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友達以上恋人未満

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「はい、あ~ん」

 飴よりも甘い空気、ほんわか幸せ笑顔に繋がれた手で回る街中、他人から見たらバカップル。でも私達は付き合ってない。誰だって人肌恋しくなる時がある、恋愛なんて重いものはしたくなくても誰かが隣にいて欲しい時。私達はお互いのそんな時間を埋め合う為の関係。束縛も無い、嫉妬も無い、面倒事も、泣く事も。苦しい事は全て捨てて恋人の関係の良い所だけを持っていく、都合の良い関係性。気付けばそんな位置に収まって数年。多分、私も彼奴もお互いの事が恋愛的に好きじゃないなんて分かってる。お互いいい人止まり、友達止まり。でも他の誰よりも信頼している友達だと思っているから。出来るなら聞きたく無かった

「…好きな、人が出来た?」

「そうだよ」

彼の言葉に驚いて、思わず問い返すも彼奴はニコリと笑って、でも少し苦しそうに、なんて簡単に返す。教えてもらった好きな人、其の名前を聞いて彼が苦しそうな理由がわかった。彼奴の好きな人は彼奴をそういう意味で好きじゃない、なんて私でも分かる。そして彼も分かってるんだろう。叶わぬ恋、其れを必死でしている彼。に対し、私は好きな人は居ない。仲良い人は居ても呆気なく壊れる恋愛になんて進めなかったから。その1歩を踏み出した彼が、傷付くことが分かっていても好きだと思える彼が何処か羨ましい

「そっか、おめでとう」

と彼と同じ様に笑ってみる。てっきり彼奴も私と同じで好きな人なんて一生出来ないと思っていたから、青春し始めた彼に置いてかれてしまって。浮かべた笑顔が本心じゃない事に気付かなければいい。でも彼奴は好きな人と自分の傷で精一杯だから気付かずに居てくれた。出会い、キッカケ、好きだと認めた日から、今の辛さまで丁寧に教えてくれて。彼奴の好きな人は彼奴に興味無いから

「辛いんだ」

なんて彼は小さく零す。

"そんな顔するなら私でいいじゃん"
とは、彼奴を好きになる勇気も彼奴に傷付けられる勇気もない私は言えなかった。氷がぶつかりカラン、と空になったグラスの音が響く。その音が空っぽな私の心にやけに響く。お互いのグラスの中身はもう無くて、何方からも言わず席を立った。

「じゃあ行こっか」

なんていつも通りに手を差し出してくる。ねぇ、君、好きな人出来たんじゃないの?まだ、いつも通りでいいの?

「…行こっか」

 それでも私は弱いから、彼奴の手を握りまた二人で並んで歩き出す。もし、お互い好きな人が出来ない儘だったら、もし此の儘中途半端に生きていたのなら。不器用で、恋愛に向かない者同士ずっと一緒に居るのも悪くないって思っていたのに。氷で冷えた君の手はいつもの温かさを失って、体温なんて感じられない。指を絡め歩く私達は傍から見れば恋人。でも本当は恋人未満
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