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第一幕 板東編
御田植祭④
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「姫さんに前に話した話、あっきーも聞いてたよな? 俺達平氏の祖は天皇家より親籍降下された高望王で、その高望王が国司として坂東に赴任したのをきっかけに、この地へ土着したと」
「あぁ」
「何故余所者である俺達が、今、こうしてこの地で財を成していられると思う?」
「それは、この地で開墾して、土地を広げたからだって前に……」
「勿論それもある。けど、開墾した土地以外にも、もともとこの地に住まう人間達から預かっている土地がある。だからこそ、広大な土地を有する事ができた」
「預かった?」
「そう。税収に苦しめられていた人間が、京から来た高貴な人間である高望王を信頼して預けたんだ。高望王は他の国司達みたいな、自分の私腹を肥やす為だけの厳しい税の取り立てをしなかったらしいからな。そんな高望王を慕い、自分達を守り導いてくれる先導者になって欲しいと願い、土地を預け、主従の関係を結んだ。
そうやって俺たち平氏は土地を増やし、力をつけて来た。そして今、俺や兄貴は、力を持たぬ者達が高望王にかけた期待と、民を守ると言う意思を引き継ぎ、この豊田の地を治めている。俺たちには豊田の地と、豊田に住まう民人達の生活を守る義務があるんだ」
「…………」
四郎の強い意志と覚悟に秋成は圧倒されていた。
今目の前に溢れている笑顔は、四郎や小次郎達の努力の賜であり、四郎達への信頼の証でもあると言う事か。
「なんて、格好いい事言ってみたけど、この半年俺がしてた事なんて屋敷の留守を守っていただけ。実際に豊田の土地を守ってくれていたのは兄貴だ。今こうして、暢気に祭りを楽しんでいられるのは、全部兄貴のおかげなんだよな」
「……兄上の?」
「そう。兄貴があちこちかけずり回って、賊や他国に目を光らせ、情報を集めてくれていたおかげで、この半年は大きな戦もなく、平和に過ごす事が出来ていたんだよ」
「……じゃあ兄上がなかなか屋敷に帰って来なかったのは、その為? 俺はてっきり、姫様や俺を避けているのだとばかり……」
四郎がケラケラ笑いながら否定する。
「それスッゴい被害妄想。兄貴は姫さんやあっきーに対して過保護が過ぎるくらいだよ。二人が来てからの警護への力の入れようと言ったら、そりゃもう」
秋成は小次郎の言葉を思い返す。
――『自分の身は自分で守れ』
あの時千紗を冷たく突き放した小次郎。
だが、突き放したふりをして、千紗を守っていたのは……小次郎だった。
そして、自分もまた小次郎に守られていた一人だった。
初めて知った事実に秋成は何故か悔しさを感じた。
「………兄上にはやはり敵わない……」
隠しきれない悔しさが、秋成の口からぽつりと溢れた。
「?何か言ったか?」
「……いや。何でもない」
「そうか? まぁ、そんなに寂しがるなって。もう少ししたら、兄貴は帰ってくる」
「……え?」
四郎の言葉に秋成の胸がドクンと跳ねた。
「兄上が帰って……」
◇◇◇
その頃――
「何?小次郎が帰ってくるのか?」
「はい。今年もこうして無事に御田伝祭りを迎える事が出来ました。これから秋の収穫までは、稲作が忙しくなります。皆戦どころではなくなります。昔から坂東では、忙しいこの時期に戦をしないと言うのが暗黙の約束事なのです。小次郎様も隣国への警護に目を光らせる必要がなくなります」
「だから帰ってくると、そう言うことか!」
「はい!」
早乙女の任務を終えた少女達が一息つきながら、世間話に盛り上がる。
そんな世間話から、千紗の耳にも小次郎の帰京の話が届けられていた。
「そうか。やっと小次郎は帰ってくるのだな」
小次郎の帰京の知らせに千紗の胸は高鳴っていた。
「あぁ」
「何故余所者である俺達が、今、こうしてこの地で財を成していられると思う?」
「それは、この地で開墾して、土地を広げたからだって前に……」
「勿論それもある。けど、開墾した土地以外にも、もともとこの地に住まう人間達から預かっている土地がある。だからこそ、広大な土地を有する事ができた」
「預かった?」
「そう。税収に苦しめられていた人間が、京から来た高貴な人間である高望王を信頼して預けたんだ。高望王は他の国司達みたいな、自分の私腹を肥やす為だけの厳しい税の取り立てをしなかったらしいからな。そんな高望王を慕い、自分達を守り導いてくれる先導者になって欲しいと願い、土地を預け、主従の関係を結んだ。
そうやって俺たち平氏は土地を増やし、力をつけて来た。そして今、俺や兄貴は、力を持たぬ者達が高望王にかけた期待と、民を守ると言う意思を引き継ぎ、この豊田の地を治めている。俺たちには豊田の地と、豊田に住まう民人達の生活を守る義務があるんだ」
「…………」
四郎の強い意志と覚悟に秋成は圧倒されていた。
今目の前に溢れている笑顔は、四郎や小次郎達の努力の賜であり、四郎達への信頼の証でもあると言う事か。
「なんて、格好いい事言ってみたけど、この半年俺がしてた事なんて屋敷の留守を守っていただけ。実際に豊田の土地を守ってくれていたのは兄貴だ。今こうして、暢気に祭りを楽しんでいられるのは、全部兄貴のおかげなんだよな」
「……兄上の?」
「そう。兄貴があちこちかけずり回って、賊や他国に目を光らせ、情報を集めてくれていたおかげで、この半年は大きな戦もなく、平和に過ごす事が出来ていたんだよ」
「……じゃあ兄上がなかなか屋敷に帰って来なかったのは、その為? 俺はてっきり、姫様や俺を避けているのだとばかり……」
四郎がケラケラ笑いながら否定する。
「それスッゴい被害妄想。兄貴は姫さんやあっきーに対して過保護が過ぎるくらいだよ。二人が来てからの警護への力の入れようと言ったら、そりゃもう」
秋成は小次郎の言葉を思い返す。
――『自分の身は自分で守れ』
あの時千紗を冷たく突き放した小次郎。
だが、突き放したふりをして、千紗を守っていたのは……小次郎だった。
そして、自分もまた小次郎に守られていた一人だった。
初めて知った事実に秋成は何故か悔しさを感じた。
「………兄上にはやはり敵わない……」
隠しきれない悔しさが、秋成の口からぽつりと溢れた。
「?何か言ったか?」
「……いや。何でもない」
「そうか? まぁ、そんなに寂しがるなって。もう少ししたら、兄貴は帰ってくる」
「……え?」
四郎の言葉に秋成の胸がドクンと跳ねた。
「兄上が帰って……」
◇◇◇
その頃――
「何?小次郎が帰ってくるのか?」
「はい。今年もこうして無事に御田伝祭りを迎える事が出来ました。これから秋の収穫までは、稲作が忙しくなります。皆戦どころではなくなります。昔から坂東では、忙しいこの時期に戦をしないと言うのが暗黙の約束事なのです。小次郎様も隣国への警護に目を光らせる必要がなくなります」
「だから帰ってくると、そう言うことか!」
「はい!」
早乙女の任務を終えた少女達が一息つきながら、世間話に盛り上がる。
そんな世間話から、千紗の耳にも小次郎の帰京の話が届けられていた。
「そうか。やっと小次郎は帰ってくるのだな」
小次郎の帰京の知らせに千紗の胸は高鳴っていた。
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