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第二幕 千紗の章
密会②
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「………そうか。あのチビが姫様に……」
ヒナが聞かせてくれた報告内容に、秋成の手にはきつく拳が握りしめられた。
「まるで、籠に囚われた鳥のようだな。あんなにも自由を求めていた方だったのに……さぞお心を痛められているだろう」
「…………キヨ……様も……心配して……おられました……。日に日に、千紗様の顔から……笑顔が消えて……行っているって……」
「…………」
ヒナの口から語られる千紗の現状に、秋成は一人難しい顔をして考え込む。
ヒナは、心配げにそんな秋成の顔を覗き込んでいた。
「…………秋成……様……?」
「ん?あぁ、すまない。何でもないんだ」
「………本当……に?」
「あぁ。ヒナ、姫様の様子を知らせてくれてありがとう」
秋成はそう言うと、再びヒナの頭をクシャクシャっと撫で付けた。
ヒナはくすぐったそうに、そして嬉しそうに微笑んだ。
「さぁ、今日はもう戻れ。侍女の朝は早いだろ。早く体を休めないと、明日がつらいぞ」
ヒナに向かって優しく言うと、ふわりとヒナの体を持ち上げて塀を登る手助けをしてやる。
別れを惜しむように、秋成を見つめるヒナに、彼は笑顔を向けて言った。
「ヒナ、姫様の事……頼んだぞ」
秋成の言葉に力強く頷いて、ヒナは来た時同様、器用に木をつたって大内裏へと消えて行った。
ヒナの姿が見えなくなった後も、秋成は暫くの間、己の目の前に聳え立つ土壁をじっと見上げていた。
帝の后となった千紗と、大内裏にすら入る事が許されない己の前に、高く高く聳え立つ土壁を――
――『秋成~!』
目を閉じれば、今にも聞こえてきそうな主の声。
笑った顔や怒った顔、感情のままにクルクルと忙しく変化していた彼女の表情が色鮮やかに甦る。
――『…………キヨ……様も……心配して……おられました……。日に日に、千紗様の顔から……笑顔が消えて……行っているって……』
先ほどのヒナの言葉を思い出す。
あの千紗姫から笑顔が消えるなど、ずっと側で彼女を見てきた秋成には到底信じられない。
今すぐにでも、千紗の様子を見に行きたいのに、今は目の前の壁がそれを阻む。
つい2ヶ月前まで、すぐ近くにあったはずの主の温もりが、今は果てしなく遠い。
もどかしさに秋成は、再びきつく拳を握り締める。
そして不安を押し殺すかのように、「千紗」と主の名を小さく呼んだ後、目の前に聳える高い壁をきつく睨み付けながら、ある強い決意を口にした。
「待ってろ。絶対に俺が、お前をこの籠の中から助け出してやるから」
言霊となる事を信じて――
ヒナが聞かせてくれた報告内容に、秋成の手にはきつく拳が握りしめられた。
「まるで、籠に囚われた鳥のようだな。あんなにも自由を求めていた方だったのに……さぞお心を痛められているだろう」
「…………キヨ……様も……心配して……おられました……。日に日に、千紗様の顔から……笑顔が消えて……行っているって……」
「…………」
ヒナの口から語られる千紗の現状に、秋成は一人難しい顔をして考え込む。
ヒナは、心配げにそんな秋成の顔を覗き込んでいた。
「…………秋成……様……?」
「ん?あぁ、すまない。何でもないんだ」
「………本当……に?」
「あぁ。ヒナ、姫様の様子を知らせてくれてありがとう」
秋成はそう言うと、再びヒナの頭をクシャクシャっと撫で付けた。
ヒナはくすぐったそうに、そして嬉しそうに微笑んだ。
「さぁ、今日はもう戻れ。侍女の朝は早いだろ。早く体を休めないと、明日がつらいぞ」
ヒナに向かって優しく言うと、ふわりとヒナの体を持ち上げて塀を登る手助けをしてやる。
別れを惜しむように、秋成を見つめるヒナに、彼は笑顔を向けて言った。
「ヒナ、姫様の事……頼んだぞ」
秋成の言葉に力強く頷いて、ヒナは来た時同様、器用に木をつたって大内裏へと消えて行った。
ヒナの姿が見えなくなった後も、秋成は暫くの間、己の目の前に聳え立つ土壁をじっと見上げていた。
帝の后となった千紗と、大内裏にすら入る事が許されない己の前に、高く高く聳え立つ土壁を――
――『秋成~!』
目を閉じれば、今にも聞こえてきそうな主の声。
笑った顔や怒った顔、感情のままにクルクルと忙しく変化していた彼女の表情が色鮮やかに甦る。
――『…………キヨ……様も……心配して……おられました……。日に日に、千紗様の顔から……笑顔が消えて……行っているって……』
先ほどのヒナの言葉を思い出す。
あの千紗姫から笑顔が消えるなど、ずっと側で彼女を見てきた秋成には到底信じられない。
今すぐにでも、千紗の様子を見に行きたいのに、今は目の前の壁がそれを阻む。
つい2ヶ月前まで、すぐ近くにあったはずの主の温もりが、今は果てしなく遠い。
もどかしさに秋成は、再びきつく拳を握り締める。
そして不安を押し殺すかのように、「千紗」と主の名を小さく呼んだ後、目の前に聳える高い壁をきつく睨み付けながら、ある強い決意を口にした。
「待ってろ。絶対に俺が、お前をこの籠の中から助け出してやるから」
言霊となる事を信じて――
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