時ノ糸～絆～

第一幕 京•帰還編

運命に抗う男

あぁ、そうだ。
あの時約束したのだ。

変わりゆく時の流れの中にも、きっと変わらないものはあるはずだと。それを証明してみせてやると、あの時確かに約束したのだ。

その約束を違えるわけにはいかない。

例えどんなに目の前の状況が変わっても、自分の中には変わらずに彼女への忠誠心が存在しているのだから。

千紗と交わした約束の証明を、諦める事など出来るはずがない！


「そうだ。まだ諦めてなんかやるものか！」


秋成の瞳に、熱き炎がメラメラと燃え上がる。

千紗との約束を果たすべく、秋成はある決意をした。

決意を胸に、秋成は顔を上げると、真っ直ぐに澄んだ瞳で空を見上げた。

丁度その時、雲にかかって隠れていた月が顔を出す。

ほのかな月灯りが、ぼんやりと秋成の顔を照らした。

彼の目にもう迷いはない。

今の秋成の心にあるのは、千紗と交わしたあの約束。
ただひとつだけ。


――『俺とお前の間には変わらない約束がある。その約束を守り続ける事で、俺が証明してみせてやる』



過去の自分が主である千紗に誓った約束を、再び心に刻み付け、秋成は新たな誓いを声に出す。


「姫様、待っていて下さい。俺が必ず貴方様を助け出してみせます。必ず！」













こうして当たり前に一緒にいた筈の3人は、再び道を別ち歩き出す。

迷い、悩みながらも己が選んだ道を。

その道を進んだ先に待ち受けるは、安息か、それとも更なる困難か。それはまだ誰にも分からない。

だが、ただひとつ言える事は、例えどんなに願っても、過去には戻れないと言う事だけ。

人は前に進むしか道はない。
例え過去に多くの後悔を残したとしても、過去を変えることなど誰にも出来はしない。

過去を受け入れ、過去とどう向き合って行くのか、その積み重ねが未来を形造って行くのだ。

人の世とは、そうして築き上げられて来たもの。
歴史とはそうやって築き上げていくもの。


この先3人は、どんな未来を進むのだろうか？

例えどんな未来が待っていようと、3人が悩みながらも選び、進んだ先には、今、我々の生きている“未来いま”があるのだ。

そして、この国の歴史には、確かに彼等が生きた証しが刻み込まれているのだ。

今少し、そんな先人達かれらが歩んだ道を、共に見守って欲しい。



「時ノ糸～絆～」 
ー過去編ー第一幕 完

第二幕へ続く――