217 / 263
第一幕 京•帰還編
逆襲の始まりか
しおりを挟む
突如として巻き起こった騒ぎに、何事かと千紗が何事かと視線を向ける。
と、そこには小次郎と秋成、そして貞盛の姿があって――
一体何事が起きているのかと、慌てて千紗は3人の元へと駆け寄ろうとした。
だが、駆け寄る事は叶わない。
朱雀帝がそれを許さなかったから。
千紗を行かせまいと、千紗の手をきつく握り締め決して離さなかったから。
千紗は戸惑いながら彼の方を振り向くと、彼は静かに顔を横に振って見せた。
「…………」
千紗は困った顔で朱雀帝と秋成達とを交互に見比べる。
朱雀帝の手を振りほどき、小次郎達の元へ駆けつけたい。
そんな千紗の迷いを感じ取って、朱雀帝は静かに言った。
「千紗姫様、約束をお忘れですか?」
「っ……」
彼の放った一言に、千紗は力を失い項垂れる。
「帝、ここは危のうございます。姫様と共に中へ」
「うむ」
帝の側近の計らいで、朱雀帝は千紗を連れ、足早に屋敷の奥へと急いだ。
やっと手に入れた千紗を、小次郎達に決して奪われまいと、焦る気持ちが朱雀帝の歩く速度を加速させた。
そんな二人の姿に気付いた小次郎が、遠くから慌てて千紗の名を呼ぶ。
「千紗っ!!」
小次郎の叫びにも似た呼び声に、秋成もまた貞盛への怒りを一旦忘れて千紗を見る。
名前を呼ばれて振り返った千紗は、ピタリと足を止め二人の向ける視線に対して、何か言いたげな瞳で見つめ返した。
だが――
「千紗姫」
「っ!」
朱雀帝に名前を呼ばれて、千紗は悩みながら二人から視線を外す。
そして朱雀帝に手を引かれるままに、再び屋敷の奥へと歩き出した。
「千紗っ!!!待ってくれ……千紗っっっ!!」
「姫様っ!!」
自分達の元から離れて行こうとする背中に、小次郎と秋成は何とか彼女を引き留めようと、何度も何度も千紗を呼び続けた。
だが、千紗が二人を振り向く事はもう無かった。
「……悔しいか?小次郎」
千紗の姿が完全に見えなくなって、項垂れる二人に、貞盛はアザだらけのボロボロの顔で、クックと笑みを浮かべながら問うた。
「………」
「悔しいだろう? だがな、世の中は権力のある者が勝つのだ。この世は権力が全てなのだ!」
「………」
「お前のような綺麗事だけでは大切な物を守ってはいけぬのだ!よくよく覚えておけ!」
「…………」
貞盛の罵倒に、小次郎は何も言い返す事が出来なかった。
そしてこの後すぐに、秋成が引き起こした騒ぎにより宴は中止された。
やはり身分の低い者は野蛮者だと、貴族達は皆声を潜めて馬鹿にした。
秋成と小次郎の二人は、騒ぎを起こした咎を受け、それぞれ別々の場所へと連れて行かれ、その日一日監禁される事となる。
そして朱雀帝と共に二人の前から姿を消した千紗はと言えば――
あの宴を最後に、忠平の屋敷へ戻る事はもうなかった。
と、そこには小次郎と秋成、そして貞盛の姿があって――
一体何事が起きているのかと、慌てて千紗は3人の元へと駆け寄ろうとした。
だが、駆け寄る事は叶わない。
朱雀帝がそれを許さなかったから。
千紗を行かせまいと、千紗の手をきつく握り締め決して離さなかったから。
千紗は戸惑いながら彼の方を振り向くと、彼は静かに顔を横に振って見せた。
「…………」
千紗は困った顔で朱雀帝と秋成達とを交互に見比べる。
朱雀帝の手を振りほどき、小次郎達の元へ駆けつけたい。
そんな千紗の迷いを感じ取って、朱雀帝は静かに言った。
「千紗姫様、約束をお忘れですか?」
「っ……」
彼の放った一言に、千紗は力を失い項垂れる。
「帝、ここは危のうございます。姫様と共に中へ」
「うむ」
帝の側近の計らいで、朱雀帝は千紗を連れ、足早に屋敷の奥へと急いだ。
やっと手に入れた千紗を、小次郎達に決して奪われまいと、焦る気持ちが朱雀帝の歩く速度を加速させた。
そんな二人の姿に気付いた小次郎が、遠くから慌てて千紗の名を呼ぶ。
「千紗っ!!」
小次郎の叫びにも似た呼び声に、秋成もまた貞盛への怒りを一旦忘れて千紗を見る。
名前を呼ばれて振り返った千紗は、ピタリと足を止め二人の向ける視線に対して、何か言いたげな瞳で見つめ返した。
だが――
「千紗姫」
「っ!」
朱雀帝に名前を呼ばれて、千紗は悩みながら二人から視線を外す。
そして朱雀帝に手を引かれるままに、再び屋敷の奥へと歩き出した。
「千紗っ!!!待ってくれ……千紗っっっ!!」
「姫様っ!!」
自分達の元から離れて行こうとする背中に、小次郎と秋成は何とか彼女を引き留めようと、何度も何度も千紗を呼び続けた。
だが、千紗が二人を振り向く事はもう無かった。
「……悔しいか?小次郎」
千紗の姿が完全に見えなくなって、項垂れる二人に、貞盛はアザだらけのボロボロの顔で、クックと笑みを浮かべながら問うた。
「………」
「悔しいだろう? だがな、世の中は権力のある者が勝つのだ。この世は権力が全てなのだ!」
「………」
「お前のような綺麗事だけでは大切な物を守ってはいけぬのだ!よくよく覚えておけ!」
「…………」
貞盛の罵倒に、小次郎は何も言い返す事が出来なかった。
そしてこの後すぐに、秋成が引き起こした騒ぎにより宴は中止された。
やはり身分の低い者は野蛮者だと、貴族達は皆声を潜めて馬鹿にした。
秋成と小次郎の二人は、騒ぎを起こした咎を受け、それぞれ別々の場所へと連れて行かれ、その日一日監禁される事となる。
そして朱雀帝と共に二人の前から姿を消した千紗はと言えば――
あの宴を最後に、忠平の屋敷へ戻る事はもうなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる