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第一幕 板東編
国の成り立ち
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「姫さんは、この国がどうやって出来たか知ってるか?」
「……国が? ……知らぬな。考えた事もなかったぞ」
「この国はね、高天原と呼ばれる神々の住まう地より、イザナギとイザナミの夫婦が降り立ち、生み出された国だと、この国の歴史書は伝えているんだ」
「神が生み出した国?」
「そう。そしてイザナギとイザナミ夫の夫婦は、国だけでなく、人の形を成した子をも産み落とした。その子供がまた子供を産み――そうして始まったのが今の天皇家だと言われている」
「……待て!?と言う事はつまり、天皇家とは神の一族なのか?!」
「その物語では、そう描かれている」
「神の……一族……」
驚きを漏らしながら、千紗はちらりと朱雀帝をみた。
朱雀帝はと言えば、少し離れた位置から、真剣な眼差しを四郎へと向けていた。
朱雀帝もまた、四郎の話を興味深げに聞き入っている、そんな様子だった。
「この国が血筋を重んじる理由はそれだ。神と敬って来た天皇家と、その天皇家に古より仕えてきた家臣、それが今の上流貴族に名を連ねる家系なんだけど、彼らの自信と誇りが今尚、血筋を何よりも重んじる風習として残っているんだ。裏を返せば風習とは、古より伝わる伝承を先人達が今の世まで大事に守り、受け継いで来た証でもある。凄いと思わない? 何百年と言う間、ずっと守り続けているなんて。国の風習や仕来たりとは、つまりこの国の歴史そのものなんだよ。その歴史までもを、俺は否定したいとは思わない」
「……国の……歴史?」
「そう、歴史だ」
「…………ならば四郎は、今のまま、血筋だけを重んじて、お主達のように自らの力と知恵で財を成した者達を蔑ろにする今の風習のままで良いと申すのか? 確かに天皇家や、上流貴族の先祖達は偉大な事を成し遂げて来たのかもしれない。だが今の貴族達は、先祖の功績にただあぐらをかいているだけの者達ではないか。風習に固執してばかりいないで、お主達のように努力や才能で財を成した者達を認め、そう言った新しい風を朝廷に取り入れる事も大切ではないか?」
「そうだな。古き時代の風習や仕来たりを大切に守り受け継いで行く事、それも大切な事なんだと俺は思う。……けど、姫さんの言う通り、ただ守って行くだけじゃダメなんだとも思う。良い所は残して、悪い所は正していかなくちゃ。そうやって歴史は少しずつ、動いて来たんだ」
四郎から得られた同意に、千紗は満足気に頷く。
四郎は、今のこの国の現状を風習だからと諦めていたわけでは決してなく、現状を把握しながら、しっかりと変革をも見据えていた事を確認出来たから。
「うむ、それでこそ四郎じゃ!ではやはり、このまま大人しくしているつもりはないと言う事だな」
千紗の問い掛けに、四郎はニヤリと意味深な笑みを浮かべみせた。
「……国が? ……知らぬな。考えた事もなかったぞ」
「この国はね、高天原と呼ばれる神々の住まう地より、イザナギとイザナミの夫婦が降り立ち、生み出された国だと、この国の歴史書は伝えているんだ」
「神が生み出した国?」
「そう。そしてイザナギとイザナミ夫の夫婦は、国だけでなく、人の形を成した子をも産み落とした。その子供がまた子供を産み――そうして始まったのが今の天皇家だと言われている」
「……待て!?と言う事はつまり、天皇家とは神の一族なのか?!」
「その物語では、そう描かれている」
「神の……一族……」
驚きを漏らしながら、千紗はちらりと朱雀帝をみた。
朱雀帝はと言えば、少し離れた位置から、真剣な眼差しを四郎へと向けていた。
朱雀帝もまた、四郎の話を興味深げに聞き入っている、そんな様子だった。
「この国が血筋を重んじる理由はそれだ。神と敬って来た天皇家と、その天皇家に古より仕えてきた家臣、それが今の上流貴族に名を連ねる家系なんだけど、彼らの自信と誇りが今尚、血筋を何よりも重んじる風習として残っているんだ。裏を返せば風習とは、古より伝わる伝承を先人達が今の世まで大事に守り、受け継いで来た証でもある。凄いと思わない? 何百年と言う間、ずっと守り続けているなんて。国の風習や仕来たりとは、つまりこの国の歴史そのものなんだよ。その歴史までもを、俺は否定したいとは思わない」
「……国の……歴史?」
「そう、歴史だ」
「…………ならば四郎は、今のまま、血筋だけを重んじて、お主達のように自らの力と知恵で財を成した者達を蔑ろにする今の風習のままで良いと申すのか? 確かに天皇家や、上流貴族の先祖達は偉大な事を成し遂げて来たのかもしれない。だが今の貴族達は、先祖の功績にただあぐらをかいているだけの者達ではないか。風習に固執してばかりいないで、お主達のように努力や才能で財を成した者達を認め、そう言った新しい風を朝廷に取り入れる事も大切ではないか?」
「そうだな。古き時代の風習や仕来たりを大切に守り受け継いで行く事、それも大切な事なんだと俺は思う。……けど、姫さんの言う通り、ただ守って行くだけじゃダメなんだとも思う。良い所は残して、悪い所は正していかなくちゃ。そうやって歴史は少しずつ、動いて来たんだ」
四郎から得られた同意に、千紗は満足気に頷く。
四郎は、今のこの国の現状を風習だからと諦めていたわけでは決してなく、現状を把握しながら、しっかりと変革をも見据えていた事を確認出来たから。
「うむ、それでこそ四郎じゃ!ではやはり、このまま大人しくしているつもりはないと言う事だな」
千紗の問い掛けに、四郎はニヤリと意味深な笑みを浮かべみせた。
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