チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆

文字の大きさ
30 / 69

第6話 追放勇者、未来へ繋げる【その3】

しおりを挟む
「……」
「……」
 しばしの沈黙が、総隊長室を包んでいた。
 クリエは静かに、真っ直ぐサックを見つめていた。
 サックは逆にうつむき、頭を抱えていた。

「……アイサック様」
「……何だ?」
 涙すら出ない自分に無性に腹が立った。
 戦友が死んだという報告を受けてるはずだが、全く実感が沸かなかったからだ。

わたくし、クリエは、勇者イザム様から勅命を受けて、こちらに馳せ参じました」
「イザムの、勅命?」
 はい。と、クリエは短く返事をした。

「ひとつは、行方不明のボッサ様の探索。もうひとつは、イザム様からの伝言を、アイサック様にお伝えすることです」

「伝言だって?」
 うつむいていた顔を上げ、クリエのほうに向いた。彼女の目元は光の加減でメガネが反射し、伺うことはできなかった。

「『サック、こっちに戻れないか?』。以上です」

「……!」
 イザム直々の、サックへの復帰願いだった。
 サックは驚いたが、反面、こうなることはある程度予測していた。

 七勇者のうち、4人しか残っていない中での、魔王攻略。しかもメイン回復が居ない。無理難題にも程があるだろう。

 だが、サックはすぐに返事を返すことができなかった。

「……」
「イザム様、憔悴しきってました。あんな覇気のないイザム様、初めて拝見しました」

 勇者イザムは弱音は吐かない。そんな姿見たことない。そういう奴だ。サックはよくわかっている。
 クリエの報告が本当なら、彼は相当に参っている。

 サックも、出来ることならすぐに戦線復帰をしたい。親友で戦友の彼らと共に戦いたい。しかし……。

「でも、俺は……」
 勇者現役の時に比べて、いまの力は心許ない。特に、道具師アイテムマスターの最終技『潜在解放ウェイクアップ』の加減が全く効かない。
 体力面も、魔瘴気の影響で圧倒的に落ちている。

「こんな俺が復帰しても……足を引っ張りお荷物になるのが、関の山だ」
「……そう……ですか。残念です。──お伝えはしましたよ」
 そういうと、クリエは立ち上がり伸びをした。

「それでは、ごきげんよう」
「──ちょっと待って!」
 部屋を出ようとノブに手を掛けようとしたクリエを、サックが引き留めた。

「なんでしょう、サックさん。私は忙しいんですが」
 クリエの呼び方が、以前のものに戻っていた。心なしか、彼女の眉は釣りあがり、怒っているようにも見えた。

 するとサックは、机に散らばっていた資料を手にもち、クリエの目の前に持ってきた。
『極幸教』の記事が書かれたそれは、しかし、クリエに鼻で笑われた。

「何のつもりです? そんなゴシップ三面記事……」
「頼みがある。この『極幸教』の情報が欲しいんだ」
「は? あのですね、私は今から、ボッサ様を探しに行くので……」

 最初は小馬鹿にしたが、そうは言いつつも、クリエは記事に目を通していた。そこで気になる言葉が目についた。

「『勇者の力』……」
「ボッサの情報が欲しいんじゃないのか」

 ピクリ、と、クリエの眉が動いた。サックはそれを見逃さなかった。ここぞと、思いの丈を畳み掛ける。

「俺たちは今、どうしてもこの宗教団体の情報が欲しい。そして、この謎の団体は『勇者』を使って信者を集めている」
「そんな三文記事、信じるほうが異常ですよ。『勇者』もどうせニセモノでしょう」

 だが、サックは首を振った。
「この記事を書いた新聞屋は、殺害されている。信憑性は高いと思う」
「あなたはそれで、良いんですね。戦友が『そういうこと』始めた、という認識で」

 クリエは、サックの痛いところを突いてきた。ここでボッサを疑うことは、つまりは、命懸けで一緒に戦った戦友を疑うことだ。
 だが、サックは頭の奥底で、既に点と点が繋がっていた。

「イチホ=イーガスを助けられる回復術師ヒーラー。オレが知り得るのは、一人だけなんだ」
 ずっと、心の底で引っかかっていた。彼女を助けられる人物は、彼しかないのではと。
 そしてサックは、それを確証に変えうる質問をクリエに投げた。

「ボッサが失踪したのは……『何時いつ』だ?」
「……」
「……オレの推測だと、『ベルキッド追放』の箝口令解除。この時なんじゃないか?」
「……驚きました。サックさん、あなた『探偵』にも向いてますよ」

 そういうと、クリエは懐から一枚の紙を取り出した。ミクドラムで撒かれた、勇者追放の『号外』だ。

「具体的な日付は、この号外が刷られる1週間前です。サックさんが追放されて、5日後にアリンショア様が、第3層で亡くなってます」

 時系列を整理すると、こうだ。
 魔王城前の次元錠決戦ののち、サックの回復を待って彼は追放された。
 その後、5日のうちに、勇者たちは草々に第1、第2層を突破していた。だが、第3層で事件が起こる。
 アリンショアの死と、ボッサの失踪だ。
 そこからの攻略の難しさは想像に難くない。本来は7人で進める筈だった戦いを、4人で取り繕っているのだから。

「つまり、『勇者追放』の記事で隠したかったのは、勇者の剣のことではなく──」
「アリンショア様の逝去です。そして号外発行の時点で、ボッサ様失踪から1週間がたってます」

 クリエからの情報で、推測は確証に変わった。
 ボッサは当日、ミクドラムにいた。そして、死にかけの女の命を繋いだのだ。殺されて当然の報いを受けるべき、イチホ=イーガスを。

「イチホを助けたあと信者を集め始めたとすれば、報告書のタイミングとつじつまが合う……どうだ、新聞屋。これで、こちらの依頼と無関係じゃなくなったろ」

 サザンカたちを操り、暗躍させた『ニセ勇者』が、ボッサであることはいまだに信じがたいが──状況証拠としては、それが限りなく真実に近いことを示している。

 すると、クリエは大きくため息をついた。そしてサックに向き合った。先ほどの怒りの表情は消え、幾分穏やかになっていた。

「つーまーり。私の勅命のついでに、その教団の情報を持って来いと」
「いや、事情が変わった。俺も一緒にボッサの説得に行く」

 あら、とクリエは口に手を当てて驚いた風なリアクションを見せた。
「私の事を心配してくれてるんですね、驚きました」
「事が事だからな……ん?」

 その時、総隊長室の扉を強くノックされた。
 扉の前に立っていたため、ノック音は強くサックたちの耳に響いた。

「なんだ、緊急の連絡か?」
 こちらの話はひと段落ついているので、サックは扉を開けた。すると、ジャクレイが肩で息をしながら立っていた。

「ジャクレイ、どうしたんだ? 奥さんに浮気でもバレたか?」
「……馬鹿言え。サックおまえへの朗報を持ってきたんだよ」
 ジャクレイの顔がにやけていた。喜べと言わんばかりの表情だ。

「サザンカとヒマワリ、目覚めたぞ」

 それを聞いたサックは、大きく息を吸い込み、ゆっくり吐き出した。同時に目元が緩んだ。ずっと心に残っていたシコリが取れたような感覚だった。

「……行ってあげてください、サックさん、待っている子がいるんでしょ?」
 サックの顔色と、おそらく女性の名前を聞いたクリエは、何かを察したようだ。

「……スマン!」
「お構いなく。私も少し疲れてるので、こちらで十分休ませてもらいますね」

 ジャクレイに連れられて、サックは詰所の地下牢へ向かっていった。
 それを、後ろからクリエが見送った。

「……さて、と」
 クリエは、そのまま総隊長室に戻り、机の上の資料を物色し始めた。
 めぼしいものを数枚抜き取り、そして、懐に押し込んだ。

「こういうところ抜けてるわー。『女難の相』の所為かしらね」
 すると彼女は、特に周囲を気にすることなく、まっすぐに詰所の出口へ向かった。

「貴方には幻滅しました……さようなら、勇者アイサック」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

処理中です...