転生者、咲き散らす! 〜勇者家系なのに『花咲かスキル』授かって用無しらしいので、世界ちょっと華やかにしてきます〜

黒片大豆

文字の大きさ
4 / 41

04.天啓の儀

しおりを挟む
 見た目でソレと解る、巨大な建造物だった。
 中央教会の本部ともなれば、威厳も大切。その建物は、周囲の他の建物を眼下に見据えていた。

 俺たちは正面入口で馬車から降り、そのまま教会の建物内に招かれた。
 そしてさらに、その奥の大部屋に向かうと、両開きの堅牢な扉が現れた。

 この部屋で、『天啓の儀』が行われる。
 家族全員が神妙な面持ちだ。あの堅物父親も例外ではなかった。

「陛下と、大司祭様がお待ちです」
 礼節整った牧師風の男が、そう述べると扉に手を掛けた。

 扉からまばゆい光が溢れた。



 そこは、すり鉢状に抉れていた。
 そして中央には地面が剥き出しであった。

 雨が吹き込んだら水没しそうだな、というのが最初の感想。風情もへったくれもない。

 だが、その地面から生えていたのは、紛れもない。
 ──『剣』だ。

 ファンタジーものでよくある奴。
 何故か錆びずに地面に突き刺さった、いわゆる勇者しか抜けない奴。

「……」
 感情は表に出さないように努めていたが、前世の世界では到底体験できない、ファンタジーな出来事に直面できて、内面は終始興奮気味であった。

 すると、豪華絢爛な法衣を着飾った、信楽焼のタヌキ……おっと、違った。大司祭様が目前にやって来た。
 その横には、やせ細った、キツネ目の老齢紳士。……あ、こちらは国王陛下だったわ。
 更に周囲には、付き人や、ボディーガードみたいな人たちが常に周囲を警戒している。

 国王陛下が近づく前に、俺たち家族全員が膝をつき、頭を下げた。
 俺もそれに倣う。事前に作法を復習しておいてよかった。

「貴公が、ヴァリヤーズ長兄か」
「はっ、ランジェと申します」
 俺は顔を上げて、陛下の顔を確認した。

 その目は優しく、しかし、力強く俺を見据えていた。
 勇者誕生の期待に胸を膨らませたその瞳には、人類の未来の希望が映し出されているのだろう。

「さささ、ランジェ=ヴァリヤーズ様、こちらへ」
 信楽たぬき……じゃなくて、大司祭様が俺の手を引いて、抉れたくぼみを降りるよう促した。

 クレーターの一部には階段が設けられており、降りるにはそこまで大変ではなかった。

 くぼみの中心に輝くは、勇者の剣。
 予め、天啓の儀については予行練習は行っていた。といっても、俺の役目は『剣の柄を握る』だけなのだが。

「これより! 天啓の儀を執り行う!」
 大司祭が、部屋に十分響く声をあげた。首回りに付いた肉が、声に反響して波打っているように見えてしまい、吹き出しそうになる。

 プルンプルンしてた。プルンプルン。

「さあ、ランジェよ、勇者の剣を握り、そして引き抜くが良い!」
 頭の上から高圧的な声。親父だ。陛下と大司祭の前だからか、なんか見えを張って格好つけているように見え、それも滑稽だった。

 まあ、いいや。
 現状、俺が『勇者』であることは間違いない。周囲の太鼓判もある。
 内容が確約されている分、この儀式はとても気楽だった。

 問題は、それ以降の話だ。
 馬車内の会話のとおりだと、俺はすぐ屋敷から放り出される。まともな準備期間や、頼りになる仲間なども貰えないだろう。

「勇者の!! 誕生だ!」
 いつの間にか、周囲のボルテージは最高潮。
 全員が、勇者誕生の瞬間を目の当たりにしようと、目を輝かせていた。あの双子すら、なんだかんだ言いながら、勇者誕生の瞬間を目に焼き付けようとしていたように思える。

(まずは、勇者になってから、だな)
 この天啓の儀を終えてから、今後のことを考えよう。そう思い、俺は、剣の柄に手をかけた。

 刹那。強烈な光が周囲を照らした。
 あまりに眩しく、目を開けられないレベルだった。そして、俺の中に『何か』が流れ込んで来る感覚を受けた。

 おそらく、これで俺に『勇者』の素質が入り込んだんだ。そう確信した俺は、未だ強烈な光を放つ剣を、一気に引き抜いた。


 引き抜いた! 


 引き……抜いたっ! 


 ん? おや? ……ふんっ! ふんっ!! 



 やべ、びくともしねぇぞ。



 確かに光った。
 明らかに『抜けます!』風な光り方してたんですけど、微動だにしない。


 嫌な予感しか襲ってこない。


 ……ざわざわ……ざわざわ。

 部屋を激しく照らした光は落ち着きを取り戻し、そこには、剣を高く掲げた勇者が立って……いると期待していたギャラリーから、戸惑いの声が漏れ出ていた。

 あー、人間ってこういう時は、何故か笑顔になっちゃうんだよね。
 口角が上がった顔で、脂汗をかきながら、俺はギャラリー側に振り向いた。
 無論、剣はそのままである。

「……どういうことだ!!」
 この状況で一番困惑していたのは、父親だったかも知れない。顔面蒼白になったかと思ったら、今度は顔を真赤に染め上げた。

 一方母は、何が起こったのかわかっていないと言った感じ。
 キストとカーリアは、状況を理解は出来ているようだが、だからとて、何故こうなったかはわかっていない顔。

「皆のもの、静まれっ!! ……大司祭殿、説明を」
 俺以上に、意外にも冷静だったのは、国王陛下だった。困惑と混乱で埋まる観衆を、一声で鎮めたのだ。

「は、はいっ!!」
 すると信楽焼き大司祭が、巨体を揺らしながら俺のところまで降りてきた。

 ちょっとの階段であったが、目の前まで来た大司祭は汗だくで、息を切らしていた。

「ぜえ……ぜぇ……し、失礼します、ランジェ殿」
 そういうと、大司祭は両手をかざした。その瞬間、俺は青白い光に包まれた……かと思ったら、それはすぐに消えた。
 すると、大司祭の顔からみるみるうちに血の気が引いていった。先程の汗とは別の汗が同時に吹き出していた。

「陛下っ! ランジェ殿は……別のスキルを授かっております!!」
 なるほど、先程の大司祭の青白い光は、鑑定スキルか何かか。俺に付与された力の情報を瞬時に調べ上げるあたり、大司祭としての実力は間違いないようだ。

 ……って、やっぱ勇者とは別スキルなの?! 
 約束された勇者の力は何処行ったマジで。

「なんだとっ!!」
 最初に驚いたのは、陛下ではなく、俺の親父だった。そりゃそうだろう。俺の存在意義など、『勇者』だけだったのだから。

「……大司祭殿、ランジェ殿は、勇者ではなく、何を授かったのだ?」
 唖然としている父親を横目に、国王陛下は再度、大司祭に聞いた。

 実は、俺自身もそれは気になるところだった。
 確かに、剣からは『何か』が流れ込んできていた。それは、俺の体の奥底に新たな力を分け与えたような。そんな感覚を植え付けていったのだ。
 ただその力は、自分自身でもよくわかってなかった。

「そ……それは……」
 すると、大司祭は口籠ってしまった。俺に付与されたスキルを説明するのに、なんというか、言葉を選んでいるようだ。

「……それは?」
「それはっ!」
 静かに促す国王陛下の低音ボイス。かたや、激しく催促する、父親の恫喝声。

 二人に急かされた大司祭は、意を決し、ここに居る全員に口を開いたのだった。



「花の……花の咲く時期が分かる能力です!」



 花咲かランジェ、ここに爆誕である。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」 女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。 この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。 『勇者道化師ベルキッド、追放される』 『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。

魔境の森に捨てられたけど、最強のテイマーになって生還した~外れギフト【スライムテイム】でスライムを無限に仲間にして成り上がり無双~

むらくも航
ファンタジー
とある少年『アケア』は、ギフトを受ける儀式にて【スライムテイム】を授かる。 だが、不遇とされるテイマー系の上、最弱のスライムの名が入ったギフトなど大外れだと言われた。 結果、父からは勘当され、魔境の森という超危険地帯に送り出されることになる。 しかし、誰もこのギフトの真価を知らなかった。 通常は三匹までしかテイムできないテイマー系だが、アケアはスライムに限っては無限にテイムすることができたのだ。 『最弱も積もれば戦力となる』 そう確信したアケアは、色んなスライムをテイムしていく。 テイマーの特性上、従魔の力や魔法は主にも還元されるため、アケアは青天井に強くなってなっていった。 そうして、やがて魔境の森で最強になったアケアは、様々な地で活躍の機会を得る。 あまりに万能すぎる働きに驚かれるが、決まってアケアはこう答える。 「ただのテイマーです」 対して、人々の反応も決まっていた。 「「「なわけあるかー!」」」 そんなツッコミの声が、今日も世界のどこかで聞こえてくるのだった──。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

処理中です...