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エピソード1 平家と源氏の末裔
第13話 さぁ、幽体離脱するぜ!
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陰陽学園高校——。
いたるところに、あらゆる宗教感を漂わせるものが配置され、カオスで少々エキセントリックではあるものの、私立高校の校舎の建屋を逸脱しないレベルの建屋。
鬼気迫る形相でドタドタと廊下を走っている、がに股歩きの女の子の姿があった。ブレザーの袖を腕まくりし、首元のリボンタイも乱れて、今にもずり落ちそうだ。
「まひる~~、あんたやろ。私の好きな人、みんなにばれてるやんか!」
音無みかげ——。
『電幽世界』では、はんなりとした京娘だったはずだが、現実のみかげの立ち居振る舞いには、その面影は微塵も感じられない。
「ふにゃーー、おねぇが先にバラしたから、仕返ししたぜよ」
姉みかげから、ぴょん、ぴょんとスキップするように逃げているのは音無まひる。こちらも『電幽世界』でみせた、あの猛々しさはまったくない。
「うひゃひゃ、これでおあいこぜよ」
と姉をからかいながらうしろをむいた瞬間、まひるは廊下を曲がってきた平平の胸に飛び込むようにぶつかった。
「いてぇな」
平平平が不敵な顔つきで、ぶつかってきたまひるをにらんだ。彼はVR世界と同じ姿だが、あちらよりもずいぶん背が低い。うしろに長く伸びていたポニーテールの髪ではなくなり、逆にツンツンに立った乱れ髪なので『不良』っぽさはすこし薄まっていた。どちらかというと『悪ガキ』という雰囲気だろうか。
そしてそののうしろには、源源子がすっと寄り添っていた。彼女はVR世界とまったく見た目は変わらないが、平平が小さくなった分、頭ひとつ分ほど大きく見えた。まるで『悪ガキ』を監視する保護者のようでもある。
「おい、おい、気をつけろよ、みかげ姉貴」
「おまん、間違えちょうぞ。私はまひるぜよ」
と、啖呵を切ったとたん、まひるの頭にゲンコツが落ちた。追いついたみかげの一撃。
「うげっ」
まひるが蛙が踏みつぶされたような、へんてこな声をあげた。みかげが取っ捉まえたまひるの首根っこを背後から持ち上げる。みかげはまひるを睨みつけると、平平に言った。
「みかげは私ですわ。タイラはん、間違えんと欲しいわ」
「おいおい、ややこしいな。おまえたち姉妹は、どうして、アッチとコッチで性格が逆になってんだよ」
平平が迷惑そうな顔で文句を言ったが、源子はさばさばとしたものだった。
「そうですか?。私はすっかりもう慣れましたけど……」
「みーなこちゃん」
そのとき、源子の背後から男のぶきみな猫なで声がした。みんなが振り向くと、コールマイナーに埋め込まれていた、イケメン先輩の安倍晴臣がそこに立っていた。サラサラの髪をなびかせて、あいかわらずの美男子ぶりを振りまいてきた。あまりにあざといので、まるで周囲の空気の中の水分を氷結させたかのような、キラキラとした結晶の輝きが彼を包み込んで見える。
「きゃ、先輩」
突然あこがれの先輩が目の前に現れて、まひるの顔がカーッとあかくなった。だが、あまりにいきなり過ぎたのか、まひるは顔をおおうなり一目散に逃げ出した。
「まひる、ちょっとぉ」
あわててみかげが、まひるを追いかけていく。
安倍先輩は源子のかたわらにすり寄ってくると、耳元で囁くように訊いた。
「ボクを助けてくれたの、みーなこちゃんだって、本当?」
母性本能をくすぐるような甘えるような声。たいがいの女の子なら、この声だけでたいていメロメロになってしまう。
「いいえ、違います……」
源子はきわめて事務的な口調で否定すると、すぐ前にいる平平を指さした。
「この人です」
そう言われて、安倍先輩は一瞬だけ平平に視線を移すが、なんの興味もしめさなかった。。
「ボクを助けてくれたお礼に、みーなこちゃんに、とびっきりのデートプラン用意したんだけどなぁ。どう、興味あるでしょう」
いくぶんしなを作るような粘着質な物言いに、源子は首を軽くかしげると、まじまじと安倍先輩の顔を覗き込んで言った。
「いいえ。まったく……」
「フンコロガシが、糞(ふん)を転がすとき、GPSのように星を見て現在位置を確認している、というのと同じくらい興味ありませんわ」
「え、フン……コロガシ……」
わけのわからない切り返しに、唖然としてただ「フンコロガシ」という虫の名前を呟く。安倍先輩だったが、それを傍で聞いていた平平は、若干気分を害した様子だった。
「なんだよ。ビミョーに興味あるみたいじゃねーか」
「そうですか?。すこぶるつきの容人であることは認めますけど……」
源子は反論しようとしたが、うしろから平平を呼ぶ凛とした声に思わず口をつぐんだ。
「きみが平くんだったかな?」
ふたりがその声に釣られるように振り向くと、そこに3年生の安倍明晴生徒会長が立っていた。
「生徒会長……」
思いがけない登場に源子が声をあげた。
端正でありながら品位を感じる顔だち。
弟のどこか中性的な顔だちとはちがい、猛々しさを残した男っぷりが印象的だ。だが、だれもを簡単には寄せ付けない一種の傲岸さが垣間みえて、気軽に声をかける雰囲気はそこにない。縁なしのソリッドなラインの眼鏡もその印象を強くするのに一役かっている。
それは生徒会長という職責の自負、もしくは由緒正しき陰陽師の末裔としての矜持からくる彼のアイデンティティでもあるのかもしれない。
おそらく彼と言いあいになっても、論理的思考ですべてを論破されるだろうと即座に理解させられる。一部の先生が腫れ物に触るように、距離を置いている、という噂も多分に信じられる、そんな空気をまとっていた。
「弟を救ってもらったと聞いた。感謝する」
安倍生徒会長は軽く頭をさげたが、その当の本人はさきほどの源子から言われた、『フンコロガシ』のことが頭から離れないのだろう。頭を抱えたまま、ずっとその虫の名を呟いていた。
「いや…、いえ、いいっすよ。そんなの……」
平平がそっけなく答えた。安倍生徒会長の持つ威厳に飲まれたのか、さっさとこの場から立ち去りたそうな感じありありだ。
「会長、わざわざお越しいただき、感謝に耐えません」
源子がていねいに会釈をしたが、平平は先を急がせた。
「みなもと氏ぃ、いくぜ。授業始まっちまう」
ぶっきらぼうにそう言うと、踵を返して、平平がその場を立ち去ろうとした。すこし後ろ髪をひかれながらも、源子がそれに続こうする。
「あぁ、そうそう……」
安倍生徒会長がふいに背後から声をかけた。
ぎくりとして、その場に平平は静止した。
「君のあちらでの格好……、あれは校則に抵触しているようだね」
「ちょ、こ、校則って……」
ゆっくりと平平は振り返ると、安倍生徒会長は平平の眼前に、開いた生徒手帳をつきだしてきた。
「服装規定 第3条2項……。仮想世界では、頭髪は常に清潔感のある姿に留意し、長さは男子は肩まで、女子は腰までとする」
平平はなにを言わんとしているのか理解できていない。が、そんな平平に安倍生徒会長は顔を近づけて、ぼそりと、しかしながらとても重たいことばを囁いた。
「君の髪の毛は腰近くまで伸びていたと聞いている」
平平はゴクリと唾を飲み込んだ。
すぐさま源子がふたりの間にわってはいった。
「安倍会長、たいへん申し訳ございませんでした。わたしのほうで彼に猛省を促しまして、次回からは丸坊主で戦いにむかわせる所存といたしますので……」
あわてて源子が謝ったが、安倍生徒会長は片手を挙げてミナコの口上を制した。
「いや、それには及ばない……」
意外な反応におもわず、平平と源子は顔を見合わせた。
「明日、臨時生徒会を招集して、この項の内容を変更させるつもりだ」
安倍生徒会長が眼鏡を指で上げながら、きょとんとしている2人に低い声で言った。
「平君……。これで借りは返した……でいいね」
去っていく安倍会長のうしろ姿を、平平と源子はことばをうしなったまま、ただ見送るだけだった。会長の姿が見えなくなると、源子が吐き出すように言った。
「してやられた。と解釈すればよろしいのでしょうか?」
「だな!。ーったく、えげつねぇ生徒会長様だぜ」
そのとき、うしろから間の抜けたロリ声が聞こえてきた。
「こらぁ~、2人とも予鈴なってるんだぞぉ」
そこに革製の野球帽をかぶったショートカットのボーイッシュな格好の小学生が立っていた。オレンジ色のトレンチコートはアーミー調のデザインはそのままだったが、小さい子供にアジャストしたサイズになっていた。だがそのせいで図らずもぺったんこな胸を際立たせることになっている。下に着ている白いブラウスは袖が長すぎるせいか、縦に2連でアームバンド(フック式アームクリップ)を付けているが、それでも少し手の甲が隠れている。
それが現実世界の万丈アミの姿だった——。
「なんだよ、アミ先生かよ」
「なんだよとはなんですか。先生にむかってぇ」
「万条先生、申し訳ありません。すぐに準備をします」
「ーったく、一時限目はなんだよ」
ふてくされて言った平平だったが、アミはにこにこしながら得意げに言った。
「へへぇ、緊急実習ですぅ」
「おい、おい、また同時多発憑依が発生したのか?」
「第一陣は、すでに浄霊に出発しているのですぅ」
うれしそうに言っているアミにむかって、眉根をよせた顔をみせつけて源子が不満を吐き出した。
「困りました。すでに数学の授業が3時限分も遅れているのですよ」
「みなみなぁ、ごめんねー。招集断れないですよぉ」
源子はアミが自分のことを『みなみな』と呼んでいることに気づいて、すこしうれしそうに微笑んだ。
『みなみな……って………』
平平が腕を首のうしろで組んだままアミに言った。
「アミ先生、今回こそ、あんたの探している人が見つかるといいな」
「ゆっくりでいいですぅよぉ。そんなに簡単に見つかるような階層になんかいないですしぃ」
源子が手元の護符タイプスマートフォンを見て言った。
「先生、急ぎましょう」
「で、先乗りしているのは、どの組だよ」
平平が目線をさげてアミに訊いた。
「魔法使いのジェヴェッタと、修道士のサルバトーレ組ですぅ」
それを聞いた平平、あわてて胸ポケットからスマートフォンを取りだしながら叫んだ。
「そりゃ、早く駆けつけねーと」
「ですね。また『ジェヴェッタ、魔女裁判にかけてやる!』って、いつもの喧嘩が始まっているかもしれません」
平平がスマホを人さし指と親指でつまんで、頭上に掲げると声を張った。
「さぁ、みなもと氏ぃ、幽体離脱するぜ!」
源子は平平のほうを見やると、平平に負けないほど大きな声で返事をした。
「御意です!」
サイバシスト[PSYBER EXORCIST] —— 完 ——
第二話
ジェヴェッタ&サルバトーレの活躍は完成してはいますが、まぁ、要望が重なることがあればアップしましょう。
いたるところに、あらゆる宗教感を漂わせるものが配置され、カオスで少々エキセントリックではあるものの、私立高校の校舎の建屋を逸脱しないレベルの建屋。
鬼気迫る形相でドタドタと廊下を走っている、がに股歩きの女の子の姿があった。ブレザーの袖を腕まくりし、首元のリボンタイも乱れて、今にもずり落ちそうだ。
「まひる~~、あんたやろ。私の好きな人、みんなにばれてるやんか!」
音無みかげ——。
『電幽世界』では、はんなりとした京娘だったはずだが、現実のみかげの立ち居振る舞いには、その面影は微塵も感じられない。
「ふにゃーー、おねぇが先にバラしたから、仕返ししたぜよ」
姉みかげから、ぴょん、ぴょんとスキップするように逃げているのは音無まひる。こちらも『電幽世界』でみせた、あの猛々しさはまったくない。
「うひゃひゃ、これでおあいこぜよ」
と姉をからかいながらうしろをむいた瞬間、まひるは廊下を曲がってきた平平の胸に飛び込むようにぶつかった。
「いてぇな」
平平平が不敵な顔つきで、ぶつかってきたまひるをにらんだ。彼はVR世界と同じ姿だが、あちらよりもずいぶん背が低い。うしろに長く伸びていたポニーテールの髪ではなくなり、逆にツンツンに立った乱れ髪なので『不良』っぽさはすこし薄まっていた。どちらかというと『悪ガキ』という雰囲気だろうか。
そしてそののうしろには、源源子がすっと寄り添っていた。彼女はVR世界とまったく見た目は変わらないが、平平が小さくなった分、頭ひとつ分ほど大きく見えた。まるで『悪ガキ』を監視する保護者のようでもある。
「おい、おい、気をつけろよ、みかげ姉貴」
「おまん、間違えちょうぞ。私はまひるぜよ」
と、啖呵を切ったとたん、まひるの頭にゲンコツが落ちた。追いついたみかげの一撃。
「うげっ」
まひるが蛙が踏みつぶされたような、へんてこな声をあげた。みかげが取っ捉まえたまひるの首根っこを背後から持ち上げる。みかげはまひるを睨みつけると、平平に言った。
「みかげは私ですわ。タイラはん、間違えんと欲しいわ」
「おいおい、ややこしいな。おまえたち姉妹は、どうして、アッチとコッチで性格が逆になってんだよ」
平平が迷惑そうな顔で文句を言ったが、源子はさばさばとしたものだった。
「そうですか?。私はすっかりもう慣れましたけど……」
「みーなこちゃん」
そのとき、源子の背後から男のぶきみな猫なで声がした。みんなが振り向くと、コールマイナーに埋め込まれていた、イケメン先輩の安倍晴臣がそこに立っていた。サラサラの髪をなびかせて、あいかわらずの美男子ぶりを振りまいてきた。あまりにあざといので、まるで周囲の空気の中の水分を氷結させたかのような、キラキラとした結晶の輝きが彼を包み込んで見える。
「きゃ、先輩」
突然あこがれの先輩が目の前に現れて、まひるの顔がカーッとあかくなった。だが、あまりにいきなり過ぎたのか、まひるは顔をおおうなり一目散に逃げ出した。
「まひる、ちょっとぉ」
あわててみかげが、まひるを追いかけていく。
安倍先輩は源子のかたわらにすり寄ってくると、耳元で囁くように訊いた。
「ボクを助けてくれたの、みーなこちゃんだって、本当?」
母性本能をくすぐるような甘えるような声。たいがいの女の子なら、この声だけでたいていメロメロになってしまう。
「いいえ、違います……」
源子はきわめて事務的な口調で否定すると、すぐ前にいる平平を指さした。
「この人です」
そう言われて、安倍先輩は一瞬だけ平平に視線を移すが、なんの興味もしめさなかった。。
「ボクを助けてくれたお礼に、みーなこちゃんに、とびっきりのデートプラン用意したんだけどなぁ。どう、興味あるでしょう」
いくぶんしなを作るような粘着質な物言いに、源子は首を軽くかしげると、まじまじと安倍先輩の顔を覗き込んで言った。
「いいえ。まったく……」
「フンコロガシが、糞(ふん)を転がすとき、GPSのように星を見て現在位置を確認している、というのと同じくらい興味ありませんわ」
「え、フン……コロガシ……」
わけのわからない切り返しに、唖然としてただ「フンコロガシ」という虫の名前を呟く。安倍先輩だったが、それを傍で聞いていた平平は、若干気分を害した様子だった。
「なんだよ。ビミョーに興味あるみたいじゃねーか」
「そうですか?。すこぶるつきの容人であることは認めますけど……」
源子は反論しようとしたが、うしろから平平を呼ぶ凛とした声に思わず口をつぐんだ。
「きみが平くんだったかな?」
ふたりがその声に釣られるように振り向くと、そこに3年生の安倍明晴生徒会長が立っていた。
「生徒会長……」
思いがけない登場に源子が声をあげた。
端正でありながら品位を感じる顔だち。
弟のどこか中性的な顔だちとはちがい、猛々しさを残した男っぷりが印象的だ。だが、だれもを簡単には寄せ付けない一種の傲岸さが垣間みえて、気軽に声をかける雰囲気はそこにない。縁なしのソリッドなラインの眼鏡もその印象を強くするのに一役かっている。
それは生徒会長という職責の自負、もしくは由緒正しき陰陽師の末裔としての矜持からくる彼のアイデンティティでもあるのかもしれない。
おそらく彼と言いあいになっても、論理的思考ですべてを論破されるだろうと即座に理解させられる。一部の先生が腫れ物に触るように、距離を置いている、という噂も多分に信じられる、そんな空気をまとっていた。
「弟を救ってもらったと聞いた。感謝する」
安倍生徒会長は軽く頭をさげたが、その当の本人はさきほどの源子から言われた、『フンコロガシ』のことが頭から離れないのだろう。頭を抱えたまま、ずっとその虫の名を呟いていた。
「いや…、いえ、いいっすよ。そんなの……」
平平がそっけなく答えた。安倍生徒会長の持つ威厳に飲まれたのか、さっさとこの場から立ち去りたそうな感じありありだ。
「会長、わざわざお越しいただき、感謝に耐えません」
源子がていねいに会釈をしたが、平平は先を急がせた。
「みなもと氏ぃ、いくぜ。授業始まっちまう」
ぶっきらぼうにそう言うと、踵を返して、平平がその場を立ち去ろうとした。すこし後ろ髪をひかれながらも、源子がそれに続こうする。
「あぁ、そうそう……」
安倍生徒会長がふいに背後から声をかけた。
ぎくりとして、その場に平平は静止した。
「君のあちらでの格好……、あれは校則に抵触しているようだね」
「ちょ、こ、校則って……」
ゆっくりと平平は振り返ると、安倍生徒会長は平平の眼前に、開いた生徒手帳をつきだしてきた。
「服装規定 第3条2項……。仮想世界では、頭髪は常に清潔感のある姿に留意し、長さは男子は肩まで、女子は腰までとする」
平平はなにを言わんとしているのか理解できていない。が、そんな平平に安倍生徒会長は顔を近づけて、ぼそりと、しかしながらとても重たいことばを囁いた。
「君の髪の毛は腰近くまで伸びていたと聞いている」
平平はゴクリと唾を飲み込んだ。
すぐさま源子がふたりの間にわってはいった。
「安倍会長、たいへん申し訳ございませんでした。わたしのほうで彼に猛省を促しまして、次回からは丸坊主で戦いにむかわせる所存といたしますので……」
あわてて源子が謝ったが、安倍生徒会長は片手を挙げてミナコの口上を制した。
「いや、それには及ばない……」
意外な反応におもわず、平平と源子は顔を見合わせた。
「明日、臨時生徒会を招集して、この項の内容を変更させるつもりだ」
安倍生徒会長が眼鏡を指で上げながら、きょとんとしている2人に低い声で言った。
「平君……。これで借りは返した……でいいね」
去っていく安倍会長のうしろ姿を、平平と源子はことばをうしなったまま、ただ見送るだけだった。会長の姿が見えなくなると、源子が吐き出すように言った。
「してやられた。と解釈すればよろしいのでしょうか?」
「だな!。ーったく、えげつねぇ生徒会長様だぜ」
そのとき、うしろから間の抜けたロリ声が聞こえてきた。
「こらぁ~、2人とも予鈴なってるんだぞぉ」
そこに革製の野球帽をかぶったショートカットのボーイッシュな格好の小学生が立っていた。オレンジ色のトレンチコートはアーミー調のデザインはそのままだったが、小さい子供にアジャストしたサイズになっていた。だがそのせいで図らずもぺったんこな胸を際立たせることになっている。下に着ている白いブラウスは袖が長すぎるせいか、縦に2連でアームバンド(フック式アームクリップ)を付けているが、それでも少し手の甲が隠れている。
それが現実世界の万丈アミの姿だった——。
「なんだよ、アミ先生かよ」
「なんだよとはなんですか。先生にむかってぇ」
「万条先生、申し訳ありません。すぐに準備をします」
「ーったく、一時限目はなんだよ」
ふてくされて言った平平だったが、アミはにこにこしながら得意げに言った。
「へへぇ、緊急実習ですぅ」
「おい、おい、また同時多発憑依が発生したのか?」
「第一陣は、すでに浄霊に出発しているのですぅ」
うれしそうに言っているアミにむかって、眉根をよせた顔をみせつけて源子が不満を吐き出した。
「困りました。すでに数学の授業が3時限分も遅れているのですよ」
「みなみなぁ、ごめんねー。招集断れないですよぉ」
源子はアミが自分のことを『みなみな』と呼んでいることに気づいて、すこしうれしそうに微笑んだ。
『みなみな……って………』
平平が腕を首のうしろで組んだままアミに言った。
「アミ先生、今回こそ、あんたの探している人が見つかるといいな」
「ゆっくりでいいですぅよぉ。そんなに簡単に見つかるような階層になんかいないですしぃ」
源子が手元の護符タイプスマートフォンを見て言った。
「先生、急ぎましょう」
「で、先乗りしているのは、どの組だよ」
平平が目線をさげてアミに訊いた。
「魔法使いのジェヴェッタと、修道士のサルバトーレ組ですぅ」
それを聞いた平平、あわてて胸ポケットからスマートフォンを取りだしながら叫んだ。
「そりゃ、早く駆けつけねーと」
「ですね。また『ジェヴェッタ、魔女裁判にかけてやる!』って、いつもの喧嘩が始まっているかもしれません」
平平がスマホを人さし指と親指でつまんで、頭上に掲げると声を張った。
「さぁ、みなもと氏ぃ、幽体離脱するぜ!」
源子は平平のほうを見やると、平平に負けないほど大きな声で返事をした。
「御意です!」
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ジェヴェッタ&サルバトーレの活躍は完成してはいますが、まぁ、要望が重なることがあればアップしましょう。
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