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エピソード1 平家と源氏の末裔
第5話 我々は電幽霊と霊力陣を使って戦う
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「さてとぉ……。みなもと氏ぃ。そろそろ、あいつを浄霊しようぜ」
そう言いながら平平は目の前に両手を突きだし、掲げた日本刀を鞘からゆっくりと抜いていく。すべるようにして姿を現した刀身は、鈍くも禍々しい光を放ち、まるで内に秘められた冷酷さを外に吐きだすかのように、あたりを重々しい空気で包んでいく。
だれもがその重厚な光に見入られていた。仮想世界で作り出す武器は、その人物の霊力を多分に反映する。名工が丹精をかたむけたような名刀を、そこに具現化できるというのは、平平が半端のない霊力の持ち主であることの証左でもあるからだ。
平平の頭の上に数字が浮かびあがる。その数『8000』——。
中空からその様子を眺めていたノンがアミに尋ねた。
「あの数字は?」
「あれはマナと呼ばれる精神力ゲージだ。この世界での体力みたいなものだな。あれが「0」になると、ちょっとヤバい状況になる。だが逆に「0」にならない限り、どんな状態になっても問題ない。あの音無姉妹の妹みたいにな」
そう言いながらアミがノンの視線をうながした。さきほどまでのコール・マイナーとのバトルで満身創痍になっている音無まひるに目が行く。通常の状態なら立っていることはおろか、息絶えていてもおかしくない姿にあらためて気づかされる。
ノンがまひるの頭上の目をやった。ちかちかとまたたいて見えづらいが、その数字は「2200」となっていた。
「あの数字!」
「そうだ。次にくらったらアウトというところだ」
アミは中空に正座姿でお茶をすすっている姉みかげのほうを顎で指し示した。
「あぁ、見えて、相当なマナをあの姉貴は補填してる。涼しい顔をしているが、どうしてもどうして、今にも倒れそうだろうよ」
ノンがみかげの頭上に目をやると「1200」という数字が今にも消え入りそうなほど、うっすらと見えた。
平平が刀身を引き抜き身構えた。まひるとみかげが声をかける。
「たいらはん。じゅうじゅう気をつけてや」
「おまんはどうなっても構わんが、先輩に指いっぽんでも触れたらただでおかんきに」
「しつけーな、まひる!」
平平がまひるからのクレームを一蹴すると、源子が背後から声をかけてきた。
「へいべい君、いつものように私が後衛を務めます」
「おう。頼むわ!」
「ですが、簡単にクリティカルヒットなどを喰らって、根こそぎ体力を削られたりしないように願います」
「善処するよ」
そう言うなり、平平は刀を左手にもちなおし、右手の人さし指でくるりと中空に円を描いた。空中からメニューが呼び出され、空間に丸い『カラーチャート』のようなものが浮かびあがった。その『カラーチャート』は9つに区切られており、その各区画にはジャンケンのマークが記載されていた。
中空からその様子を眺めていたノンがアミに尋ねた。
「あれはなんですか?」
「あぁ、あれは電幽霊の退治用に開発された霊力陣だ。あれで我々は戦う」
「色のところに描いてあるグー、チョキ、パーはなんです?」
「あぁ。あれか。霊力陣というのは9つに分割され、そのそれぞれが色で分けられている。それらの色はお互いの補色に対して優劣があるのだが、その関係が複雑なのでわかりやすくするため、ジャンケンに見立てているのだよ」
「ジャンケンに?」
「わたしたちの間では九色のジャンケン『クジャン』と呼ばれているがな」
「クジャン……ですか」
「ジャンケンというのは『グー』『チョキ』『パー』の3分の1の確率で勝敗が決まるが、霊力陣を使った『クジャン』は、それがさらに3分割されて9つの手のジャンケンになるのだ」
「つまり、9分の1の確率で決まるジャンケンってことですか?」
アミがノンのほうに目をむけてにやりと笑って答えた。
「ご名答。——って言いたいとこだが、そう単純な勝負じゃない」
源子が腕を目の前に突き出した。そしてその手をすーっと横にすべらせると、その手の動きに沿って、中空に4枚の縦長のカードが現れた。カードはトランプのような比率ではなく、かなり縦長だった。カードの裏にはマントラのような文様が描かれており、カードというよりもむしろ護符を思わせる。
アミが源子の行動をノンに説明した。
「あれは戦略護符……。前衛にいるぴらぴらが攻撃する際に、後衛に控えるげじげじがそのなかの一枚を選択し、前衛の攻撃にコマンドを与えるのだよ」
「コマンド?」
源子は4枚のカードを見渡すと、やにわに手に持った弓に矢をつがえて、キリキリと弦をひいて、中央左側の一枚に狙いをさだめた。
ノンの疑問にアミが答えた。
「戦略護符には一枚にひとつコマンドが記されている。
たとえば、『PROTECT(相手からの攻撃を防ぐ)』や『DOUBLE(相手に倍の攻撃を与える』や『REVERSE(負の結果を相手に返す)』などがな。この攻撃指示は対峙する電幽霊からは見えていない」
「ずいぶん有利に戦いを進められるんですね」
「うまく使えればな」
「え、でも源子さんの手札をみるかぎり、あきらかに有利なコマンドが記されていますよ」
「そうだな。さすがいい手札を揃えているし、見事に引き当てている」
「だったら、電幽霊なんか簡単に……」
「ジャンケンに勝ったならな……」
「え、ジャンケンに勝ったらって……」
「もし、ぴらぴらがあの電幽霊『コール・マイナー』にジャンケンで負けたら、選択したコマンドはそのまま自分たちに適用されて、自分たち自身に襲いかかってくる場合がある——」
ノンがおもわず口元に手をあてた。
「そう。戦略護符。あれは……そういう諸刃の刃なのだよ」
そう言いながら平平は目の前に両手を突きだし、掲げた日本刀を鞘からゆっくりと抜いていく。すべるようにして姿を現した刀身は、鈍くも禍々しい光を放ち、まるで内に秘められた冷酷さを外に吐きだすかのように、あたりを重々しい空気で包んでいく。
だれもがその重厚な光に見入られていた。仮想世界で作り出す武器は、その人物の霊力を多分に反映する。名工が丹精をかたむけたような名刀を、そこに具現化できるというのは、平平が半端のない霊力の持ち主であることの証左でもあるからだ。
平平の頭の上に数字が浮かびあがる。その数『8000』——。
中空からその様子を眺めていたノンがアミに尋ねた。
「あの数字は?」
「あれはマナと呼ばれる精神力ゲージだ。この世界での体力みたいなものだな。あれが「0」になると、ちょっとヤバい状況になる。だが逆に「0」にならない限り、どんな状態になっても問題ない。あの音無姉妹の妹みたいにな」
そう言いながらアミがノンの視線をうながした。さきほどまでのコール・マイナーとのバトルで満身創痍になっている音無まひるに目が行く。通常の状態なら立っていることはおろか、息絶えていてもおかしくない姿にあらためて気づかされる。
ノンがまひるの頭上の目をやった。ちかちかとまたたいて見えづらいが、その数字は「2200」となっていた。
「あの数字!」
「そうだ。次にくらったらアウトというところだ」
アミは中空に正座姿でお茶をすすっている姉みかげのほうを顎で指し示した。
「あぁ、見えて、相当なマナをあの姉貴は補填してる。涼しい顔をしているが、どうしてもどうして、今にも倒れそうだろうよ」
ノンがみかげの頭上に目をやると「1200」という数字が今にも消え入りそうなほど、うっすらと見えた。
平平が刀身を引き抜き身構えた。まひるとみかげが声をかける。
「たいらはん。じゅうじゅう気をつけてや」
「おまんはどうなっても構わんが、先輩に指いっぽんでも触れたらただでおかんきに」
「しつけーな、まひる!」
平平がまひるからのクレームを一蹴すると、源子が背後から声をかけてきた。
「へいべい君、いつものように私が後衛を務めます」
「おう。頼むわ!」
「ですが、簡単にクリティカルヒットなどを喰らって、根こそぎ体力を削られたりしないように願います」
「善処するよ」
そう言うなり、平平は刀を左手にもちなおし、右手の人さし指でくるりと中空に円を描いた。空中からメニューが呼び出され、空間に丸い『カラーチャート』のようなものが浮かびあがった。その『カラーチャート』は9つに区切られており、その各区画にはジャンケンのマークが記載されていた。
中空からその様子を眺めていたノンがアミに尋ねた。
「あれはなんですか?」
「あぁ、あれは電幽霊の退治用に開発された霊力陣だ。あれで我々は戦う」
「色のところに描いてあるグー、チョキ、パーはなんです?」
「あぁ。あれか。霊力陣というのは9つに分割され、そのそれぞれが色で分けられている。それらの色はお互いの補色に対して優劣があるのだが、その関係が複雑なのでわかりやすくするため、ジャンケンに見立てているのだよ」
「ジャンケンに?」
「わたしたちの間では九色のジャンケン『クジャン』と呼ばれているがな」
「クジャン……ですか」
「ジャンケンというのは『グー』『チョキ』『パー』の3分の1の確率で勝敗が決まるが、霊力陣を使った『クジャン』は、それがさらに3分割されて9つの手のジャンケンになるのだ」
「つまり、9分の1の確率で決まるジャンケンってことですか?」
アミがノンのほうに目をむけてにやりと笑って答えた。
「ご名答。——って言いたいとこだが、そう単純な勝負じゃない」
源子が腕を目の前に突き出した。そしてその手をすーっと横にすべらせると、その手の動きに沿って、中空に4枚の縦長のカードが現れた。カードはトランプのような比率ではなく、かなり縦長だった。カードの裏にはマントラのような文様が描かれており、カードというよりもむしろ護符を思わせる。
アミが源子の行動をノンに説明した。
「あれは戦略護符……。前衛にいるぴらぴらが攻撃する際に、後衛に控えるげじげじがそのなかの一枚を選択し、前衛の攻撃にコマンドを与えるのだよ」
「コマンド?」
源子は4枚のカードを見渡すと、やにわに手に持った弓に矢をつがえて、キリキリと弦をひいて、中央左側の一枚に狙いをさだめた。
ノンの疑問にアミが答えた。
「戦略護符には一枚にひとつコマンドが記されている。
たとえば、『PROTECT(相手からの攻撃を防ぐ)』や『DOUBLE(相手に倍の攻撃を与える』や『REVERSE(負の結果を相手に返す)』などがな。この攻撃指示は対峙する電幽霊からは見えていない」
「ずいぶん有利に戦いを進められるんですね」
「うまく使えればな」
「え、でも源子さんの手札をみるかぎり、あきらかに有利なコマンドが記されていますよ」
「そうだな。さすがいい手札を揃えているし、見事に引き当てている」
「だったら、電幽霊なんか簡単に……」
「ジャンケンに勝ったならな……」
「え、ジャンケンに勝ったらって……」
「もし、ぴらぴらがあの電幽霊『コール・マイナー』にジャンケンで負けたら、選択したコマンドはそのまま自分たちに適用されて、自分たち自身に襲いかかってくる場合がある——」
ノンがおもわず口元に手をあてた。
「そう。戦略護符。あれは……そういう諸刃の刃なのだよ」
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