紗姫様~~」
今度は千紗にまで邪険に扱われて、朱雀帝の瞳はみるみる涙に染まって行く。
そこに今度は、貞盛が口を挟んで言った。
「では帝、貴方様は是非私の馬に」
「嫌だ! 姫様とが良い。私は姫様とが良いのだ……」
まるで幼子のように駄々を捏ね続ける朱雀帝。
国の最高権力者である帝の駄々っ子に、どうしたものかと貞盛が対応に困っていると、事の収束に向けて忠平が一言助言を下した。
「帝、出発前からそのような我が儘を申されるようでしたら、やはり今回の旅は………」
「嫌じゃ……それも嫌じゃ……」
「では、どうすれば良いか、分かりますよね?」
「…………」
忠平の脅しにも似た助言に、やっと大人しくなった朱雀帝は、むくれた顔で頷いた後、貞盛の手を借り彼が操る馬へと乗った。
「では千紗、帝、くれぐれも……気をつけて……」
「はい、父上。行って参ります。父上も千紗が留守の間、くれぐれもお体にはお気をつけ下さい」
「あぁ」
忠平に見送られながら、千紗と朱雀帝。それから護衛を任された秋成、清太、春太郎。案内役の貞盛にそれから身の回りの世話係として同行するヒナの計7人は、秋も深まりはじめた九月のある日に、朝日が昇り初めたばかりの静かな京の街を、ひっそりと旅立って行った。
小次郎が待つ、坂東へ向けて。
「? どうだとは、何がでございましょう?」
「この髪型じゃ!」
「はぁ。まぁ……似合っているんじゃなでいすか?」
「何じゃその適当な答えは!」
「……と言われましても……」
「他には何かないのか?」
「…………何か……とは?」
「だから何か感想はないのか?」
「………はぁ。まぁ……姫様らし――」
「あ~~~~~!千紗姫様、何故そんな奴が乗る馬に? 千紗姫様がその馬に乗ると言うのならば私も乗せて下さい。おい、秋成! 私もその馬に乗せろ!!」
秋成が何やら言いかけた言葉を遮って、突然に朱雀帝が二人の元に駆け寄って来て騒ぎ出す。
またうるさいのが来たと、秋成は小さくため息をついた。
「………はぁ」
「その溜息は何だ?! 私を馬鹿にしているのか? いいから私もその馬に乗せろ!」
「……」
「おい、聞いているのか? 私も千紗姫と共にお前の馬に乗せろ!」
「……」
完全に朱雀帝の相手ををする事が面倒になったらしい秋成。無視を決め込んで決して返事をしようとはしなかった。
流石に朱雀帝を哀れに思ったのか、秋成に代わって千紗が朱雀帝に向けて声を掛ける。
「チビ助、もう"我"は止めたのか?」
「旅の間は、"私"と呼ぶように。と、忠平に言われたので。……それより千紗姫様、私もその馬にっ……」
「すまぬな、お前は他の馬に乗ってくれ。これ以上乗っては馬が可愛いそうだ」
「ならば秋成が下りろ! 私が千紗姫様と乗る!」
「嫌じゃ、千紗は秋成とが良い」
「そっそんなぁ、千紗姫様~~」
今度は千紗にまで邪険に扱われて、朱雀帝の瞳はみるみる涙に染まって行く。
そこに今度は、貞盛が口を挟んで言った。
「では帝、貴方様は是非私の馬に」
「嫌だ! 姫様とが良い。私は姫様とが良いのだ……」
まるで幼子のように駄々を捏ね続ける朱雀帝。
国の最高権力者である帝の駄々っ子に、どうしたものかと貞盛が対応に困っていると、事の収束に向けて忠平が一言助言を下した。
「帝、出発前からそのような我が儘を申されるようでしたら、やはり今回の旅は………」
「嫌じゃ……それも嫌じゃ……」
「では、どうすれば良いか、分かりますよね?」
「…………」
忠平の脅しにも似た助言に、やっと大人しくなった朱雀帝は、むくれた顔で頷いた後、貞盛の手を借り彼が操る馬へと乗った。
「では千紗、帝、くれぐれも……気をつけて……」
「はい、父上。行って参ります。父上も千紗が留守の間、くれぐれもお体にはお気をつけ下さい」
「あぁ」
忠平に見送られながら、千紗と朱雀帝。それから護衛を任された秋成、清太、春太郎。案内役の貞盛にそれから身の回りの世話係として同行するヒナの計7人は、秋も深まりはじめた九月のある日に、朝日が昇り初めたばかりの静かな京の街を、ひっそりと旅立って行った。
小次郎が待つ、坂東へ向けて。
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